第205話 おっさん、変装する

『属性魔導のスキルオーブを得たい』

「無理よ」

『包帯でぐるぐる巻きにしてもか』

「それではもろばれね」

『砂鉄を粘土に混ぜて骨に肉付けすれば良いんだ』


 それなら人間に包帯を巻いたように見えるだろう。

 やってみた。


「うわー、人型のモンスターね。関節の所の違和感が昆虫みたい」

『仕方ないだろ関節に粘土をつけると動けないんだから』

「関節の所には綿を詰めて包帯を巻きましょ」

『良いね、やってくれ』


「問題は目よね」

『空洞だからな』


 頭蓋骨の内側からカラコン付きのピンポン玉を付けるとしよう。

 ここで問題発生。

 カラコンとピンポン玉が高いので買えない。

 それに目にはどうしても見えない。

 サングラスの出番かな。

 異世界でサングラスをしている人はいない。

 強い光はご法度で、医者に薦められ特注で作ったという良い訳をしよう。

 粘土に肌色の塗料も混ぜたい。


 うがぁ、魔力が足らん。

 合成魔石は買えるけど、魔力を充填してもらう必要がある。

 ジェマと俺とでチマチマ溜めるのも一つの手だが、何日も魔力充填で足踏みするつもりはない。


 総額5万魔力。


『魔力を集める為にギルドで依頼を出そう』

「何のために?」

『教えてなかったか。俺の物を生み出す力は魔力が元だ』

「そうなのね。怪我で依頼が出来ない人とかいるから良いかも。剣が遠のくけど我慢するわ」


 5万は高いと思うが。

 ギルドの人間はそうじてレベルが高いため、魔力が2千ぐらいがゴロゴロしている。

 25人に依頼を出して、金貨1枚掛かった。

 今までの貯めた金がすっからかんだ。


 準備は着々と進んだ。

 透明人間かミイラ男かという姿が出来上がった。

 目のピンポン玉には鉄片が貼り付けてあって、能力で眼球が動くようになっている。

 我ながら良い出来だ。

 余った魔力でいくつか武器と商材を仕入れた。


 スキルオーブの配給所に並ぶ。

 配給所は子供や若い男女が列を作っていた。

 民衆は俺を見ると痛ましそうな目でみるか、気味悪げな目で見るかの二つに分かれた。


「次。な、何だお前は」

『怪我してこうなりました。刺されて汚染されたんです』

「そうか、毒に侵されたんだな。可哀そうにな。言葉が喋れない奴にはスキルオーブを渡さない決まりだが、特別だ。ほらよ」


 俺は渡されたスキルオーブを吸収した。


「強く生きろよ。きっと良い事もあるさ」

『ありがとう。世話になった』


 チタン板も魔力2千で手に入れ準備は万端だ。


 3階層はファイタースケルトンとナイトスケルトンの混成パーティがうろついていた。

 ナイトスケルトンは馬無しなんで、ボスよりは弱いと思われる。


『見ててくれ。魔導の試し撃ちだ』

「ええ、お手並み拝見」

「カタカタ、カタカタカタ(属性魔導アトリビュートマジック、刃よ回転して切り刻め)」


 ダイヤモンドカッターの刃がナイトスケルトンを切り裂く。

 おっ、一撃か。

 こいつは幸先良いぞ。


「凄い。兜に穴が開いたわ」

『刃にはダイヤモンドの粉を入れてある』

「これなら、硬い敵もイチコロね」

『そう願いたい』


 3階層は大した苦戦もせずにボス部屋に辿り着いた。

 出て来たボスは豪華な鎧に身を包んだ一見ナイトスケルトンに見える奴だった。



「気をつけて。ジェネラルスケルトンよ」


 ギルドの情報ではこいつはスケルトンを統率するのだったな。

 遅れてスケルトンの大群が沸いて出る。

 ふっ、スケルトンごとき訳ないぜ。


 ところが、スケルトンは俺の足にすがり付いてきた。

 背後からも容赦なく襲ってきた。

 やばい負けそう。


「カタカタ、カタカタカタ(属性魔導アトリビュートマジック、衝撃波よ吹き飛ばせ)」


 衝撃波を全方向に出して、一旦、仕切り直しだ。

 集団に個で立ち向かうは難しいな。


 各個撃破を出来る状況にしないとな。


「カタカタ、カタカタカタ(属性魔導アトリビュートマジック、石の床よせりあがれ)」


 簡易的な陣地を構築。

 ジェマの居る所も石壁で囲っておいた。


 パチンコ玉もばら撒いておこう。

 ところがだ。

 パチンコ玉の制御が俺から離れた。

 離れたどころか俺目掛けて飛んで来る。

 ジェネラルスケルトンの能力っていうのは、他のアンデッドの制御を奪い取る事なのかも知れない。


 俺も出来るかな。

 俺は身近にいるスケルトンに金属支配を伸ばした。

 むっ、ジェネラルスケルトンと押し合いになったな。

 だが、こいつは奪えそうだ。

 遂に金属支配がスケルトンのコアを奪った。

 コアって金属だったんだな。


 よし、次に行こう。

 俺はスケルトンの半数を味方につけた。

 こうなれば後は消耗戦だ。

 スケルトン同士が戦う。

 しかし、俺達が劣勢だ。

 なぜだ、指揮の差って奴かな。


 だが、俺には属性魔導がある。

 適当に援護の手を入れるだけで戦局は俺に傾いた。


 ダイヤモンドカッターの刃でジェネラルスケルトンに止めを刺す。

 石の壁がダンジョンの修復力で解除された。

 ジェマが駆け寄ってくる。


「危なかったわね」

『ああ、少し手こずった。しかし、新たな力を手に入れた』

「隙間から見てたけど、ジェネラルスケルトンに存在進化したのよね」

『まあな』


 今日の探索はこれで終わりで良いだろう。

 ポータルに乗って出口に向かう。

 4階層はどんな奴がボスかな。

 能力の使い方をパクるのは楽しい。

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