第41話 おっさん、深夜の襲撃を撃退する

 暗闇から忍び寄りレベルに任せてトイレのすっぽんで殴っただけなんですけどもね。

 赤外線ゴーグルは夜戦には便利だ。


 さて、守備隊に引き渡す前にどこの手の者か聞きださないと。

 結束バンドで侵入者達は縛っておいた。


 赤外線ゴーグルからヘッドライトに装備を変え、侵入者らを観察する。

 身なりを見る限りチンピラに見えた。




「おい、起きろ」


 俺は軽く小突いた。


「後、五分……はっ、ここは。なんだ、早く俺達を解放しやがれ」

「どこの手の者か喋らすのに指の骨を折るのと爪を剥がすのとどちらが良い」


 俺はなるべく恐そうな顔を作って言った。


「な、なんでも喋ります。拷問は許して下さい」

「さっさと喋れ」


「アレグフォードの坊ちゃんに頼まれたんです」

「アレグフォードねえ、どっかで聞いた事があるような」


「魔法使いで有名な貴族です」


 魔法か。

 あっ、スキルオーブを奪おうとした奴が確か名乗っていたな。


「スキルオーブならもう無いぞ」

「えっ、スキルオーブ? 俺達は女をさらってこいとしか言われてません」


「女、誰のことだ?」

「双子の姉妹です」


 何故だ。どうしてそういう話になる。


「エリナとモニカがその貴族とどういう関係があるんだ?」

「継承権がどうとか。言ってました」


 おう、二人の親が関係する話な訳か。

 さて、どうしよう。殲滅する方向でいく事は決定なんだが、お尋ね者になるのはちょっと遠慮したいな。


 男達からアレグフォード家の内情を聞けるだけ聞き、解放した。

 窓を開けると警報音を出す装置を魔力通販で買って設置する。

 こちらは、ストーカー被害にあって困っていた会社の女性に皆で相談に乗ってやった事があった。

 その時に色々ネットで調べたんだが、世の中何が幸いするか分からない。


 ぐっすり眠り夜が明ける。

 朝食を終えたところでこれからの事について話し合う。


「昨晩、賊が侵入した訳なんだけれど、その理由がエリナとモニカだ。貴族の継承権があるらしい」

「私はお父さんが良い所の出だとしか聞いてないわ」


「で、継承権はどうする?」


「私は貴族にいきなりなれと言われても無理だから、いらない」

「放棄」


「それなら、俺が後腐れなく処理してやる。クレアさんにも警告してくれ。なんなら、この家に連れてきても良い」

「私もちょっと言った事があるのだけれど、スラムを離れたがらないのよ。昔、お母さん冒険者だったらしいから、チンピラぐらいなら大丈夫だと思うわ」


「そうか。それとアルマ。ダンジョンをクリアするたびにボーナス払っているから、相当溜まっただろう。商売も凄い売り上げだし、もう奴隷を辞めても良いんじゃないか」


「もう少しこのままで居させてや。関係が変わると幸せが逃げてまいそうで」

「分かった好きにしていい」


「自転車教室を他の街でも開きたいんやわ。どない」

「商売はアルマの好きにしたらいい」

「なら、ええようにさせてもらうわ」


「キックボードを流行らせたらいいのに」


 キックボード用サーキットは石で舗装された地面にコースを書いて、三角形の赤いコーンを所々に置いてあった。

 俺も視察に行ったが子供が遊ぶには充分だと思えた。

 利用料は一日で銅貨三枚。

 従業員の人件費を入れたら赤字だが、飲み物の販売で利益を出している。

 子供だけでなく親も来ることがあるから結構儲かった。


「エリナ、あれが好きなのか」

「ええ、子供に混じって遊んでいるわ」

「それは大人気ないな」

「もちろん手加減しているから」

「どうだか」

「レベルも違うから、当たり前でしょ」


「悪餓鬼、成敗」

「エリナが悪餓鬼を成敗したって」

「だってマナーがなってないのよ。抜かれそうになったら、体当たりしてるのよ」

「それは許せんな」

「でしょ。大人しい子なんか、来なくなった子もいるのよ」


「せやったら、ルールを書いた立て札を立てましょ」

「そうして貰えると良いと思う」

「それだけやと甘いわね。違反者は罰金を取って出入り禁止にしたほうがええわね」


「子供のすることだから、出入り禁止は十日とかにしておいた方が良いぞ」

「ご主人様がそういうなら」


「俺はこれから、大人の悪餓鬼にお灸を据えないといけない。こっちは永久に出入り禁止だ」


 俺はアレグフォードの坊ちゃんことシムドアの敵対派閥の人間に会うため、貴族街に足を運ぶ事に。

 その人間が信用出来なかったらどうするかだが、その場合は別の派閥に話を持っていくだけだ。

 大小五つぐらい派閥があるらしいから、そのうち当たりを引くだろう。

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