第21話「トリニティ・ソウル」


(擬音・吹き出し外文字)

「セリフ」

{人物モノローグ}

<ナレーション・モノローグ・解説・歌>


●クラスの女子3人

与那嶺涼子(ヨナ)

斉藤恭子(サイトっち)

青木千佳(チカ)




●2

 昼休み。

(ガラガラッ!)

 1年A組のドアが開く。

前田「あっ、待ってよ!」

 罵りながら教室から出ていく女子3人。

サイトっち「勝手にやればー?」

 ニヤニヤしながら見送る他のクラスメート。

チカの声「昼休みに緊急ホームルームとかバッカじゃねえのっ?」


●3

 見ているまれちゃん。

チカの声「前田サイアク!」

 同じくマキミキ。

 ためいきついているインチョー。

 他のクラスメートたちもガタガタと立ち上がる。

「おう、いこうぜ」

「あー、腹へったー」

「うぜー」

前田「……」

 昼休みの廊下。

 プリプリ怒ってるサイトっちとチカ。ケロっとしているヨナ。

チカ「文化祭実行委員なんか誰もやりたくないっつの」

ヨナ「パンにする?」

サイトっち「売店まだ残ってるかなあ」


●4

関口「もう諦めろよ、しょうがないじゃん」

チョコ「部活やってない奴だけでクジ引きとか不公平だろ」

 食堂へ向かう二人。チョコがボヤいている。

関口の声「んじゃ部活やめなきゃよかったんだよ」

ヨナ{あ!}

 ヨナ、声のする方に気が付く。

チョコ「多数決の暴力だ」

 ぐぬぬ、ってなってる。

ヨナ{……黒田くん}

 と頬を赤らめて上目づかいで嬉しそうにチョコを見る。

チカ「どした?」

 とヨナに。

ヨナ「んーん」

 とニヤけながらもごまかす。

ヨナ「えへへ」


●5

南「ふあぁー」

 大あくびの南。

 下駄箱。

ニットキャップ「おー、南めずらしくガッコ来たな」

ニットキャップ「もう昼休みだぜ」

 ニットキャップかぶったラッパー風の2年生が声かける。

南「いや、なんか食うもんないかなってよ」

 3年生の不良、唐沢君と仲間の町田君、棚橋君。

 ビーバップみたいに並んで登場。ビリビリと緊張感。


●6

唐沢「……南ィ」

唐沢「よく顔出せたな?」

(ビキビキッ)

(!?)←写植で。

 南に斜めに顔を近づけてガンつける唐沢。

 その後ろから吠える町田、棚橋。

町田「てめえ、ヤッチャウゾコノヤロー!」

棚橋「ッスゾラー!?」

 動じずガンつけ返している南。ヤンキーモード。

南「大声出さんでくださいよセンパイたち」

南「オレァいま腹へっててあんまり機嫌よくないんですわ」

南「なんか用スカ?」


●7

唐沢「お前にやられたこの傷がよォ、ウズくんだよォ」

 と顔のキズを示す。

南「じゃあセンパイ、学食でカレーおごってくれませんか?」

南「それで手打ちにしましょうよ」

 シレーっと。

唐沢「ああんっ!?」

唐沢「なに言ってっか全っ然っ意味わかんねえゾ!?」

 と吠える。

南「意味なんか」

 微動だにせずシレーっとした顔で睨んだまま。


●8

 突如憤怒の表情の南。

南「ねえーッッ!!」

(ド)

 と唐沢の顔に叩きこまれる南の拳。

 はがー、みたいに唐沢の顔が歪んで画面手前を向く。

南「俺はッッ!!」

(ガ)

 南のブルースリーばりの飛び蹴りで顎を砕かれる町田。

南「腹がッッ!!」

(ゴっ)

 南に髪をつかまれて壁に顔面を叩きつけられる棚橋。

南「へってんダラーッッ!!」

(ゴシャゴシャゴシャ!)

 めちゃくちゃに暴れて血しぶきが上がる乱闘のシルエット。魔人南くん。

 野次馬の中で呆然と見ているチョコと関口。


●9

チョコ「み、南くん…」

 と思わずなだめようと声をかける。

南「おー、チョコ、関口」

 とボコボコにされてノビてる唐沢の襟首をつかんで引き起こしている南、振り返って。

 町田と棚橋は南に踏んづけられている。

南「ちょうどいいわ、3対3になったし、みんなでカレー食いにいこうぜ」

 と唐沢の髪をつかんで立たせながら。

チョコ「え、ちょっと意味わかんないんだけど…」

 と白目。

 学食。テーブルに向い合せで座っている南、チョコ、関口と、唐沢、町田、棚橋。

 ボコボコにされた三年生三人が並んでフテている。棚橋は口をおさえて泣いている。

南「つまりさ」

南「こいつが俺に

南「こいつが関口に」

南「で、こいつがチョコにオゴれば公平だろ?」

 と交互に指差しながら南が語る。

 カレーを前にしてチョコと関口が呆然。

南「民主的だろ? 三権分立じゃね?」

関口「……モンテスキューそんなこと言ってないと思うけど」

チョコ{なんで俺ら三年生のヤンキーにカレーおごられてんだ……}


●10

南「そーだ、センパイ」

 とカレーを食いながら。

唐沢「あっ?」

 とフテたように睨む。

(ガンっ)

唐沢「イアッッ」

 とテーブルの下で思いっきりスネを蹴られて悲鳴。

 ビクっとする町田と棚橋。

南「そうスゴまないでくださいよ~~」

 と痛がってスネをおさえている唐沢に意地悪そうな顔でスゴむ。

南「俺の後輩が楽しくなくなっちゃうでしょ~?」

チョコ{ずっと楽しくないよ……}

 と青ざめている。


●11

南「センパイらってカノジョとか、います?」

 真顔に戻って。

3人「……」

 ととまどうように顔を見合わせて。

3人(…こくっ)

 と小さくうなずく。

(ガッガッガンっ)

3人「いあっ」

 と再びテーブルの下で蹴られて悲鳴。

 痛がって涙流している唐沢にサディスティックな南。

南「あッれ~? なんかムカつきますわ~~」

チョコ{……}

 見てないフリしてうつむいている。


●12

南「ん~……じゃあじゃあ、そのカノジョのツテとかで~」

 テレながら言いよどむ。

南「あ、あの~…ホラ、なんつうか……」

南「……ご、合コンとかって……セッティングできますかね?」

 目をそらしながらゴニョゴニョと。

町田「え?」

棚橋「ご?」

 と思わず聞き返す。

(ガンッ)

南「合コンだよ」

 とダブルパンチ。

南「恥ずかしいこと二度も言わせんな」

チョコ{恥ずかしいんだ……}



●13

 食堂に入ってくるヨナ、サイトっち、チカ。

チカ「売店のパン売り切れかよー」

ヨナ「学食久しぶりかも」

 券売機の前で。

サイトっち「あっ、Aランチも終わってるう!」

チカ「前田のせいだ」

ヨナ「カレーにしよっと」

南「じゃあセンパイ頼んだぜ」

 と笑顔で見送る南。

 ボコボコの唐沢、町田、棚橋。

 三人のヤンキーが目の前を通って行く。

 ボコボコの顔に怯えるサイトっち、チカ。

サイトっち「ひっ」

チカ「え、なに? なに?」


●14

 カレーをカウンターで受け取ったヨナ。

 トキメキの表情でハッとして。

ヨナ「あ、黒田くん……」

 カレーを食べているチョコたち。


●15

サイトっち「だれ?」

 とヨナが見ているほうを見て。

 思わず口に出していたことに気がついて口をおさえながらギョッとサイトっちを見るヨナ。

チカ「あ~~」

 とチョコに気がついてみている。

チカ「ホラ、C組の、ヨナが好きなさー」

 とサイトっちに。

ヨナ「ちょっチカちゃん、しーっ!」

 と慌ててすがる。

 女子3人テーブルにつきながら。

ヨナ「聞こえたらどうすんのっ!?」

サイトっち「なんで、なんで? どこが好きなの?」

チカ「顔はかわいいよね」

関口「合コンて…、もしかして俺らも参加なの?」

南「ちょうど3対3って言ってたの聞いてなかったんか?」

チョコ「3対3好きだね……」

南「オレ一人だったら恥ずかしいだろ!」

関口「困るよなあ」


●16

南「女となに話していいかわからんからそばで話し相手になってくれ」

チョコ「俺たちだけで話してたら合コンにならないんじゃ?」

関口「とにかく女子には聞き手になって褒めて、共感してればいいという話を聞いたような」

南「聞き手になって褒めるって?」

南「「女の人ってどうして冷蔵庫に化粧水いれるの?? どうしてドレッシングと間違えないの? すごいよねー?」とか?」

チョコ「それ南くんのお母さんのことでしょ」

南「共感って?」

関口「「ウンわかるわかるー」「ありえないくらいわかるー」ってうなずくとか」


●17

チカ「男三人でなに話してんのかな?」

サイトっち「まー、あの三人の中なら黒田くんかー」

ヨナ「ちょっ、サイトっち、ヤメてよ」

南「オンナってよく「男子はパンツ三日換えなくても平気とか信じらんない」って言うけど、ブラジャー四日間着用とかは平気らしいぜ」

関口「うちの姉ちゃん、そうだ」

チョコ「つかさ、なんでカレーおごらせたの?」

南「なんか温かいものを口に入れたかったんだよな」

南「温かいものって言えば」

南「オッパイってむしゃぶりつくとけっこう冷たいらしいと聞いたことがある」

チョコ「まじで?」

南「意外だろ? 温かいと思うだろ?」

関口「「らしいと聞いたことがある」って酷い伝聞だ……」



●18

南「チョコお前、部活やめてヒマならちょくちょく俺の部屋遊びに来いよ」

 とカレーを平らげて。

チョコ「いや~~、それが俺、文化祭の実行委員になっちゃって」

 と頭を抱えて。

南の声「へー、がんばれよ」

チョコの声「えー? 文化祭は楽しみだけどさ、裏方で忙しいんじゃないかなー?」

 食べ終わった女子三人、席を立つ。

チョコ「一学期の半ばからとか、ちょっと準備早くない?」

関口「体育祭のほうがもうすぐ近くに迫ってんのにね」

南「ウチの文化祭…、川南祭は伝統だし毎年力入れてっからな」

 チョコたちの席のほうへ向かって近づくヨナ。

関口「一学期に体育祭やるのってどうなの?」

南「二学期は文化祭とかイベント多いからズラしてんだろ」

 男子三人の前を通り過ぎるヨナたち。


●19

 通り過ぎたヨナなめ、

チョコ「あー、でも俺、文化祭実行委員になっちゃうとはなあ…」

 と頭をかかえているチョコ。

ヨナ「………!」

 ハッとするヨナ。

南「ヒマなんだろ?」

 と不思議そうに。

チョコ「そうでもないんだよ、ギターの練習とか……」

チョコ{第二音楽室に行けなくなっちゃうし……}

 とため息。

チョコ「誰かヒマな奴がやればいいのに」


●20

ヨナ「はい!」

ヨナ「私やります!」

 と立ち上がって挙手。目を輝かせて。

 放課後のホームルーム。

 クラス中がヨナに注目。


●21

 サイトっち、目を丸くしてる。

チカ「ヨナ…?」

 心配そうに。

前田「……あ、じゃあ今日放課後2年C組で実行委員会がありますので」

 なんか不安そうに。

 解散してざわついている教室。

マキミキ「行こうぜ~」

 と、まれちゃんに声かけてるマキミキ、傍らに立つインチョー。

サイトっち「どうしたのヨナ?」

ヨナ「えへえへえへへ~~」

 サイトっち、チカ、ヨナの席に集まって。



●22

 2年C組。実行委員会にパラパラと人が集まってきている。5クラス3学年で15人。

 ヨナ、入ってきてチョコを見つける。

 チョコが退屈そうに窓際に座ってる。

ヨナ「…こ、ここ、いいですか?」

チョコ「あ、…うん」

ヨナ「わ、わたし、1年A組の与那嶺涼子」

チョコ「あ、ども」

チョコ「俺、黒田千代治」


●23

ヨナ{しめしめ~! 話せたよ~!}

 ニヤつくヨナ。

ヨナ「文化祭、楽しみだよね」

チョコ「あ、うん、まあ俺はあんまり……」

 と気のない返事。

ヨナ「え、そうなの?」

 と不安そうに。

チョコ「くじ引きで決まったから…」

チョコ「雑用多いみたいだし」

ヨナ「で、でも、一緒にがんばろうよ」

チョコ「あー、まあ、うん」


●24

 時間経過。フキダシ次のコマにまたぐ。

安田「じゃあ、ひとまずクラスごとの企画と、部活や有志の企画の提出は夏休み前に出すようにしてもらって」

 黒板に「川南祭実行委員長選出」「安田深」

安田「それから体育館ステージと屋外ステージの兼ね合いとか……」

 ちらちらとチョコを見るヨナ。

ヨナ{……う~~}

ヨナ{勇気出して話しかけたけど、イマイチ会話が弾まなかった……}

安田「──ということで次の委員会までに少し各クラスで企画の話し合いしてもらってください」

安田「じゃあ今日はコレで解散」

チョコ「……」

(ガタっ)

 と立ち上がるチョコ。

 ハッとチョコを振り返るヨナ。


●25

ヨナ「あっ、あー……」

(ぴゅーっ)

 と走り去るチョコ。

ヨナ{急いでたけど、部活かな?}

 ちょっと残念そうに。

ヨナ{いつもギター担いでるし、やっぱフォーク&ロック部?}

ヨナ{今度は、音楽のこと話してみよっかな……}

 先のことにワクワクして微笑。

 走るチョコ。

チョコ「はっ」「はっ」「はっ」

チョコ{まれちゃんたち、まだやってるかな?}


●26

 校舎階段の前。

南「おー、チョコ」

南「待ってたぜー」

 と別のヤンキー(バンダナで覆面してる)二人組をボコボコにして正座させてる。手にバット。

 転がるチョコ。

(ゴロゴロゴロー!)

チョコ「なっ、なっ、何やってんのっ?」

 と起き上がり動揺する。

南「中黒兄弟が」

南「コレで後ろから襲ってきたんで返り討ちよ」

 と手にしたバットを振る。

 中黒弟の頭の上を掠め、ヒッてなる。

南「もうイジメ飽きたんで帰りたかったとこだ」

南「俺の部屋でスパ4やろうぜ」

チョコ「か、帰ろう、南くん、もう帰って!」

 と南の背中をグイグイ押す。

南「俺に寄って来るのはムサい男ばっかだぜ」

南「どっかに俺のこと密かに惚れてる女の子とかいねえのかな?」

チョコ「そんな漫画みたいな話があるわけないじゃん……」

 と並んで帰る二人。



↓コンテ

https://www.pixiv.net/artworks/86864999

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る