第150話 おっさん、飛ばされる

「よう、久しぶり。大人しく刑務所に入ってくれないか」

「断る。この日をどれだけ待ちわびたか」

「大人しくって訳にはいかないか」

「戯言は要らん。次元斬撃ディメンションスラッシュ


 斬撃が空間を切り裂く。

 空間の裂け目から別の風景が見える。

 慌てて俺はのけぞって避けた。


「これを食らったら俺でも、やばそうだ」

「問答無用。次元斬撃ディメンションスラッシュ


 俺は防戦一方になった。

 こんなのやってられん。


次元斬撃ディメンションスラッシュ

「ふん、やけくそだ。分解ディサセムブル


 メイスと日本刀が打ち合わされる。

 空間の裂け目は分解されて、日本刀も一緒に分解された。

 俺は兄貴をメイスで普通に殴った。

 高レベルだと思うから死なないよな。


 気絶した兄貴に呪いを付加する。

 ふう、こんな物騒なスキルをどうやって得たんだか。

 普通の方法じゃないよな。

 それは置いといて先を急ごう。


 電話のナビに従って発電所のコンロールルームを目指す。

 大体、そういう所に立てこもるものだ。


 途中の扉が施錠されていたが、分解スキルを駆使して進む。

 遂にコントロールルームに到達した。


「ここまで来おったか」


 八咫やた老人は一人で待ち構えていた。


「諦めろ。大人しく逮捕されるんだな」

「嫌じゃ。刑務所に行くぐらいなら死んでやる。お前も道連れだ」


 八咫やた老人がスイッチを握ると爆発が起きて、俺は木の葉のように宙を舞った。

 空間が裂けるのを空中を舞いながら見た。

 やべっ、飲み込まれる。


 爆風に抗える訳もなく俺はどこかに転移したようだった。

 舗装されてない道が見える。

 アフリカとかだったら良いが。

 どうも風景が違う。


 怪我がないか体をチェックする。

 衣服は飛ばされて下着姿。

 残された金品はチタンのブレスレッドのみ。


 アイテムボックスから衣服を出そうとして、出ないのに気づく。


 まさかな。

 異世界なのか。


「ステータス」


――――――――――――――

名前:山田 無二 LV1

魔力:100/100


スキル:

収納箱

魔力通販

次元移動

――――――――――――――


 おう、初期化されてる。

 ここは異世界確定だな。

 三番目の異世界。

 そうだな名前はガンティスだな。


 次元移動があるから帰る事は出来る。

 だが、レベルが足りない。


 仕方ない道を歩こう。

 どこかの街に着くだろう。


 少し歩くと風景は田園に変わった。

 麦に似たものが植えられている。

 人間がいる事が確定したな。

 願わくば肌の色とかが同じだといいけどな。


 牛に似た動物を飼っている所に出くわした。

 良かった。

 風体はそんなに違わない。

 言葉は分からんが、それは学習すれば良いだろう。


 コミュニケーションツールが要るな。

 俺はマーカーとセットになった100均の小さいホワイトボードを魔力通販で買った。


 街の絵を書くと、牛飼いはある方向を指差す。

 そっちに行けば良いのね。

 俺は懸命に歩き、街が大きく見える所まで到達した。

 街は城壁に囲まれている。

 どこも変わりないんだな。


 何やら列に並ぶ人達の姿がある。

 検問かな。

 列に並ぶ人の姿は誰も若くてみすぼらしい。

 おっさんは俺だけだ。

 牛飼いと比べてそうなのだから、最下層の人々なのだろう。


 なんか嫌な予感がするな。

 炊き出しの列とかだったら良いのだが。


 列は短くなって行き俺の番になった。

 手渡されたのはスキルオーブ。

 早く使えよと渡した男の目が言っている。


 俺はスキルオーブを使った。

 なんのスキルオーブだ。

 隷属とかじゃないだろうな。


「ステータス」


――――――――――――――

名前:山田 無二 LV1

魔力:100/100


スキル:

収納箱

魔力通販

次元移動

属性魔導

――――――――――――――


 属性魔導は聞いた事がない。

 俺は男に連れられて何やら色々な物が置いてある場所に連れてこられた。


 まず炭が置いてあるテーブルの前に立たされた。

 さっき貰ったスキルを炭に使えって事なんだな。


属性魔導アトリビュートマジック


 何にも起こらない。

 金、銀、鉄、鉛、銅それに名前の知らない金属や宝石の前でスキルを使ったが、うんともすんとも言わない。

 次に水で試したか駄目で。

 骨、空気に試して終わりとなった。

 男はがっくりした顔になり俺は放り出された。

 これは無料でスキルを貰えてラッキーと思った方がいいのか。

 街の門の所に行くと入る為に金がいると分かった。


 こういう時はスラムだな。

 俺は城壁の外に出来たあばら家が集まっている区域に入り込んだ。

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