30 道で出逢う
1
白く熱い道を
白いカッターシャツの高校生が
自転車でくる
7年ぶりに会った息子、きのうのこと
美しく花開いたのっぽのあの子
その道を今日も彷徨えば
また出逢った有り難さ
足元の影のうえに
溢れそうな涙の玉、玉の汗
2
子守りにきて、と
末っ子が言うのでてくてく歩く朝まだき
坂道を自転車がおりてくる
なにも思わず見ていると
みるみる彼の顔になった
あ、と嬉しい
顔の下にもひとつ小さな顔が
可愛いノンくんだ
二人乗りで迎えに来たの
橋の向こうから出て来た二つの顔
今日のプレゼント
3
むかしむかし、少女がありました
恋した瞬間の若者の横顔を
いつも想っておりました
肩の形を恋うておりました
きゅっと道にプレーキの音
恋う人がそこに立っておりました
少女は夢から覚めて
醒めても若者がみえるので
日差し眩しく見上げました
とびっきりの白い笑顔が出逢いました
白い熱い道で何かに包まれておりました
誰もいませんでした
黙って視線を捧げ合っておりました
4
長の息子が亡くなったと
不吉の知らせ
目白警察署から枯れ葉のように
横断歩道を押されて渡る
その先に幻の長身がやってくる
はずもなく
往来の中にリュックを背負う影
まっすぐな眸の若人
電車に乗っていない人の気配
階段を駆け上っていった
最期の姿
駅の照明の眩い中へ
5
これもむかし
たまには私も恋人とふたり
無心に道を歩いていた
男が向こうからやってくる
それはわかっていた
彼はぴたりと足を止める
私の恋人の前で
「ぼかあ、ホモなんですが
あなたがとても気に入りました
ただ、なんというか
それを告げたくて
とうもお邪魔しました」
こんなことありえる?
時々あるさ
恋人は妙に体をくねらせた
同じこの道で
17歳の長の子と出逢うはずの
そんな未来と過去の街角
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