第18話葬儀

「お前、この人数相手にたった二人で勝てると思ってるのか?」




豊影の言葉に片倉は冷静に




「しゃべってないでかかってこいよ」




「行け、あの糞生意気を殺せ」




豊影の指示で10人の男が一斉に片倉に襲いかかった。




片倉は一振で10人を斬り倒して




「カスは束になってもカスだ」




片倉は長経に笑顔で




「大殿、豊影軍は弱すぎます。二人で壊滅させられますよ」




「わかった、じゃあ豊影軍を潰すか」




二人は次々と向かってくる豊影軍の者50人を斬り倒していった。




あまりの二人の強さを目の当たりにした豊影は慌てて逃げ出した。




「大殿、豊影を追いかけますか」




「いや、追いかけなくていい」




長経は嬉しそうな顔で




「水道、強くなったなぁお前のおかげで助かった。ありがとう」




片倉は長経の言葉を聞いてめちゃくちゃ嬉しくて物凄い笑顔で




「物凄い嬉しいお言葉をありがとうございます」




長経が笑顔で




「これで天羽家も安泰だ」




と言ったその時片倉の視界に先ほど逃げたはずの豊影が長経に火縄銃を向けている姿が目に入り




「大殿、危ない伏せて!!」




ズドーン




豊影は火縄銃で長経の背中を撃ち抜いた。




「殿、大丈夫ですか殿!!」




片倉は撃たれて苦しい表情を浮かべている長経を担いで長経に必死に声をかけながら急いで大多喜城に向かっていたが




長経は必死に声を振り絞るように




「水道、経丸を頼む。経丸を頼んだ」




片倉は泣きそうになるのを堪えながら




「大殿、それはもちろんわかってますよ」




「経丸を頼んだ」




この言葉の後片倉は長経がら魂が抜けたのを感じて




「大殿、大殿ー!!」




天羽長経はどんどん冷たくなっていったのであった。








片倉は大多喜城の前でふっと我に返り




こんなに優しく俺のことを強くしてくれた


長経様をなぜ俺は助けられなかったんだ‼俺はどの面下げて殿に会えばいいんだ。




「くそがー‼」




片倉は思いっきり地面を蹴り上げた。




「おい、何してんだ?」




いきなり聞こえる声に片倉はビックリし後ろを振り返った。




「士郎、稲荷お前らどうしてここに?」




士郎は威張るような態度で




「長経様と片倉さんの帰りを待っていたんだよ」




片倉は下を向き




「長経様は帰って来ないよ」




「えっ?何で?」




「長経様は豊影に撃たれてしまったから」




士郎と稲荷はあまりに衝撃的な言葉過ぎて何も言い返せなかった。




「俺は何もできなかった、俺をここまで育ててくれた恩人を助けるどころか見殺しにしてしまった俺は何のために生きているんだ‼」




興奮状態の片倉に士郎は




「落ち着けって」




「もうだめだ、俺は生きている価値もない」




士郎はいきなり思いっきり振りかぶって片倉の頬をバチーンと叩いた。




いきなり叩かれた片倉は士郎の胸倉を掴み声を荒げて




「何すんだお前は‼」




士郎はホッとした表情で




「なんだ、怒る元気あんじゃん」




「なんだと?」




「片倉さんには悪いけどあなたは落ち込んでいる場合じゃない、どんな時でも平常心でいてくれないと天羽家の皆が動揺するんだよ‼」




片倉は振り絞るような声で




「士郎君」




士郎は片倉の肩をポンと叩いて




「確かに片倉さんは相当辛いと思う、その気持ちそれがしにはわからないけど、でも片倉さんが落ち込んでいると天羽家は前に進めないんだ。殿だっていつも不安と戦いながら生きているけど片倉さんが平常心でいてくれるから安心できるんだ、だから無理にでも元気出してくれよ片倉さん‼」




片倉は士郎の頭を乱暴になぜて




「士郎君たまにはいい事言うな」




「たまにじゃねぇ、いつもだ」




片倉と稲荷は声を揃えて




「それはない、たまにだ」




士郎は強い口調でツッコむように




「二人揃って同じこと言うんじゃねぇ!」




少し雰囲気が和み三人は大多喜城に入って行った。




片倉は経丸の前に行くと覚悟を決めて真剣な顏で




「殿、申し訳ございません」




いきなり土下座する片倉に経丸はキョトンとしながら




「何がですか?」




 片倉はうつむきながら




「私は長経様を見殺しにしてしまいました」




 経丸は片倉の唐突な言葉が理解できず




「えっ?えっ!!片倉さんは何を言っておられるのですか?」




「長経様は豊影に撃たれて戦死しました」




経丸は一旦大きく深呼吸をして冷静に




「なぜですか、豊影は味方だったんじゃないんですか?」




片倉は体の震えを必死に止めようとする経丸を見て罪悪感を感じながらも事の顛末を話し始めた。






話を聞いた経丸は片倉をぎゅっと抱き締めて




「片倉さん、あなたが無事で本当によかった」




片倉は経丸の温かさを感じて静かに涙を流しながら呟くように




「お母さん」




片倉の言葉に経丸は少し驚いて




「えっ?片倉さん今なんて?」




少し慌てる片倉に対して士郎は馬鹿にするように笑いながら




「片倉さん今、経丸の事お母さんって言っただろ」




片倉は恥ずかしさで少し笑ってしまいながら慌てて




「違う、違う」




凛は少し笑いながら




「片倉さんすみませんまた兄貴が余計なことを言って」




片倉は恥ずかしさで少し笑ってしまいながら




「凛ちゃんも笑ってるやん」




ひのは笑顔で




「片倉さんは甘えん坊さんだったんですね」




片倉は顔を真っ赤にし少し笑ってしまいながら




「違うよ、違うんだよ俺は甘えん坊じゃないんだよ」




経丸は少し照れながら




「片倉さん、私お母さんに見えたのですか?」




片倉も開き直って少し笑いながら




「殿がお母さんに見えちゃったんですよ。お母さん」




片倉は思いっきりぎゅっと経丸を抱き締めた。




経丸はお母さんになりきって片倉の頭を優しくなぜながら




「よし、よし可愛いですね水道君」




片倉を羨ましそうに見ている士郎を見て




「あっ、兄貴が羨ましそうに片倉さんを見てるよ」




片倉は士郎に茶化すような笑顔で




「士郎君、変わってあげましょうか?」




「やかましいわ」




皆笑ったのであった。








経丸は自分の部屋に行き長経からもらった刀を手に取りジッと眺めていると両頬に自然と涙が流れ出した。




経丸は刀を両手に持ち包み込むように体を丸めながら




「父上、父上」




経丸が一人で泣いているとノックもせずに士郎が入ってきた。




士郎が入って来たので経丸はとっさに目を擦り涙を拭きとった。




「士郎、何?」




「いや、殿を一人にしておくのは心配なので」




「私は大丈夫だよ、ほらこの通り」




経丸は士郎の前で気丈に振舞った。




「殿、強がらなくていいよ、辛い時は頼れよ。泣きたいときは泣いてもいいんだぞ」




 経丸は震えた声で




「大丈夫、平気だから」




士郎は優しい表情で




「殿、無理すんなよそれがしでよければ胸かすからさ」




「やめてよもう、そんなこと言うの」




士郎の言葉に経丸の目から一気に涙が溢れ出した。




泣き出した経丸を見て士郎は慌てて




「ごめん、怒らせてしまって」




「違う、違う、違う」




経丸は泣きながら士郎の胸を叩き士郎の胸に顔を埋めた。




士郎は泣いている経丸の背中を優しくさすった。




経丸は我慢せず大泣きした数日間腫れが引かないくらい大泣きしたのであった。




 そして数日後




経丸は皆の前に現れて




「私が前を向かなきゃダメですよね、とりあえず父上の葬儀を行いますか」




「はい」




 長経の葬儀は士郎の実家、南妙寺でおこなうことになった。




昼下がりの南妙寺に長経を慕っていた、たくさんの村人が長経の死を惜しみに来た。




士郎は寺がある場所よりも山を登った展望台に経丸達を連れて行き




「殿、ここからの景色を見てください」




その場は景色を遮るものがなく山の斜面一面に美しく咲いているあじさいを一望できた。




「殿、このあじさい達はこんな山奥の中でも力強くそして綺麗に咲いているんですよ」




「私もどんな状況でも力強くこのあじさいのように生きないとな」




士郎は立ち上がりこの綺麗に咲き誇るあじさいに向かって




「外岡士郎は一生、天羽経丸を守り抜きまーす‼」




経丸は驚いた表情で




「士郎」




片倉は優しい表情で




「殿、私も殿を一生支えますよ」




「僕も支えられるように頑張ります」




「私がいるから天羽家は安泰ですよ」




経丸は笑いながら




「凛ちゃん今の言葉士郎にそっくり」




凛は首をかしげながら




「それはちょっと嫌ですね」




士郎は大声で怒鳴るように




「何で嫌なんだよ!」




とツッコミ皆が笑った。




凛は真顔で




「えっと、私は正式に仲間にしてもらっていいんでしょうか」




「まだそんなこと言ってんの⁉」と士郎がツッコミ皆が笑った。




士郎はツッコまれてキョトンとしているひのに




「ここは殿にたいしての声掛けだったのに」




「あっそうですね」




士郎は呆れながら




「まったく」




 経丸は一人一人の顔を見て




私は皆のためにもこの国を守って行かなきゃいけないな。




士郎は大きく息を吸い込んで




「じゃあ皆でせぇーの」




「気持ちー‼気持ち・・・」




「おい、皆気持ちー‼気持ちー‼って続けよ」




片倉が笑いながら




「いやわからないよ、そんな変な掛け声なんて誰も」




「それがしの代名詞と言えば気持ちー‼気持ちー‼だから皆覚えてね、じゃあもう一度やるよ」




片倉は士郎が上を向いている間に皆に向かってシーのポーズを取った。




士郎は大声で




「気持ちー‼気持ちー‼って皆やれよ‼」




皆は笑った。




「殿、あの雲を見てください」




経丸は片倉に言われ上を見上げる、その雲はなんか長経が笑っているように見えた。




経丸は天に向かって心の中で




父上、私この仲間達と頑張っていくので見守ってください




たくましくなっていく経丸は仲間達と共に天羽家を守っていくことはできるのだろうか?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る