第62話 おっさん、銃撃される
「初めまして。研究員の
「山田です」
製薬会社の応接室で俺は研究員と商談を始めた。
「あの、青汁すばらしいですね。ぜひ独占契約を結びたいです」
「あれは加工が少し特殊なもので、大量生産は出来ないのですよ」
「そうですか。残念です。何でも今日は新種の植物をお持ちだそうで」
「ええ、これです」
俺は腹痛の薬草を取り出した。
これは魔力通販で購入したもので、腹痛の時にかむと腹痛が少し収まるという物。
薬草というのはおこがましい異世界の雑草だ。
「これは凄い。私の専門は植物学なのですが、これは見たことがないですね」
「この植物を百万円でお譲りします。命名権も含めてです。まだ新種の植物は沢山あるので今回はサービス価格です」
「ですが、この手の取引は詐欺もある。そこで二の足を踏むのですよ」
「分かります。新種の植物に薬効がないと分かったら、別の植物を用意しましょう。それにその時は百万円も返して違約金も払います」
「ほう、分かりました。契約書を作り、お支払いしましょう」
やった。
一攫千金が叶った。
今回の成功は手順をかなり踏んだからな。
サンプルに青汁を送ればまず試してみるだろう。
効果があると知れば食いついてくると思った。
詐欺でよく使う手法だ。
見せ金と言う奴だ。
まあ、詐欺ではないが。
俺はお金を受け取り、その足で魔力銀行に行った。
魔力を買って異世界に戻るぞ。
そして、結婚するんだ。
魔力銀行の外見は銀行のようだった。
カウンターが備え付けられた窓口がいくつもあり、人が頻繁に訪れていた。
俺は番号札を取って椅子に座る。
ほどなくして俺の番号が呼ばれた。
「本日はどのような取引でしょうか」
「百万円で魔力を買いたい」
「現在の相場は1魔力9円57銭です」
「それで頼む」
俺は札束をプラスチックの皿の上置いた。
現金を機械で数える音がする。
数え終わったようだ。
「ではこの札の引き渡し室に入ってお待ちください」
「ちょっと聞きたいのだが、魔力はどういうふうに計っている」
俺はちょっと気になったので聞いた。
「魔石の重さと魔石の最大魔力量は比例します」
なるほどね。重さで計っているという訳だな。
「サンキュ。参考になった」
俺は言われた通りプラスチックの札と同じ番号の部屋に入った。
ドアがオートロックされる。
待つこと30分。
奥の小さい窓が開きそこからアタッシュケースが運ばれて来た。
アタッシュケースを机の上に置くと札が光り鍵が解除された。
ケースを開けると大きさがまちまちの魔石がそこにはあった。
この魔石全てで異世界に渡るのに足りるかな。
ガンガンとドアを壊す音がする。
「お前達はなんだ」
「外れだ」
よかった隣の部屋だ。
いや、よくない。
次は俺だ。
ガンガンとドアを壊す音がする。
俺が後ろを振り返るとハンマーが扉から突き出ていた。
やばい。
俺は上に着ている服を脱いでアタッシュケースに覆いかぶさった。
こうしないと、魔石全てを使う事ができないからだ。
「
三つのポーションと身代わり人形がぽとり机の上に落ちる。
ポーションはスピード・ブースト・ポーションとディフェンス・ブースト・ポーションとマッスル・ポーションだ。
何倍もの速さで動き、皮が鉄みたいになる。
そして、怪力だ。
ダンジョン産の物となると効果は計り知れない。
よし、一か八かだ。
南無三。
ポーションを飲み終わったところで扉が破られ、一斉に銃口が俺の方向を向く。
うひょう。
覆面をして銃を構えた男達が半裸の俺を見て一瞬あっけにとられた。
俺はポーションの力を信じて殴り掛かる。
面白いように男達が宙を舞う。
おっと、銃で撃たれた。
ズボンのポケットの身代わり人形がボロボロになる。
ドロップ品はいい仕事するな。
「寝とけよ」
「ひぃ、化け物」
俺は男を小突いた。
さて異世界におさらばするか。
俺はアタッシュケースに覆いかぶさった。
「
視界が切り替わり俺は地球に旅立った場所に全裸で立っていた。
俺の姿に驚愕する三人がいる。
服よりもまずは。
「ステータス」
――――――――――――――
名前:山田 無二 LV519
魔力:40673/51900
スキル:
収納箱
魔力通販
魔力壁
混合
変形
罠探知
方向察知
氷魔法
次元移動
――――――――――――――
ステータスは地球に戻った時のままだ。
三人が目の前に立っているって事は時間が進んでないって事だな。
アイテムボックスから金貨を一枚出す。
アイテムボックスの中身も元のままだ。
身一つで帰してくれと言ったから消滅してないんだな。
消してくれとは頼んでいないからな。
「お帰りなさい」
アルマが喜色を浮かべ。
「ばか、早く服を着なさいよ。足元にあるわよ」
エリナが顔を赤らめて言い。
「約束履行」
モニカはジト目だった。
「よし、約束を果たそう結婚だ。まずは奴隷から開放だな」
俺は足元の服を素早く身につけ言った。
そして、それから俺達は盛大に結婚式を挙げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます