第58話 アリスとオルク

 次の日晴れた。

 漏れ出滝のような雨もピタリと止んだ。


 アリスはまだ体調が万全ではないが、朝目が覚めた。

 アリスは長旅でお風呂に入る余裕もない。

 たまに川で水浴びをするか水を魔法でお湯に沸かして体を拭くぐらいだ。

 

 アリスは朝起きたら公園から取ってきた大量の水を浴びる。

 豚の魔人どもに見えないように隠れて水浴びをする。


 豚の魔人に見られてもなんてこともないが、それでもやはり見られたくないものだった。

 アリスは水浴びを終えると服を着る。

 この服はそろそろボロボロだ。

 洗濯もあまり出来ないから使い古すしかない。

 服を出せばいいのだが余計な魔力を使うのもどうかと思う。


 だがたまにはいいだろうと思い、アリスは自分好みのドレスを見繕ってみた。

 金色がかった派手な黄色のドレスを出した。

 自身の髪色も金髪もありとてもマッチしている。


 アリスは体調が万全といえないがかなりの復活力で魔力も溢れている。

 それよりも魔力の廻りがとても良い。

 体中から魔力が溢れ出ていく。

 アリスは自身の魔力を廻らせる。

 とても調子が良い。

 中で魔力以外の物も溢れ出てきそうなそんな感じだ。

 なんだろう……これは? 


「それはアリス様だけの力に関係していると思います」


「ロウガ……いつからいたの……」


「それはもちろん最初からぐふっ!?」


 アリスがロウガの腹をひと殴りする。

 物凄い威力でロウガが吹っ飛ぶ。

 アリスも女の子なので裸を見られたら怒るだろう。


「アリス様の柔肌はとても素晴らしかった出……す」


 アリスは今度はロウガの脛を蹴る。

 とても痛そうだ。


 とまあそんな茶番は置いといて。


 アリスは体調を戻すために食料を出す。

 もはや定番となっているおにぎりを出す。

 それとサラダチキンとカップラーメン。

 お湯は魔法で水をお湯にしているやつを収納空間に入れている。

 

 ついでにオーク達がくれた魚と果物も食べる。

 凄い食欲だ。

 アリスも育ちざかりだからか。

 

 アリスは調子に乗ったのか体を動かしに行くと言った。

 近くにダンジョンがあるらしいじゃないのとロウガに確認を取る。

 ついでにオークのあんたも来なさいよと最初に会ったオークを連れていく。


「おらだが? なんでおらも一緒に行くのだ?」


「あんたは強くなりたくないの?」


「もちろん強くなりたいのだ」


「じゃあ一緒に来なさいよあんたを私達が特訓してあげるから」


「いいのですかアリス様!? こんな輩を御供に加えるなど……」


「今回だけよ一時的な話よ」


「そうですか……安心しました」


 そしてオークの少年らしいとロウガと共に黒穴のダンジョンに潜る。

 

 オークの少年は13歳らしい。

 まだ子供じゃないかとアリスは驚愕する。

 と言ってもアリスも12歳と年下なので人のことは言えないが。


 アリスはオークの少年に親近感を覚えた。


 生まれて直ぐに両親を失ったらしい。

 だが今の統領に育てられたようだ。

 だが異世界で暮らしていたが、ある日地球に転移してしまったらしい。

 オークの少年は強くなって人間に負けないように頑張ることにした。

 でも人間のことは実は好きらしい。

 確かに両親を人間に殺されたが、自分も人間に命を助けてもらったことがあるとか。

 そんなこともあり統領に教えられた。


「いいか坊主。人間には良いやつと悪い奴がいるもんなんだ」


「そうなんだ統領」


 オークの少年は意外にも素直だった。

 アリスはオークの少年と呼んでいたが呼びずらいことに気が付く。


「そうだわあんたに名前を付けてあげるわ」


「名前ですか。ありがとうだ、大事にするだ」


「アリス様お止め下さい」


「なんでよ……ええっとそうねオークだからオルクなんてどうかしら」


「オルク……オルクか! おらはオルクだ」


【オークに命名を行いました。オルクはユニークモンスターになりました】


 どこからか声が聞こえた。

 アリスに纏っている魔力がごそっと減る。

 えっ? 何これ……大したことないけど全体の三割ぐらいの魔力が失われた。


「だから言ったのに、アリス様。命名をモンスターに行うと魔力が減るのです。そして命名を受けたモンスターはユニークモンスターになってしまうのです」


「それって困ること?」


「いや別に……特に魔力が減るぐらいでデメリットがあるわけでは……ただそのユニークモンスターは懐いてしまいますアリス様に」


「いいことじゃない? 何がいけないのよ」


「たぶんついて来ますよこのオルクは」


「いいじゃない配下が増えるのは」


「おおっ……アリス様もついに魔女王の一歩を踏み出すのですね」


「魔女王はともかく……仲間が増えるのはなんかうれしいじゃない」


 そしてオルクの実力を見ることに。

 オルクの獲物は棍棒と鉈だ。

 どっちも頻繁に使うが棍棒が使いやすいようだ。

 オオトカゲくらいなら簡単に倒せるようだ。

 たまに同族と当たるが普通に倒している。

 ダンジョンのオークはもはや別物らしいオルクによると。

 知能も低いしたまに理性のある者もいるがそういうのは仲間に引き入れるらしい。

 そして30階層まで来た。


 最近の黒穴のダンジョンは30階層まで攻略すると消滅する物が殆どだ。

 今回のボスはデスリザードキング。

 C+ランクぐらいの実力だ。

 言うほど強くない今回は外れのダンジョンのようだ。

 アリスは魔導銃を構えて雷波動を使い弾を次元装填する。

 発射した瞬間雷の速度で撃ち出された弾はデスリザードキングを貫く。

 ロウガも爪を巨大化して切り裂く。

 オルクも棍棒で滅多打ちにする。

 だがデスリザードキングは真空刃を放ってきた。

 オルクに当たる。

 オルクの腕が斬られた。

 右腕を失うオルク。


「オルク!! ちょっとまって今直すから」


「大丈夫だ。ふんっ!!」

 

 するとオルクに右腕が瞬時に生えた。

 

「すごいこれはオルクのスキル?」


「超再生ずら。これのお蔭で最近は強敵に後れを取らないだ」


 どうやらオルクは規格外のスキルを保持しているらしい。


「それじゃあこいつを一緒に倒すわよ」


「アリスも頑張るずら」


 そのころオークの隠れ里は酷いありさまだった。


「ううっ……坊主、戻って来るんじゃないぞ…………」


「なんだこいつまだ生きてやがるのか……じゃあ止めと行きますか」


「統領から手を離せ!!」


「なんだ死にたい雑魚がまだいるのか俺はオークキングにしか興味ねえよ。死ねよ」


 醜悪なモンスターに取って天敵の人間の探索者がオークの隠れ里を襲ったようだ。

 人間達からすればオークは人間に害を為す者。

 討伐するのが筋だろう。

 だが統領は無抵抗に話をしようとした。

 だが話を聞こうとしない探索者の若者はオークキングの統領を襲った。


 アリスたちはそのころダンジョンを制覇して戻ってくるところだった。

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