第100話 シーアを甘やかせ!ギャルゲーモード

 朝の自室。


 身体の上にのしかかる柔らかな重みを感じながら、ぼくは目を覚ました。


 隣を見るとシーアの姿がない。


 とするとこの重みは……。


「坊ちゃま……お、おはようございます」   


 メイド服のシーアが、ぼくの上に跨がっていた。


「えっ!? シーア! どうして腰の上にいるの!? 」


 シーアの頭にはクエスチョンマークが浮かんでいた。


「昨晩、坊ちゃまがこうしろと……もしかして私、間違ってしまいましたか?」


 そうだった!

 

 シーアをギャルゲー方式で甘やかすために、昨日『ぼくの起こし方』をシーアに教えたのだ!


「間違ってないよ! 大正解! 真っ赤になってる可愛いシーアが見れて、超満足!」


 上気したシーアは、紅潮した顔でボーっとぼくを見つめている。


「あ、ありがとうございます……んっ」

 

 というか、このアングルから見上げるシーアが、めちゃくちゃエロい!


 ムクムクッ!


 し、鎮まれ! ぼくのエクスカリバー!


 だがシーアの腰とぼくの腰の接点では、聖なるエネルギーがウルトラバーストしてしまい、エクスカリバーは大きくなるのを止められなかった。


「んっ? 坊ちゃま、ここに何か固いものが……」


 シーアが腰をずらして、その下にあるエクスカリバーに手を伸ばそうとした。


 バッ!


 ぼくはすかさずシーアの両手を掴んで、激しくシェイクする。


「おはよー世界! さぁ今日も一日頑張ろー! シーア! 朝食の準備はOK?」


「は、はい! お食事になさいますか?」


「そ、そうだね」


 シーアが慌ててベッドから降りて、部屋を出て行こうとする。


 そのとき、シーアの無防備な尻尾が、ぼくの目に入ってきたので、ぼくはその尻尾を根元の方から優しく掴んで、そのままスーッと撫でてみた。


「ヒャァ!」

 

 シーアが悲鳴を上げる。


 シーアの悲鳴、初めて聞いたかも。


「むぅ……」


 シーアが抗議の目線をぼくに向ける。


 切れ長の美しい瞳には、涙がうっすらと浮かんでいた。


 白銀のケモミミの内側まで真っ赤にしたシーアは、頬をぷっくりと膨らませている。


 そして、そのままベッドに戻ってくると……。


「むぅ!」


 バッ!


 ぼくからシーツを引っぺがした。


 シーツに隠されていたぼくのエクスカリバーテントが露わとなった。


「!?」


 両手で顔を覆ったシーアだが、しっかりと指の間からこちらを見ていた。


「ちょっ、シーア! 見ないでぇぇ!」


「も、申し訳ありません!」

     

 そう言ってシーアは慌てて部屋を出て行った。


 ふむ。


 とりあえず、これで朝のイベントはクリアかな。


 自己採点ではあるが、このギャルゲーモードによるシーア甘やかしは、まずまずの出来だったと思う。


 まさに100点と言ってもよいのではなかろうか!


 あと何度かこうしたイベントをクリアすれば、ギャルゲーなら夜のエロシーンは確実だろう。


 ん? エロシーン?


 そう言えば、ぼくって前前前世でもギャルゲー(全年齢)ってあまりやったことなかったな。

 

 どちらかというと、エロゲーばっかやってた。


 少なくともプレイ時間においては、エロゲマスタークラスと言っていいはずだ。


 お子ちゃまでもできる全年齢恋愛シミュレーションと違って、大人しかプレイできないエロゲーの方が、に違いない!


 よし!


 前世で培ったこのエロゲスキルで、シーアを落としてやるぞ!




~ サラディナ商会食堂 ~

 

「「「ジィィィィ……」」」 

 

 食事をするぼくを、食堂にいる全員がジィーと見つめている。


 なんというか……呆れ顔で。


 シーアは、ぼくを膝の上に乗せて、ぼくの口元にスプーンを運ぶ。


「おいしいですか?」


「もぐもぐ……うん。はい、シーアも!」


 ぼくは、お皿からゴーラ産ローストビーフを取って、シーアの口元に運ぶ。 


 パクッ!


「おいしいです!」


 シーアの尻尾が扇風機になっていた。


「「「ジィィィィ……」」」 


 そんなぼくたちを食堂にいる全員がジィーと見つめている。

 

 なんだか視線には呪いが込められているような気がした。




~ 学校 ~


「「「ジィィィィ……」」」 

 

 授業を受けているぼくを、教室にいる全員がジィーと見つめている。


 先生もチラッチラッと視線を何度も送ってくる。


 なんというか……呆れ顔で。


 ぼくは、シーアの膝に乗って講義を聞いていた。


 講義中、シーアは、ぼくの頭を撫でたり、耳をクンクン嗅いだり、ぼくの頬にキスをしたりと、やりたい放題していた。


 まぁ……なんというか……。


 みんなごめん。


 だからと言って、止めるつもりもないけどな!




~ レイチェル嬢の女子会 ~


「「「ジィィィィ……」」」

 

 レイチェル嬢の女子会に参加しているぼくを、女子たちがジィーと見つめている。


 なんというか……呆れ顔で。


 ぼくを膝に乗せて幸せそうにしているシーアを見て、レイチェル嬢がため息をつく。


「はぁ……ヴィルフェリーシアが幸せならそれで良いですわ」


 他の女子会出席者であるミーナとクラウスくん、そしてキャロルも同じような反応だった。


 ぼくはと言えば、レイチェル嬢の女子会に初参加できたことで、とても幸せだった。



~ その日の夜 ~


 卒業試験に出発する日までは、ぼくとシーアは一緒のベッドで眠ることにしている。


 小さい頃から、時々シーアと一緒に眠ることはあった。雷の日とか、悪夢を見た時とか、そういう時に。


 だからシーアと一緒に眠ること自体は、特別なことではない。


 だが、今日は違った。


 ぼくの目の前には、真っ赤に染まったシーアの顔と濡れた唇があった。


 シーアの息が荒い。


 ふむ。


 今日の好感度アップイベントは、すべてクリアした自信がある。


 きっと、シーアは大いに甘やかされたに違いない。


「おやすみ、シーア……」


 ぼくはシーアの頭を撫でながら、シーアの唇にそっとキスをした。


「!?」※シーア


 シーアの目が大きく開かれ、そのままぼくの唇にキスを返してきた。


「!?」※ぼく


 その晩は――


 おやすみ……どころじゃなくなってしまった。

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