高1【夏】
第1話
※※※
「夢。……ほら、いつもみたく口を開けて?」
私の顎を掴む奏多くんは、そう言って優しく微笑んだ。
ーー楓くん達と揉めた日以来。
奏多くんは、毎日私にキスを求めるようになった。
当初、勿論私はこの行為を嫌だと拒んだ。
この行為は、罰でしか与えられないものだと思っていたから……。
拒む私に怒り出した奏多くんを見て、黙ってこの行為を受け入れるという選択肢しかないのだとーー私はそこで、初めて知った。
何度も私の口内を堪能した奏多くんは、その行為に満足すると私を解放する。
私の頬に流れる涙をそっと拭った奏多くんは、「いつまで経っても慣れないね、夢は。……可愛い」と言って
ーーそんな奏多くんが私に求めたのは、キスだけではなかった。
更に交友関係に
朱莉ちゃんとも何故か疎遠になり、私の学園生活はほぼ、奏多くんと2人だけの世界になってしまった。
奏多くんに従い、奏多くんが怒れば謝る。
私は1人、泣きながらそんな日々を過ごしているーー
「それじゃあ夢、また後でね」
私の目の前で優しく微笑む奏多くんは、「今日も、良い子でいるんだよ」と私の耳元で囁くとその場を去ってゆく。
私はそんな奏多くんの後ろ姿を見つめながら、大好きな涼くんの姿を思い浮かべた。
いつも私の側にいてくれた涼くん。
私が困っている時には、必ず手を差し伸べて助けてくれた。
(ーー涼くん、助けて……)
薄れる意識の中、私は居るはずのない人へ向けて助けを求めるとーー
静かに涙を流しながらそっと瞼を閉じた。
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