第23話「You can run, you can run 2」

↓コンテ

https://www.pixiv.net/artworks/86866250



(擬音・吹き出し外文字)

「セリフ」

{人物モノローグ}

<ナレーション・モノローグ・解説・歌>


※クラスメートに悪意はない。クラスメートを悪者に描かないように。

※クラスメートは前田に興味がないのでどういう人物でどういう理由で泣いたのかなど、その場の空気から自分たちにできる範囲でしか想像できない。

※ゆえに、まれちゃんたちの怒りは理解できないし、あくまでもクラスの空気にそって良かれと思って、リレー後の前田に思いやりのある言葉をかけたつもりでいる。

※ここに小狡い考えもあって、どこかで言葉にできないくらい微妙にやましく感じてもいるので、自分たちは悪くない、いい人である、という主張もすべり込ませてきている。空気を悪くしないために。

※このすれ違いが「どうしようもないこと」という読者に感じさせたい点。

※一方で読者には、まれちゃんの怒りにも驚きつつも同意できるように。



●1

 当日。

 校門の前に「川南高校体育祭」の立て看板。

 その前で写真撮ってポーズのヨナ、チカ、サイトっち。

 タイトル。


●2

 二人三脚するチョコと関口。

 棒倒しで棒の上に乗って揺さぶっている南。

 パン食い競争で走るまれ。

 クラス対抗綱引きトーナメント。


●3

 得点掲示板。クラスごと縦割りの組み分け。

 A組総合1位。

ヨナ「うそーっ! 総合一位じゃんA組って」

チカ「2年生や3年生ががんばってんのかな?」

サイトっち「優勝できるかもだね!」

榎本「優勝か!」

加藤「おーし、俺らも午後の騎馬戦がんばっちゃうか」

放送「男女混合スウェーデンリレーのエントリー者はゲート前に集合してください」

マキミキ「さー、行くよ、前田君」

前田「うん!」


●4

インチョー「リレーもう集合?」

マキミキ「あれ、どこ行ってたの? 綱引きでも見かけなかったけど」

インチョー「今日はちょっと見学」

 と苦笑い。

マキミキ「はあ~ん? サボりかあ~?」

 とニヤニヤ悪そうな顔。

インチョー「応援してるから」

マキミキ「おう!」

インチョー「前田君も、練習の成果見せて!」

前田「あ、ありがとう」


●5

審判の生徒「位置について…」

審判の生徒「よーい」

 3年女子の第一走者がクラウチングスタートでかまえる。

(ぱーん)

放送「男女混合スウェーデンリレースタートです」

マキミキ{はじまった~~!}

 静かに興奮。

前田{ああ、いよいよ……}

 応援席のまれ、インチョーが息をのむ。


●6

放送「バトンが第2走者に渡ります。早いのはD組、続いてC組とA組」

 A組の3年男子が走り出す。

 2位に抜けて出てくる。

ヨナ「ね、見て見て」

 みんなしゃべったりふざけているクラスの応援席の中で、ヨナがチカにリレーに注目を促す。

 3年男子から2年女子にバトンパス。

インチョー「まれちゃん、マキミキは200mだからトラック一周だよね?」

まれ「うん、うん」

まれ「前田君は二周だよ!」


●7

チカ「あ」

加藤「おい、A組2位だぜ…」

放送「1位D組、2位A組…」

 A組、1位と10m差のついた2位。

マキミキ{う~~!}

マキミキ「はいっ!」

 手を挙げて、飛び跳ねるように助走始めるマキミキ。

(ぱしっ)

 マキミキにバトンが渡る。


●8

マキミキ「おっし」

 マキミキ追い上げる。

放送「2位のA組、追い上げて差を詰めます!」

インチョー「はやっ……」

 マキミキの走りに驚くインチョーとまれ。

インチョー「よーし……」

インチョー「……」

 息を吸い込んで、声を出そうとしたとき、


●9

クラスの声「玉木がんばれーっ!!」

インチョー「!」

 まれとインチョー、おどろいて振り返る。

放送「A組の追い上げに応援席も盛り上がってます」

クラス(うわー!)

 盛り上がっている1年A組応援席の前を駆け抜けるマキミキ。

サイトっち「すごくね?」

榎本「玉木はえー!?」

チカ「鬼っパヤ!」

インチョー「……」

 現金さに唖然としていると、

まれ「マキミキ速いね!」

 声かけられてハッと我に返る。

インチョー「うん、1位になるかも!」


●10

 1位に追いつきそうなマキミキ。

放送「2位A組、1位D組にあとわずか!」

前田{きっ、来た!}

放送「アンカーに繋ぎます! 1位はそのまD組、続いてほとんど差がなくA組が駆け込んできた!」

前田{し、しかも2位で…}

 助走を始める前田。

マキミキ「しっかり!」

 バトンパス。

(ぱしっ)

 2位スタート。

前田「……っ」


●11

チカ「え、ここで前田っ?」

加藤「なんであいつがアンカーなんだよ!」

榎本「ヤバくね?」

 と、急にざわつく応援席。

前田{2位っ…}{2位だ…っ}

前田「はっ」「はっ」「はっ」


●12

 後ろから迫る後発ランナー。

放送「1位D組との差がどんどん広がります2位A組」

放送「そのあいだに後から3位以降が迫ってきます」

マキミキ「前田くん! いつもよりオーバーペースだよ!」

マキミキ「焦って力使い果たしちゃダメだよっ…!」

 トラックの中から前田に。

 インチョー、まれ、心配そうに見ている。

 苦しそうな前田。

 ランナーの脚。前田を追い抜きかけている。



●13

クラスメートの声「あ」「あー…」

放送「A組、2位から転落、1位D組はダントツです」

 ここから三コマ同構図で。

クラスメイトの声「あーあ」

 前田、次々に抜かれていく。

クラスメイトの声「あいつ脚おせーなー」

クラスメイトの声「せっかくいい順位だったのに…」

 ついにビリに。


●14

加藤「終わった…」

 わかったような顔で腕を組んで目をつぶる。

放送「いまD組が1位でゴール! 2位に20メートルの差をつけました」

 D組アンカーがテープを切る。

放送「2位C組、3位E組…」

 次々とゴールする中、あーあ、という残念そうなA組応援席のクラスメートたち。

 前田が半周残しているところで前田以外全員ゴール。

放送「残るはA組アンカー、あと少しです、あと100m」

放送「がんばってください」

前田「はあっ…」「はあっ…」「はあっ」

 苦しそうな前田。

 走る前田の脚がガクガクしだす。


●15

 転ぶ。

チカ「えーっ」

伊田「寒すぎて笑えなーい」

マキミキ「前田くん!」

前田「くっ…」

 慌てて立ち上がる前田。

 膝がガクガク。

マキミキ「脚、痙攣してる…!」


●16

 前田、大きく遅れてゴール。

(ぱーん)

 駆け寄るマキミキ。

前田「ぜ~っ…」「ぜ~っ…」「ぜ~っ」

 苦しそうな前田、脚を引きずっている。

マキミキ「前田君っ、立ち止まんないで、ゆっくり歩いて息整えて」

 と前田の腕を持って支える。

 A組三年生二年生、あーあ、みたいな顔で冷やかに見送る。

二年生男子「ちゃんとした奴選んで出せよ一年生……」


●17

マキミキ「大丈夫? お茶持ってこようか?」

 前田、脚を引きずるように応援席の後方近くまで戻ってきて、

前田「あっ……」

 と倒れ込む。

前田「いっ……だだだ!」

 と脚を抱えて転げまわる。

まれ「ど、どうしたの?」

マキミキ「あ、脚つった?」

インチョー「どこ? どの筋?」

 と駆け寄って脚を伸ばそうとする。

前田「ぐっ…」「はっ」「はっ」「はっ」

 息が苦しく、脚も痛く、涙目になって埃まみれでみじめにのた打ち回る前田。インチョーが筋を伸ばそうとしている。

加藤「なにあれ?」

吉川「さあ?」


●18

前田「げっほ…」「げほっ…」「おえっ…」

 えずいて咳き込む前田。

前田「ぅえええっ……」

 嘔吐する前田。背中をさするまれ。

チカ「やだっ」

 と目をそらす。

サイトっち「なんでゲロってるの?」

 目をそらして。

伊田の声「キモー」

前田「うっ…くっ…」

 悔し泣きする前田。


●19

加藤「泣いてんぜ」

チカ「うそっ」

 と顔を見合わせる。

 シラケるクラスメートたち。

 うわべだけの言葉でシラケた空気をなんとかしようとして、

サイトっち「ま、まあ、しょうがないよね」

チカ「そうだよ、前田の分はウチらが取り戻すしさ、気にすんなよ」

 と「ウチらのクラス」に貢献できなかったことを悔しがっているのか、と前田の涙の理由を少しも理解せずに、優しい言葉のつもりで声をかける。

(ムカムカムカ~)

 マキミキの顔。

 マキミキが爆発しそうになって立ち上がったとき、


●20

まれ「どうしてそういうこと言えるの!」

 と、マキミキとチカの間に立っているまれ、怒鳴る。前後の構図。



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