第18話 ミュゼルさんの婚約騒動
「実はさ、ボク、結婚を申し込まれちゃったんだ!」
「えぇぇぇぇぇー!」
ある日の、のんびりとした午後。ミュゼルさんが俺たちに伝えた爆弾発言で、ウトウトと昼寝をしようとしていた俺は目を覚ますことになった。
「故郷にいる知り合いから、結婚をしようって手紙をもらっちゃってさ……」
銀髪に青い瞳、小柄な身長140センチメートルの体にいつものツナギとタンクトップ姿で巨乳をぷるんと揺らしながら、麗しの庭園の誓い三人組の一人、整備士女子なミュゼルさんが照れたように報告をしている。ミュゼルさんは小柄でガーリーながら、ボクっ娘女子だった。
ミュゼルさんの夢は自分の工房を持つこと。そのための資金稼ぎと自分で素材を集める力を身につけるために、彼女は冒険者になった。そして故郷にいる知人から、結婚をして一緒に工房を経営しないかと話を持ちかけられたそうだ。
ミュゼルさんに結婚を申し込んだのはデュークという名前の男で、最近ミュゼルさんの故郷の街で急激に経営規模を伸ばしているデューク商会の会長をしているらしい。
彼はミュゼルさんが中等教育学校に通っていた時のクラスメイトで、すっごく女の子にやさしい男の子だったそうだ。だからミュゼルさんいわく、デュークは信頼できる男性ということらしい。
「アマンダとマーリンは男運が悪いみたいだけど、ボクなら大丈夫だよ!これでも、男を見る目はあるんだ!」
そんな超優良物件な男性からの突然の求婚を受け、ホクホク顔になったミュゼルさんがドヤ顔でそう宣言をしている。しかし残念なことに、俺の寝取りスキルは大丈夫だと言ってはいなかった。
(――寝取りスキル発動。寝取りチャンスです。寝取りますか?)
(――またかよ!)
俺は頭の中に響き渡る寝取りスキルのアラームに焦りながらも、とりあえずはそのまま様子を見てみることにする。いきなりミュゼルさんにこんなことを伝えても、彼女に反発を買うだけだからだ。
「残念だけど、ボクはこの街を出て故郷に帰ろうと思うんだ。みんな、今までいろいろとありがとう!」
そう言ってミュゼルさんは涙目になりながら、みんなとの別れを惜しんでいる。今まで冒険者として一緒に過ごしてきた仲間に対して、彼女は色々と思うことがあるのだろう。
アマンダさんとマーリンさんも、冒険者仲間の幸せな報告を聞いて嬉し涙を浮かべながら、おめでとうとミュゼルさんに伝えていた。
しかし寝取りスキルの直感が気になった俺は、試しに遠視スキルというものを作り、ミュゼルさんの故郷にいるデュークという男性が今何をしているかを覗いてみることにする。
すると俺の頭の中には、茶髪に軽薄な顔をした男性が女性とベッドをともにしている映像が浮かんできた。
そして遠視スキルは対象が現在、どんな会話をしているかも知ることが出来る便利なスキルである。ついでに俺はデュークがドヤ顔で女性に向かって話している内容を、こっそりと聞いてみることにした。
「ミュゼルを呼び戻して、騙して妾みたいな立場にしようぜ!あいつにタダで武器を作らせれば、人件費がかからないからな。武器屋経営でボロ儲け出来るぞ!あいつの隙を見て奴隷にしちまえばこっちのもんだ!――この方法で、今まで俺は商会を大きくしてきた。今回もうまくいくさ!」
デュークらしき男性がイチャイチャとベッドで女性と体をまさぐり合いながら、メチャクチャなことを言っている。どうやらミュゼルさんも、ダメ男に騙されているらしい。
さらに俺が遠視スキルで彼らの会話を盗み聞きしたところ、どうやらデュークという男性は求婚した女性を頃合いを見てから騙して奴隷化し、自分の家に監禁して無理やりポーションや衣服等を作らせることで、あくどい儲けかたをしている人間のようだ。
そして今回、武器防具産業にも参入するための生贄として、ミュゼルさんを選んだと彼は宣言をしていた。デュークはミュゼルさんを騙して故郷に呼び戻し、彼女を奴隷にすることで武器を無償で作らせるという計画を立てている。
しばらくはいい顔をしておいて、自分が信頼されてから相手に眠り薬を飲ませ、後は奴隷としてこき使い続ける。彼はその方法で、今の地位と立場を築いていた。この世界では、こういう犯罪がポピュラーなのかな?
無給で女性を働かせていても家族だからと言い訳することで、デュークはこの世界にある警察機関に対してごまかしをし続けている。これは最低だな。俺が元いた世界で言うモラハラ全開男みたいなものだろう。この世界には奴隷化の魔法がある分、元いた世界よりもモラハラ男が好き勝手にできてしまうと。
無許可の奴隷化は一応、この世界では犯罪行為とされている。しかし、家庭内で奴隷化をされてしまうと周りの人間に対してごまかしが効いてしまうため、こういった悪質な行為が横行をしてしまっているようだ。
これはなんとかミュゼルさんを説得して、彼女が故郷に戻るのを思いとどまらせなければならないな。俺はどうすればミュゼルさんを説得できるか、考えることにする。
……やはり、あれしかないか。
「アマンダ。マーリン。今までありがとう!」
その日、麗しの庭園の誓い邸では、ミュゼルさんとのお別れ会が開催されることになった。アマンダさんとマーリンさんはミュゼルさんと思い出話を語り合いながら、楽しそうにお酒を飲んでいる。三人は、湿っぽい別れは嫌いらしい。
そして夜になると、ドワーフ族でウワバミなミュゼルさんに付き合って大量にお酒を飲んだアマンダさんとマーリンさんは酔い潰れてしまい、リビングのソファーに寝てしまっていた。
つまり俺とミュゼルさんが、家の中で二人っきりという状況だ。
「ふたりとも寝ちゃったね~。起こすのも悪いしさ、ボクの部屋で少し飲み直さないかい?もう少し、お酒を飲んでいたい気分なんだ」
都合のいいことに、まだ潰れずに起きている俺を誘ってミュゼルさんが私室で飲み直しをしようと提案してくる。どうやら彼女は今まで一緒に過ごしてきた仲間との別れを惜しんでおり、まだ眠りたくない気分のようだ。
「ボクにいたずらしようとしても、通用しないからね~!」
私室に二人っきりという状況に先駆け、ミュゼルさんが牽制をするようにして笑いながら、俺に向かって挑発的な態度を取ってくる。
「じゃあ、試してみましょうか?」
「えへへ~。別にいいけど、ボク、手加減はしないよ~」
酔って気が大きくなっているからか、ミュゼルさんが俺の誘いに乗って魔力リンク勝負を挑んできてくれた。これも、寝取りスキルの効果なのだろうか。
もちろん、こんな絶好のチャンスを逃すわけにはいかないだろう。
俺が魔力リンクをするためにミュゼルさんに軽くハグをすると、彼女の体からはさっきまで飲んでいた甘い果実酒の匂いがふんわりと香ってくる。どうやらミュゼルさんは、かなり酔っているらしい。
大量にお酒を飲みすぎたことで彼女の判断力が鈍り、ウブは駆け出し冒険者の俺を少しエッチにからかって遊んでやろうといういたずら心が、ミュゼルさんに出てしまったようだ。まさに、好都合である。
ミュゼルさんはまだ、アマンダさんとマーリンさんが俺との魔力リンク勝負に勝てないということを知らない。彼女はAランク冒険者である自分が、俺に対して圧倒的に有利だと思いこんでいる。だからミュゼルさんは、俺にこんないたずらを仕掛けてきたというわけだ。
俺はこのチャンスに乗じて、ミュゼルさんを罠の仕掛けられた故郷に戻さないために、寝取りスキルで彼女を堕とすこと決めたのであった。
――にゅううううううん♡
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます