【真実】③

※※※






 手に持った花火を背中へとしまうと、ゴツゴツとした岩場を歩きながら川を眺める。


 暫く歩くと、目的地へと辿り着いた俺は足を止めた。



「やっぱり……。探しに来て良かった」



 そう小さく呟くと、岩を渡って更に近付いてゆく。



「……涼」



 ニッコリと微笑むと、自分の足元へ向けてそう、声を掛ける。


 先程、優雨ちゃんが涼を突き落とした場所からさほど離れていない川下で、傷だらけになりながらも岩に掴まっている涼。


 俺はその岩の上に立つと、涼を見下ろして微笑んだ。



「……探してみて、良かったよ」


「……っ。……かえ……っ……!」



 必死で岩に掴まる涼の姿が、それはなんとも無様でーー

 抑えきれない歓喜に、思わずブルリと身体が震える。


 俺はその場で屈むと、川の流れが早くて動けないでいる涼の手首を掴んだ。



「……これはもう、いらないよね?」



 そう告げると、貝殻の付いたブレスレットを引き千切る。

 それに顔を歪めた涼が、何かを言おうとし口を開くが、川の流れが早くて言葉にならない。



「邪魔な虫は、殺さないとね……。ーーばいばい、涼」



 涼に向けてニッコリと微笑むと、手にした石で涼の頭を殴りつける。

 その衝撃で、岩から手を離した涼は川へと流されてゆきーー


 その数秒後、川にのまれた涼は完全にその姿を消した。


 俺はゆっくりと立ち上がると、涼が消えていった川を眺めた。



(あぁ……。これでやっと、邪魔な涼がいなくなったーー)



 そう思うと、凄く嬉しくてーー

 目の前の川を眺めながら、ゆっくりと目を細めると口元に弧を描く。



「ーーあれ、……楓?」



 不意に聞こえてきたその声に、ゆっくりと後ろを振り返る。

 するとそこには、不安そうな瞳で俺を見つめている朱莉ちゃんがいる。



「……朱莉ちゃん。どうしたの?」



 俺はそう声を掛けると、朱莉ちゃんに向けてニッコリと微笑んだ。






ーーーーーー




ーーーー






※※※






 成長と共に、その可愛らしさを増してゆく夢ちゃん。

 小さな身体と愛らしい顔立ちに、酷く庇護欲を掻き立てられるのと同時に、メチャクチャにしたくもなる。


 ーーそんな衝動を抑える為。

 いつからか俺は、不特定多数の女の子と関係を持つようになった。


 幸い、女の子に困ることのなかった俺は、その全てを夢ちゃんの代わりとして抱いた。


 それは最早ーーただの性処理にすぎない。



(あぁ……。夢ちゃんが相手だったら、どんなに幸せなんだろう……)



 そう思いながらも、不特定多数の女の子と肌を重ねる日々。



(まだ、時期尚早だからね……。奏多が牽制けんせいしてくれてるお陰で、暫くは安心だろうしーー)



 ニヤリと口元に弧を描くと、嬌声きょうせいを上げ続ける女の腰を掴んだ俺は、更に奥へと己を押し込んだーー







※※※

 






 高校へと進学すると、程なくして自制の効かなくなった奏多が暴走し始めた。


 夢ちゃんのことを、力ずくで手に入れようとする奏多。

 すっかりと怯えてしまっている夢ちゃんを見て、奏多はなんて馬鹿な男なんだろうと思った。


 夢ちゃんを犯すのなんて、そんなのは簡単なこと。

 でも、俺は夢ちゃんの心も身体もーーその全てが欲しかった。



 俺だけを見て、俺だけを必要としてくれる夢ちゃんがーー



 だから、奏多みたいに馬鹿な真似は絶対に犯さない。

 そんな事をしたって、夢ちゃんに嫌われてしまうだけだからーー


 俺はゆっくりと確実に、夢ちゃんの全てを手に入れる。



(だけど……。お仕置きは必要だよね)



 そう思った俺は、奏多に従い俺を避け続ける夢ちゃんに虫をプレゼントした。


 泣いて怖がる夢ちゃんは、それはそれはとても可愛くてーー

 酷く興奮したのを、今でも覚えている。



(ーー今回は、それ以上かな……?)



 腕の中でスヤスヤと眠る夢ちゃんを眺めて、うっとりとする。


 これは、相変わらず奏多に従って俺を避け続ける夢ちゃんへのお仕置き。

 抱えている夢ちゃんをそっと畳の上へと下ろすと、その両手を拘束して目隠しをする。


 先程、ペットボトルに仕込んでおいた睡眠薬で、ぐっすりと眠っている夢ちゃん。



(夢ちゃんは本当にバカで……可愛いね)



 俺はぐっすりと眠る夢ちゃんに跨ると、まるで壊れ物を扱うかのようにそっと優しく触れると、その小さく愛らしい唇にキスを落とした。


 ーー暫くの間、夢ちゃんとのキスを堪能していると、目を覚ましたらしい夢ちゃんが抵抗をし始めた。

 泣き叫んでいるのであろう夢ちゃんに、酷く興奮する。


 少し脅かすだけのつもりでいたけれど、どうにも止まりそうにない。

 そっと胸に触れてみると、身体の割に大きいソレに更に興奮する。



(もう、このまま犯してしまおうかーー)



 ーーそう思った時。


 夢ちゃんの口から、涼の名前が飛び出した。

 その名を聞いて、一瞬で我に返った俺はピタリと動きを止めた。


 あの日ーー駆除したはずの害虫。


 夢ちゃんは、まだ涼のことを忘れられないらしい。

 なんて可哀想な夢ちゃんーー


 乱れた姿で恐怖に打ち震える夢ちゃんを見下ろし、恍惚こうこつとした表情で微笑む。



(こんな夢ちゃんの姿……。目隠しのままだなんて、勿体ない事をするところだった……。ーー続きはまたね、夢ちゃん)



 俺は心の中でそう呟くと、夢ちゃんを置いて書道室を後にしたーー






ーーーー




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