24  2011年の冬至から

冬至に至るのだなあ

ゆずだ かぼちゃだ 


忍耐を希望へ切り替える


あとは冬を乗り切るのみだ

小さな種を埋めておくこと

冬至の後は

明るさが増すのみだから


きのうまでとは大違い

冬至の記念の写真をアップ


さるすべり これを見て

自然の御業の繊細さを

初めて知った八歳のころ


次のお気に入りが浮かぶ

おおいぬのふぐりは余りに愛らしい

金魚草だの蛍袋だの烏瓜

猫じゃらし犬蓼(いぬたで)


よりによって冬に咲く花

枇杷に柊木犀、カクタス、八つ手

何を考えているのだい、きみたち


新種のクレマチスを買う

冬に白いベルのような花を吊るす

そして春にはどんどん延びる。



ほらね、お正月がきた昭和27年だ

特別なその日をくぐる

肩上げの晴れの着物に赤いりぼん

門松は凛々しく


遊び仲間はおすましして

行ったり来たり

どのお正月も晴れていたような

追い羽根の檜扇の実は

音高く響いた



成人したというお正月

華々しく車を連ね

振り袖姿晴れがましく

一族が故郷に集った


お世辞などもいわれたりして

実に美味なるお料理を

食べたが排泄物が

出てこない


恥ずかしがりの乙女ゆえ

なんにちも秘かに悩んだ

浮かぬ顔を不審がられる

思いもかけず待ち伏せされた

恐怖の晴れ着



末っ子が隣りで大きい

母は反対側で遅い

春日神社の石段暗く

ぞろぞろ森の中、善男善女


神木の向こうに突然空が現れる

例の如きお賽銭お神酒おみくじ

末っ子は笑顔、そのあと鬱になるとは

知らない


長男はもう空にいた

彼の人生を済ませて


母は父を見送った後もまだまだ

もっと長く生き延びるとは

思わずに拍手を打つ


露店で小さな鳥を買う

人を感知してチチチと鳴く



敗戦引揚げ不況好況

浅間山荘、サリン、台風、阪神と東北大震災、水素爆発

幸いにも厄災から免れて


末っ子が父となる

オトートが死ぬ

母とせめて正月を過ごそうか

老人ホームから三晩暇をもらって


驚くほどだ

赤ん坊を世話するのと同じ


こんな90歳が待っているなら

どうして生きよう

中天には昼の半月

欠けるのか満ちるのか

不明な形をして

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