第84話 おっさん、毒を掛けられる
ベンケイの狩場は4階層に移っていて、現在レベルは22だ。
ベンケイのパワーレベリングの過程で、俺の呪いは必ずしもラスボスを倒さなければいけない訳ではない事が分かった。
下層で100戦ぐらいすると、呪いの欲求が弱まる。
ベンケイとの連携を取るために訓練していて分かった事だ。
今日も張り切って行きますか。
おっ、今日の相手は狐だな。
炎の玉を吐き出したぞ。
火炎狐という所だろうか。
「行け、ベンケイ」
ベンケイはステップを踏み火炎狐の首筋にかみついた。
消える火炎狐。
こいつは、認識阻害か。
いや、俊足スキルだな。
火炎狐がベンケイの後ろに現れて火の玉を吐いたので分かった。
こいつは火炎幻惑狐だな。
名前なんざどうでも良い頑張れベンケイ。
ちなみに俺はレベルが高いので、こいつらとやっても今なら普通に勝てる。
不意を突かれなければ俊足スキルにも惑わされない。
ベンケイと戦ううちに慣れた。
連携を取る相手のベンケイを見失っていたら、戦いもないからな。
動体視力がレベルに追いついてきたのだろう。
今までは急なレベルアップに体がついていかなかったと思われる。
まあ、動体視力がついていかなくとも、相手の攻撃は魔力壁で効かないので、捕まえてしまえばどうという事はない。
戦いはベンケイが勝利した。
「わんわん」
「何だほめてほしいのか」
「うー」
次の瞬間、俺に向かって液体が掛けられた。
ベンケイが俺をかばって液体を受ける。
俺は液体の出元をメイスで薙いだ。
くの字になって姿を現す闇冒険者。
俺は闇冒険者を放っておいて、ベンケイのもとに駆け寄った。
「ベンケイ! 飲めエリクサーだ」
ベンケイの口をこじ開けエリクサーを流し込む。
駄目だ。
ぐったりとしてベンケイは起き上がらない。
考えろ。
何か他に打てる手は。
毒の特定をすれば、解毒剤が作れるかもしれない。
闇冒険者が持っていた瓶を回収する。
あと出来ることはなんだ。
駄目だ時間が足らない。
そうだ異世界に行けば時間が止まる。
異世界でゆっくり考えればいいんだ。
「
ベンケイを後に残し俺は異世界に飛んだ。
さて、どうする。
エリクサーが効かない毒の文献を集める事だな。
文献には打つ手なしと書かれていた。
体力が勝れば、生き残る可能性もあるらしい。
レベルが高い人間がそれで生き残ったと書かれている。
運任せはつらいな。
魔力壁について毒に対する考察もあった。
魔力壁は体の表面に魔力の膜を展開する。
しかし空気は通す。
液体は通したり通さなかったりする。
魔力がフィルターの役割を果たしていて、その性能に関する事なんだろう。
魔力の密度も関係しているのかもしれない。
これは今は関係ないな。
待てよ。そうか、フィルターか。
体全体をフィルターに掛けて毒を集めればいいんだ。
だが、体の中を移動させるのは負担が大きい。
血管を移動させるのが一番か。
そんな、魔法が組めるのか。
「エリナ、体の中の毒だけを水魔法で移動できるか」
「無理だと思う。場所が分かんないから」
「そうだよな。血管の位置も分からないよな。駄目かぁ」
「どうしたの。誰か毒にやられたの」
「ベンケイが毒を食らった」
「えっ、ベンケイちゃんが」
「くそう、あと一歩なんだよな」
俺は関係ない文献を異世界で漁ること一年。
ついに答えを見つけた。
それは、鉱物探査の魔道具だ。
サンプルの物質を魔法陣に置くと、その物質がある位置を伝えてくる。
場所が分かれば後は容易い。
転移で取り出せば良いんだ。
よし、方策は立った。
探査転移の魔力回路が完成。
テストしてみると水に溶かした砂糖が分離出来た。
待ってろよ、ベンケイ。
今、行くから。
地球に戻るとベンケイは虫の息だった。
俺は紙と机を出すと、魔力回路を描き始めた。
ベンケイもう少し頑張ってくれ。
よし書き上げた。
これに闇冒険者が持っていた瓶の液体を垂らして。
上手く作動してくれよ。
排出される魔力回路の紙に粉がうっすらと積もっていく。
成功したみたいだ。
ベンケイが気を失っていて、魔力壁が無効になっていたのも良かった。
転移は魔力壁で跳ね返されるからな。
ベンケイが目を開けた。
「よしよし、偉いぞ」
おもいっきり可愛がってやった。
闇冒険者はロープでしばり痒くなる例の糊を掛けて、詰め所まで引きずって突き出した。
もぞもぞ動いて石の床に皮膚をこすりつけるものだから顔が血まみれに。
「お前、暴行したのか」
「毒を掛けられたから、糊を掛けてやった。正当防衛だよな」
「糊、そんな訳あるか」
「後で提出しても良いよ。本当に糊だから」
「くそう、お前を逮捕できると思ったのに」
「お生憎様」
今回、作り出した魔力回路は病気の治療に役に立つんじゃないだろうか。
体内の有害物質に苦しんでいる人は沢山いる。
俺は製薬会社に連絡をとると、
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