30  道で出逢う


白く熱い道を

白いカッターシャツの高校生が

自転車でくる

7年ぶりに会った息子、きのうのこと

美しく花開いたのっぽのあの子


その道を今日も彷徨えば

また出逢った有り難さ


足元の影のうえに

溢れそうな涙の玉、玉の汗


子守りにきて、と

末っ子が言うのでてくてく歩く朝まだき


坂道を自転車がおりてくる

なにも思わず見ていると

みるみる彼の顔になった

あ、と嬉しい


顔の下にもひとつ小さな顔が

可愛いノンくんだ

二人乗りで迎えに来たの

橋の向こうから出て来た二つの顔


今日のプレゼント


むかしむかし、少女がありました

恋した瞬間の若者の横顔を

いつも想っておりました

肩の形を恋うておりました


きゅっと道にプレーキの音

恋う人がそこに立っておりました

少女は夢から覚めて

醒めても若者がみえるので

日差し眩しく見上げました


とびっきりの白い笑顔が出逢いました

白い熱い道で何かに包まれておりました

誰もいませんでした

黙って視線を捧げ合っておりました


長の息子が亡くなったと

不吉の知らせ


目白警察署から枯れ葉のように

横断歩道を押されて渡る


その先に幻の長身がやってくる

はずもなく


往来の中にリュックを背負う影

まっすぐな眸の若人

電車に乗っていない人の気配

階段を駆け上っていった

最期の姿

駅の照明の眩い中へ


これもむかし

たまには私も恋人とふたり

無心に道を歩いていた


男が向こうからやってくる

それはわかっていた

彼はぴたりと足を止める

私の恋人の前で


「ぼかあ、ホモなんですが

あなたがとても気に入りました

ただ、なんというか

それを告げたくて

とうもお邪魔しました」


こんなことありえる?

時々あるさ

恋人は妙に体をくねらせた




同じこの道で

17歳の長の子と出逢うはずの

そんな未来と過去の街角

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