第21話 勲章授与2/4
――良くわからないので、色々端折りました――
その後は街とかに泊まったり、豪華なテントで寝泊まりをして王都に着いた。まぁ、一回だけ襲撃があったが、ただの盗賊だった。
暇だったヘイが走ってる馬車の上で、立ったまま全員を狙撃するっていう曲芸を見せてくれた。マジアイツヤベェヨ……。
「さて。事前に話したが、城内では例の服で過ごせ。武器の所持は認められてないが、その小さな魔法武器ならある意味武器に見えないから問題はないだろう。何かあったら俺に報告に来い、以上だ」
突っ込みたい気分を押さえながらメディアスについて行くと城内に案内され、その後は少し地味系で、胸の大きなメイドさんが身の回りのを世話をしてくれるらしい。
「スピナシア様の専属メイド、エミリーです。何かありましたらあちらの呼び鈴を鳴らして下さい。では失礼いたします」
そう言うとエミリーさんは去って行った。思っていた以上に何もなかった。
早速部屋のチェックをするが、やっぱり覗き穴があるので色々な調度品で塞ぎ、その事をヘイに連絡してからイスに腰掛け、テーブルに指輪ケース大の箱を取り出して開ける。ハエ型偵察機だ。
左腕の端末で偵察機を操作し、ドアの下の隙間から廊下に偵察機を這わせて飛ばし、隣の部屋で待機しているエミリーさんを監視するが、変な動きは特にない。
毒を警戒してペットボトルの水を飲みながら、しばらくエミリーさんを監視していたら、ドアの隙間から紙が投げ入れられ、それに気がついたのか拾う為に立ち上がった。
肩に偵察機を停まらせ手紙の内容を見てみると、大切な話があるから突き当たりの倉庫に来いとしか書かれていなかった。
肩から背中に偵察機を這わせ、廊下を歩く足音と映像が映り、しばらく歩いたらドアが開く音がし、中に入っていった。
その数分後にもう一人の胸の大きなメイドさんが入ってきて、ヘイからボイスチャットが来た。
『ここにいるメイドって、スピナの専属?』
『あぁ、監視してたら手紙が投げ入れられた』
『こっちもだ。専属を部屋から離れさせるなよなー』
ヘイは愚痴っているが、その時もう一人部屋に誰か入ってきた。服装からして貴族だろうか?
『上手く専属になる事ができたみたいだな。とりあえず事前の打ち合わせ通り上手くやれ。毒はいつ渡せるかわからないから今渡しておく。明日の食事会の時に酒に盛れ。部屋を長く離れてるとまずいしもう戻れ。上手くやったら報酬を支払うし、私の屋敷で今よりもいい給金で働かせてやる』
そう貴族が言うと、紙に包まれた毒を渡してから倉庫から出ていき、エミリーさんも部屋に戻ってきた。
『色々言いたい事があるけど、まず先にいいかい? スピナのメイド胸大きすぎ。情報はまだ平気そうだね』
『だな。胸が小さかったら警戒度を上げるところだった。そっちの胸もデカかったし、貴族は大きな胸のメイドを選んだんだろうか? 男が全員大きな胸が好きだと思うなよ』
『むしろこっちの情報が漏れてると思いたくなった。買ってた娼婦の傾向を知られてる? って思っちゃったよ。貴族社会だか敵国のスパイか知らないけどなんか怖いわー』
『まぁ、ヘイがどんな娼婦を買ってるかは置いておいて、最悪メイドは貴族の趣味だろうな。もしかして第二第三婦人候補か、性欲処理用だろ? むしろまず毒だな。食事会は警戒。今日の食事も警戒したい』
『こっちはありがたく色々な意味で両方いただくけどね。ベッドで探りを入れてみるさ。どうせ夜の方も、任されてるとか言ってくるんじゃない?』
『だな、とりあえず機会があればメディアスに報告。後は何かあったらお互いに報告。もう切るぞ。あ、お互いに盗み聞きはなしで』
俺はそう言って通信を切り、端末を見るとエミリーは部屋に戻っていた。そして壁の方に歩き、何かを覗くようにしているが、既に穴はこっちから塞いであるので問題はない。細い物でつついてもいい気がしてきた。もう俺の中では敵認定のラインを越えたし。
とりあえず呼び鈴を鳴らしてエミリーを呼ぶ。覗き穴を隠している事を隠さずに。
「お呼びでしょうか?」
エミリーが入ってきて左右の壁の方を見ている。やっぱり気になるよな。意味もなく数ヶ所に積んである本なんか嫌でも目に付くだろうし。
「すまないがお茶を頼めないだろうか? 急ぎじゃないから慌てなくてもいい」
「かしこまりました」
エミリーは丁寧に頭を下げ、部屋から出ていったので監視を続ける。毒じゃないナニかを盛られたら嫌だからな。雑巾の絞り汁とか。
別にチップとかはいらないらしいが、成功報酬以上のチップを渡したら寝返るだろうか? いや、面倒になりそうだからこのままいこう。
□
そのまま監視をするが特に問題はなかった。お茶も美味しいし、ヘイからの連絡もなかった。
そして夜になり、個室で夕食を食べ終わらせ、特にやることもないので寝ようとしたらドアが控えめにノックされたので、返事をせずにゆっくりと開ける。
「夜分に失礼いたします」
エミリーはそう言い部屋に入ってきた。いったいなんだろうか?
「もしよろしければ、夜の方もお相手しろと言われております」
そう言い、燭台をドアの横の棚に置くといきなりメイド服を脱ぎだした。
「あぁ、すまんが間に合ってる。恥をかかせてすまないが服を着てくれ。報告書に書いてなかったか? 既に結婚済みで多数の女との関係を嫌うって。聞いてないなら報告が末端に行き届いてないと言うことになる。言ったのは誰だ? いや、やっぱりいい。今夜の事は胸の内に秘めておく。出て行ってくれ」
俺は指輪を見せ、着替えを終わらせて出て行くまで見ていようと思ったが、ヘイの事を思い出した。
「あぁそうだ。もう一人の方がは好色だ、そっちに行ってくれ」
「私はスピナシア様の専属です。夜中でも呼び出しに応じられるように、部屋にいないといけませんので……」
「そうか、今夜は呼び出す事はない。寝てていいぞ」
そう言ってメイドが出て行ったあと、まだ肩に偵察機がついているので端末を起動させると、メイドは部屋に帰らずにしばらく歩き、別な部屋に入った。
『夜遅くに失礼します。私の事は見向きもせず、報告書が届いているらしく、既に誰かと結婚していまして、多数の女性と関係を持つ事を嫌うそうです。もう片方の方が好色との事ですが、一応専属という事でその申し出は断らせていただきました』
『そうか。傭兵みたいな見た目の割りにアッチの方は堅い奴だ。スピナシアとかいう奴から情報を聞くのは諦めよう。下がれ』
『失礼いたします』
エミリーは貴族の部屋から出ていき、音が鳴らないようにドアの開け閉めをして部屋に入り、大きなため息を吐いてからベッドに座った。
『少しだけ残念だった……かな?』
そう呟き、ベッドに仰向けに倒れ込んだのか一瞬で天井が見えたので、部屋を見渡せる場所まで偵察機を移動させて端末操作を止めた。
もったいないとは思わないからな、俺は腹芸とかは得意じゃないし。
◇
翌朝目が覚めたので、偵察機を起動するとエミリーの姿はなかった。やっぱりメイドさんの朝は早いよな。
寝るためにラフな格好だったが、式典用に礼服を選択し、武器もとりあえずいつもの自動拳銃を選択してイスに座って待つ事にする。
そしたら控えめのノックがしたので返事をすると、エミリーがワゴンを押して朝食を運んできてくれた。
「おはようございます。朝食をお持ちしました」
「あぁ、おはよう。そしてありがとう」
「お早いんですね。もう少し遅いものだと」
「なるべく規則正しい生活をしてるからな。まぁ、冒険者とか粗野で大酒飲んで朝が遅いイメージだからな」
「そのようなつもりで言った訳では……」
「気にしてないさ」
「この後は叙勲式です。湯浴みをしてから係りの者が来るまで待機していただいてもよろしいでしょうか?」
軽く会話をしながら、朝食を見られながら食べ終わらせると、エミリーがこれからの予定を軽く教えてくれた。
これから風呂か……。ってか風呂の世話もエミリーかよ!?
「高貴の産まれじゃねぇからよ、一人で入れる。ってか恥ずかしいから出てってくれねぇか?」
「かしこまりました。廊下で待たせていただきますので、何かありましたらお呼びください」
俺は軽く返事をして風呂に入り、髭は生えないから何とも言えないけど、問題はないと思いたい。ってかアバターだからヘイの髭はどうするんだろうか?
□
「やぁ、おはよう」
髭はそのままだった。やっぱり無理だよなー、ってか逆にお洒落に見えるから問題はないか……。
その後は叙勲式になるが、会場は厳粛な雰囲気と、メディアスのような貴族が二十人程度いて、国王様の前にひざまづきながら習った事を完璧にこなし、最後に胸に勲章を着けてもらい叙勲式は終わった。
国王様はものすごく笑顔の似合う、初老の優しそうな人だった。しかもこってこての王冠にマントで、服とかも細部に色々な装飾もあった。
そして入ってきた入り口とは別なドアが開き、食事会の準備がされていた。
「さぁ二人とも、堅苦しいのはここまでだ。気軽に食事でも楽しもう」
国王様に肩を叩かれ、食事が用意されている会場に促されて、結婚式のように自分の名前のプレートが置かれている場所に座る。
テーブルは長細く、一番奥に国王夫妻が座り、位の高い順から手前に来る感じで、一番手前にヘイと向かい合う形になる。
「さて、英雄の話しを聞く前に乾杯といこうではないか」
メイド達がグラスにワインを注ぎ、習ったテーブルマナーとは多少違うが乾杯をして飲むふりだけする。
そして昨日エミリー立に毒を渡していた貴族が、こっちをチラチラと見ている。テーブルの真ん中辺りなのでそれなりに偉いんだろうな。
メディアスは奥の方だからかなり偉いんだろうなぁ……。ってか公爵だから当たり前だよな。
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