第16話 看板だけでは、勝てませんね・・・

 私も、選挙に出てみないかということを何度か、永野さんから打診されたことがある。

 一回目は、岡山市西大寺区からの立候補の話だった。しかしそれはまだH県内に居住していたこともあったので、そのうち立消えになった。

 問題は、二回目の宇野市の市議選に出てみないかという話があったときのほうだ。


 私が諸般の事情でH県から岡山県に戻ってきたのは2016年の9月。

 ちょうど岡山県知事選と県議補選が直近の10月にあったが、住民票を移したのが9月なので、投票権が投票日に間に合わない。その前の7月の参院選の時はH県内で投票権があったのだが、常木市議などに呼ばれて、この年は3月からかなりの割合で岡山市入りして参院選がらみの仕事を手伝っていた。

 この選挙では長年参議院議員を務めた江本六月氏が引退し、後継者として黒川健司氏という若い男性が立候補することになった。江本氏は選挙に強く、いつぞやの岡山県知事選の時を除き(この時は約5000票差で負けた)、民自党の候補者に負けたことがなかったが、後継ともなれば、いくら血のつながった親子といえども話は別である。


 先日の一斉地方選挙はで、私が6年間住んでいたH県A市で、ベテランの藤沢恒夫市議が引退され、後継者として息子の茂夫氏が立候補された。恒夫市議は長年民自党系の市議を務めており、議長経験もある。選挙にも強く、常に5位以内で当選するような人だった。一方の茂夫氏は、高校卒業後ドラフト上位で某在阪球団に入団した元プロ野球選手だが、けがなどで4年ほど在籍しただけで引退、その後競輪選手に転向して十数年活躍した後、自宅近くで整体院を開業しているという人物。知名度がないわけでもないし、ご本人の評判も、さして悪いというわけでもない。それでも、最下位当選した候補者に、約300票弱及ばなかった。その上に、次点、次々点での落選者もいたほど。

 親が市議会のベテランにして大物、その息子もそれなりの知名度もあって・・・というだけで、後を継いだ息子がすんなり当選できるほど選挙は甘いものではないことが、これでお判りいただけよう。

 そうは言っても国政クラスなら、息子やおい、ましてはまだ若い娘とか、あるいは知名度の高い人物なら、何とかなるのではないか、そう思われる方もいらっしゃるかもしれない。確かに国政で有力な保守系の有力候補者とその息子や娘、知名度の高い政治家の後継者であるというなら、そういう例もままあるが、そのようなパターンがすべてどこでも通じているわけでもない。

 先ほどの参院選では、民社連系の黒川健司候補は、民自党が立てた女性候補の小田野きみえ氏に10万票の差をつけられて落選した。


 それに続いてその10月に行われる岡山県議補選は、再び岡山市中央区から補選に出馬される丹生候補の対抗馬として立った大沢まなみ候補の選挙を手伝うこととなった。ちょうど岡山市に戻ってきたとはいえ、今回は肝心の「投票権」はない。その理由は、先ほど申しあげたとおりだ。とはいえ、政治活動や選挙活動ができないわけじゃない。常木の要請で、大沢候補の政治団体「グリーン吉備」のポスター貼りに回ったり、ビラまきに行ったりの活動をした。前回は丹生候補の応援に入ったのだが、今回は前回の選挙後のかれこれのいざこざなどがあったことと、政治信条の面での相違などもあり、結局は大沢候補の応援に回った。

 大沢候補はこの補選で丹生候補にダブルスコアに近い大差で勝利し、県議会議員になった。今年2019年の本選でも、圧倒的な強さを見せつけ、上位当選している。

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