第50話 もう少し間引こう

「そりゃ俺にはありがたい話だが……」


 レキはまだ迷っているようだったので、ケントはインフィニットストレージからコカトリスの胴部を取り出す。


「そ、それは、ま、まさか?」


 レキは限界まで目を見開き、口をパクパクさせる。

 旅のコックだけあって、胴部だけを見てモンスターの名前を推測できたらしい。


「コカトリスの肉だよ。お前と出会う前に倒してきた」


 とケントは事務的に話す。


「お、おう……すげえことをさらっと言うよな。たしか戦力40超えのガチモンスターだろ?」


 答えるレキの声は若干震えていたが、そこで彼の視線がシロに移る。


「まあホワイトバードをパートナーにしてるんだから、倒すことは可能なのか?」


 そしてあきらめたような顔をしてため息をつく。


「シロのほうが強かったからな。ちょっとだけだが」


 とケントは言った。

 彼からすればホワイトバードとコカトリスは、違いがわかりづらい差しかない。


 ヒューマンの言語を話せて変身もできるあたり、知能の差はかなりあるようだが。


「お前にとっては誤差なんだな……どれくらい強いんだ?」


 レキは呆れから好奇心に変わったようで、素朴な問いをぶつける。

 ケントにとっては最も重要で気がかりな質問だと、彼は気づいていないだろう。


「そうだな。どれくらいなんだろうな」


 とケントは答える。

 真剣に悩んでいることで、けっしてはぐらかしたわけではない。


 彼の表情からレキは感づいたらしく、興味深そうな視線を向ける。


「もしかしてそれを知るために旅をしているとか?」


 とレキは問いかけた。


「それも一つの目的だな」


 ケントは嘘をついたことにならないと考え、肯定する。


「そうか。まあホワイトバードのパートナーになれるくらいなら、六色武耀に挑戦してもいいと思うが」


「六色武耀?」


 レキの言葉の中から初めて知った単語をケントは拾う。


「ああ。ここユーニス大陸で最強と言われている、六人の戦士たちのことさ。全員が金剛級だと言われている」


「金剛級なら俺と同格だな」


 とケントは答えた。


(レベル50超えがいるのか怪しいんだが……シロのことで騒がれまくったことを思えば、期待はできないんだが)

 

 なんていう思いが彼にそう言わせたのだが、


「マスター、まだ昇格試験は終わってないですよ? たしかに余裕でコカトリスを倒しちゃいましたけど」


 シロが首をかしげながらツッコミを入れてくる。


「おっと、そうだったな」


 ケントは失敗したと笑う。


「ああ、だからコカトリスを持っているのか」


 レキは腑に落ちた顔でぽんと手を叩く。


「コカトリスをわざわざ退治に来るハンターなんてめったにいなくて、樹海付近の人たちは困ってるって話を聞いたんで、珍しいな」


 謎が解けたと話す彼の言葉に、ケントはおやっと思う。


「コカトリスがいるせいで樹海付近の村の人が困っているなら、もう少し間引こうか? 物のついでだしな」


「いいですね。コカトリスの肉、楽しみですし!」


 彼の提案を聞いたシロは手を叩き、はしゃぐように賛成する。


「そんな気軽に間引くとか言われても……」


 レキは信じらないという顔でケントたちを見た。

 心なしか頭痛とたちくらみに襲われたようである。


「モンスターのバランス的にある程度は残したほうがいいかなって思っていたんだが、その辺はどうなんだ?」


 とケントはレキにたずねた。


「コカトリスは人間や動物を襲うくせに、他のモンスターは襲わないかなり迷惑な奴らなんだ。間引いてもらえるならそのほうがありがたいはずだよ」


 レキは不快そうに答える。


(ああ。たしかにそういう設定だったな。たしかいろんな意味で邪魔なモンスターって言われていた)


 ケントはなつかしく思いつつ、激震撃神と設定は同じなんだなと受け止めた。

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