第172話 おっさん、金属魔導士と知り合いになる

 街でも臨戦態勢。

 ダンジョンでも臨戦態勢。

 気の休む暇がない。

 地球に一回、帰りたくなった。


 言っても仕方ない。

 今が一番つらい時期だと思う他はない。


「あっちで悲鳴がする」

「アニータは耳が良いな」

「助けに行かないの」

「むやみに戦闘に乱入するのはお勧めできない。横取りしたと思われる事もある」


 どの世界でもダンジョンを攻略中の人間は干渉を嫌う。


「行ってあげようよ」

「様子をみるだけだ」


 アニータに指示してもらい、悲鳴が聞こえた方に行く。

 俺にも戦闘音が聞こえてきた。

 現場に駆けつけると5人の男女のグルーブが戦闘中だった。

 床には既に2人倒れている。

 どうやら、通路でモンスターに囲まれてしまったらしい。

 モンスターはオークだった。


「助けがいるかぁ」

「お願いします」


属性魔導アトリビュートマジック、電撃」


 俺は電撃を拳にまとい殴った。

 痙攣するオーク。

 いっちょ上がり。


 それからは作業だった。

 オークは全て魔石になった。


「オークに5人もいて手こずるなんて、実力が見合ってないな」

「ハイオークがいなければ大丈夫だったんですが。鉄魔導士が相打ちになってしまって」

「お前らは金属魔導士の集団か」

「ええ、金属魔導士会に所属してます」


 手当が終わったようだ。

 倒れていた二人も起き上がった。


「私は鉄魔導士のウェンだ」


 起き上がった魔導士が自己紹介してきた。


「チタン魔導士のムニだ」

「チタン? 聞いた事がないな」

「ちまたでは詐欺魔導士だ」


「でも実力はある。少なくとも鉛魔導士より強い」


 ウェンの探るような目でこちらを見た。


「そうだな。鉛や銅よりは強い。鉄には負けるがな」

「みたところ、金属の触媒を使っている。ここで会ったのも何かの縁。金属魔導士会に入らないか?」

「話を聞くだけならな」

「では、今日は一緒にダンジョンを攻略しよう」

「いいぜ。だが、やり方はこちらに任せてもらう。まずは空気タンクを作る」


 空気タンクの作り方をレクチャーした。

 そして、おなじみのクロロホルム攻撃だ。


「塩と水と炭でこんな攻撃が出来るなんて。教えてはくれないのだろうな」

「ああ、教えられない」


 ザコを次々に撃破。

 レベルが高いせいで、ボスも問題なく撃破した。

 いよいよラスボスだ。


 現れたのはやっぱり、水色のドラゴン。

 チタンワイヤーを掛けて行動を阻害する。

 そして、吐かれたブレスは水。

 ナトリウムじゃ仕留められないな。


 ダンジョンの床で壁を作りブレスを防ぐ盾とする。

 ダイヤモンドカッターの刃を取り出し。


属性魔導アトリビュートマジック、高速回転して切り刻め」


 投げられた刃はドラゴンに突き刺さった。


「あの刃物は何だ。ただの投てき武器ではないよな」

「秘密兵器だ」

「鋼鉄でもドラゴンのウロコには歯が立たない。秘密にしたがるのも頷けるよ。おっと鋼鉄は金属魔導士会の秘密だ。今言った事は忘れてくれ」


 ダイヤモンドカッターの刃に切り刻まれてドラゴンは死んだ。


「よし、ダンジョンコアの魔力は俺がもらう。ダンジョンコアは譲っても良い」

「いえ、我々は見ていただけだから、もらうなんて」

「そうかい。なら、ドラゴンの魔石とドロップ品のエリクサーは持っていけ」

「では、遠慮なく」


 ダンジョンコアから魔力を吸い取った。

 ステータスを見る。


――――――――――――――

名前:山田 無二 LV206

魔力:85782614/20600


スキル:

収納箱

魔力通販

次元移動

属性魔導

土魔法

魔力壁

分解

想像強化

――――――――――――――


 レベルはだいぶ上がったな。

 スキルも増えた。

 が、使えるスキルがない。

 属性魔導が便利過ぎるせいだ。

 分解スキルも属性魔導で再現できそうだ。

 土魔法もだ。

 これと言った物があれば魔力通販で買うのだが。


 ダンジョンコアを取るとポータルは光を失った。

 ダンジョン討伐すると帰りは徒歩になるからだるい。


「あなたに大変、興味が出てきましたよ。是非これから金属魔導士会まで来てくれよ」

「話を聞く約束だったからな」


 ダンジョンの入口に停めてあった彼らの馬車に乗り込む。

 7人は座れないので、2人は御者台に移ってもらった。

 アニータは小さいので女性と並んで3人座る。


「バイクは出さないの」

「あれは目立つからな」

「バイクって何だ。また、ムニさんの秘密が増えたな」


「説明はしない。めんどくさいからな」


 さて、金属魔導士会はどういう所だろうな。

 偉ぶった集団でなければ良いんだが。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る