第77話 おっさん、偽物対策する

 魔力回路の偽物が出回っているらしい。

 困った。

 有効な手段がない。

 特許法違反で訴えようにも、相手の会社の名前すら分からない。

 現金取引でバッタ屋に売りつけたらしい。

 明らかに騙される方は偽物だと分かっていて手をだしている。

 だって俺達が店で売る価格の十分の一なのだから。

 そして、バッタ屋は売るときは偽物だと気がつかなかったと言い訳している。

 かなり巧妙だな。


「社長どうします」

「効果のない類似品にご注意くださいと言っても、だめなんだろうな」

「ええ、収まらないと思います」

「よし、分かった。マークを作ろう」

「マークが真似されるのでは」

「魔力回路でマークを作り、包装の上からでも魔力を注ぐと光るようにする」

「買う時にお確かめ下さいと注意喚起するんですね」

「その通りだ」


 最初の試作品が出来た。


「社長、製品にマークを付けたら、使う時に光って邪魔です」

「パッケージに付けたらどうかな」

「それだと中身を抜かれて、再利用されませんか」

「うーん、上手くいかないな」


 俺は気分転換にDVDを買いに出かけた。

 何の気なしにレジを打つのを見る。

 万引き防止用のタグに解除の何かを当てる。

 何だろな。電波かな。

 おお、そうだ。

 売る時にパッケージに魔力を当てて、光る機能を無効化すれば良い。

 でも、それだと店員に負担がかかるな。

 そうなるとパッケージを破ったら光る機能を無効化かな。

 魔法回路から網の目みたいに線を伸ばせば実現可能だな。


 よし、それで行こう。


「社長できました」

「よし、光らせてくれ」


 魔力を注ぐと光るパッケージ。


「次はカッターで切り込みを入れるんだ」


 カッターナイフで三センチぐらいの切り込みが入る。

 この穴では製品は取り出せない。


「成功です。パッケージが光りません」

「よし、コマーシャルを打つぞ。光るパッケージのアエモ製品って」


 商品が並ぶ所に視察に訪れた。

 小学生ぐらいの子供が商品を手に取ってパッケージを光らせる。

 子供達の間で光らせるのが流行っているらしい。


 これだけ認知されれば、偽物に騙される人も少ないだろう。

 俺は前に記事を書いた週刊誌の記者を呼び出した。


「類似品だけど、例の不買運動の団体が関与しているらしい」


 これは先日分かった事だ。


「また特ダネをもらっちゃって。すみませんね」

「バックには政治家なんかもいるらしい。気をつけろよ」

「そこは、分かってますよ。そういえば、山田ダンジョンカンパニーの記事を書いてた奴が行方不明になったって知ってます」

「知らんな」

「噂ではダンジョンに入っていって出てこなかったとか」

「ダンジョンレコーダーで死ぬまでの記録がサーバーに送られているだろう」

「ええ、取り寄せようとしたんですが。原則非公開らしいです。警察が調べたら何も出なかったって。記者はトラップに引っかかったらしいですね」

「怪しくないな」

「ところがですよ。議員がやっている冒険者を楽しむ会ってのがありまして。行方不明になった時にその会の催し物が山田ダンジョンで行われています」

「なるほどね。ダンジョンは密室だから、何か起こっても分からないか」

「ええ、議員秘書はポーターの許可証で入っています。ダンジョンレコーダーを装備してません」

「なるほどね」


 なんとなく図式は見えた。

 秘書を通して密談か何かがあったのだな。


 俺は政治に首を突っ込む事は考えていない。

 いないが、親父はそういう人間とも付き合いがあるみたいだ。

 そっちの方面から横やりが入る事も考えないとな。


「ダンジョンコア接触法なんてのも出来るらしいですね」

「なにっ、詳しく話せ」

「ダンジョンコアはモンスターを発生させる機関だから、不調をきたしては困るので、触ったら刑罰に処すとなるらしいですよ」


 うはっ、ダンジョンコアから魔力を吸い取れなくなる。

 これは困ったな。


「何時頃に施行予定だ」

「半年後というのがもっぱらの噂です」


 良かった。

 まだ大丈夫だ。


「情報ありがとよ」


 さて、ボスをあと何周できるかだ。

 その前にベンケイを強化してやりたいな。

 やるならスキルオーブだろうな。


 例の魔力寄付の横流しで魔力はなんとかなる。

 スキル発動は犬には難しいかも。

 覚えさせるならパッシブスキルだな。

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