おにいさんのおいたち おにいさん視点
ナルおにいさんは、適当でいいかげんな性格なのに、うたのおにいさんの仕事に対してはかなり厳しい一面がある。自分に意外と厳しいのだ。
なぜこんなに自他共に厳しいのか? なぜそこまでして芸能界で生き残りたいのか? それは彼の生い立ち、生育環境にあるようだ。
♢♢
俺は有名音楽一家の息子だ。音楽大学の大学教授をしている両親と兄弟もプロの音楽家だ。血筋もいいが、彼の学歴もあの有名大学大学院の声楽専攻を卒業している。プロの音楽家として仕事をせずに、子供向けのおにいさんとして活躍することは彼の両親は反対していた。両親は 堅実な仕事をしてほしかったらしい。若い時にしか仕事がない、うたのおにいさんは将来的に心配だ。大学で教鞭をとったほうが安定している。芸能界なんて辞めてほしい。
親の敷いたレールの上を走る電車男にはなりたくない。もっと自由に生きるために、こんな不自由なうたのおにいさんを選んだ。一見矛盾しているように思えるが、俺にとってはこの仕事は自由なのだ。だからこの仕事をできる限り長くやって、世の中にみとめられて、芸能界に残れるように、俺は最大限の努力をする。
高視聴率を目指しているのに、あのキッズソングオタク娘が入ってきたせいで、番組人気が心配だ。
しかし……あのいじめがいのある変な娘が少し俺の息抜きになっているのは確かだ。スキのない美人よりも、純粋でどこか抜けているほうが毒を持っている男には心地いい。イジリ甲斐があるってもんだ。俺は毒を持っていると自覚している。俺の息抜きは毒舌だ。その言葉で相手を攻めることは快感となる。
とりあえず、全力で仕事をする。証拠の残るスキャンダルは起こさない。俺は人生を賭けてうたのおにいさんを全うするのだ。
昨日、夢の中にあの娘が出てきた。俺のプライベートに潜入するとはいい度胸だ。そもそも、仕事の仲間が夢に出てきたのは初めてだ。
あのオタク娘に連絡先を渡したら、反応が面白いだろうな。毎晩、あいつをいじり倒したいな、いじり甲斐のあるやつだからな。俺の見えない鎖であいつを束縛してみたい。よくわからない欲望が俺の中に芽生えていた。
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