第7話

 この世界にユグドラシルのキャラクター「ロボ・バイロート」として転生してから早いもので一ヶ月が経った。この世界にやって来てすぐに俺は、自分が製作したNPCであるシャルロットとシャインの三人で冒険者登録をして、それからは順調に冒険者としてのランクを上げて……いくことはなく。


 何故かバハルス帝国の「魔法省」という所に雇われることになった。


 魔法省というのは文字通り、魔法を様々な分野で活用するための研究をしている部所で、魔法省の活動はバハルス帝国の国力を向上させている。そして魔法省という名前から分かるように所属しているのは全員、魔法の腕を認められた者ばかりで、ユグドラシルとは比べ物にならない程魔法技術が劣っているこの世界では、エリート中のエリートが集まる超重要な部所だったりする。


 そんなバハルス帝国の中枢といっても過言ではない魔法省に、何故得たいの知れない俺達が雇われることになったかと言うと、事の始まりは冒険者登録をするためにバハルス帝国の首都アーウィンタールに訪れたことであった。あの日、せっかくだから派手に登場しようと思った俺は火力コソ正義八号を着て、同じくパワードスーツを着たシャルロットとシャインと共に、空からアーウィンタールの街中に降り立ったのだ。


 突然空から奇妙な全身鎧を着た人物が三人も降りてきた事で、アーウィンタールの通行人達は全員例外なく信じられないといった表情で大騒ぎ。今思えばこの時点で自重して大人しくしていれば良かったのだが、この時の俺は自重するどころか、冒険者組合までの距離を低速飛行して火力コソ正義八号の姿を周囲に見せびらかしながら進んだのだ。


 そしてパワードスーツを着たままだと冒険者組合の建物に入れないので、一度パワードスーツを脱いで建物に入り、無事に冒険者登録を終えて建物から出ると……。



 よだれを垂らさんばかりの恍惚の表情を浮かべた老人が、鼻息を荒くしながら俺の火力コソ正義八号にべたべたと手で触れていたのだ。



 どこからどう見ても変質者であるこの老人はフールーダ・パラダインというこの世界で最高位の魔法詠唱者マジックキャスターで、バハルス帝国の魔法省のトップであった。


 魔法省のトップをしているせいかフールーダは魔法に関する好奇心が非常に強く、突然空から現れた全員鎧、つまり俺達のパワードスーツが魔法の力を使われていると知ると、「飛行フライ」の魔法を使って文字通り飛んできたらしい。……目撃者の話によると、その時のフールーダは音よりも速い砲弾のような速度で飛んでいたらしく、着地の時も地面に着地したというよりも地面に激突した言うべき勢いだったそうだ。


 その後、火力コソ正義八号を作ったのが俺だと知ると、フールーダは俺達に魔法省で働くように言ってきたのだ。正直、この世界で最高位の魔法詠唱者マジックキャスターとされるフールーダでも俺達から見たら全然弱く、力ずくで誘いを断ることもできたのだが、頭の血管が今にも破裂しそうな顔をして鬼気迫る勢いのフールーダに押し負けて今に至る。


 いや、まあ……。冒険者になろうと思ったの社会的な地位が欲しかったからで、魔法省に雇われたことでその社会的な地位も手に入ったのだが……なんか予定と違う。

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