歪ーいびつーー

邪神 白猫

プロローグ






「ーー愛してる」



 そう笑顔で告げると、掴んでいた柵を離し両手を広げた。


 ゆらりと揺れる身体。


 雲ひとつない綺麗な青空が広がり、まわりの音さえ何も聞こえない。


 それはやけにスローモーションで。

 ふわりと後ろへ傾いてゆく身体。


 ゆっくりーーゆっくりと。


 まるで、この綺麗な空へ飛んでゆくかのようにーー




 どうして私達は、

 こうなってしまったのだろうーー



 いつからーー

 いつからこうなってしまったのだろう。


 あの頃に戻りたいーーあの頃に。





「ーーい゛やあぁぁぁぁぁぁー!!!!」



 空気を裂くような絶叫に、遮断されていた音が一気に蘇る。



「いやぁぁー!! ……いやぁぁぁぁー!!! ぅっ……ぐッ……なんでっ……。なんっ……でぇ……。なんでぇ……っ……」



 力を無くした足は、立っている事ができずにその場に崩れ落ちた。


 少し熱を持ったアスファルトに掌をつくと、その手をキュッと握りしめる。

 握りしめた掌のすぐ横のアスファルトには点々と模様ができ、それは徐々に大きなシミとなっていった。



「どうしてっ……ぅっ。……ぅぅっ……どうしてぇぇぇーー!!!!!!」



 悲痛な叫び声は虚しく響き渡り、行き場を無くした声はただ空へと消えていった。


 なんで? どうして?


 何度叫んだところで、その答えは返ってくるわけもなくーー



 ただ、遠くで微かな鈴の音が聞こえるだけだった。






ーーーー




ーーーーーー







歪ーいびつー






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