第3話 俺だけ隔離された件



 アマネ・テンゴク

 種族:人間 (魔王) 隠蔽中


 HP 100

 MP 100

 力 5

 体力 5

 器用さ 5

 素早さ 5

 魔力 5

 精神 5


 所持スキル

 なし


(隠蔽中)

 異世界言語

 アイテムボックス

 異世界辞典

 寝取りスキル

 創造魔法



「何あいつ?やばすぎ!」



「巻き込まれと言っても、無能の方の巻き込まれでしたか……」



「ふっ。戦闘力5のゴミめ」



 ステータス鑑定によって公開された俺のステータスを見たみんなが、いたたまれない空気の中で思い思いの感想を口にしている。王様にいたっては、険悪な表情で舌打ちすらをしていた。彼の態度を見た俺はこの人物は要注意だと、心のメモに記録することにする。



(邪神さん。あなたは勇者召喚されたみんなをあざ笑ってこいと言っていましたけど、あざ笑われたのは俺の方でしたよ……)



 俺は心の中で邪神に向かって悲しみの報告をする。鑑定された俺のステータスは全て5であり、スキルに至っては念の為隠蔽をしてしまったため、異世界言語やアイテムボックスすらも表示されていなかった。完全に、俺はこの場で無能認定を受けてしまったわけだ。



「君たちが強いと言っても、まだまだ魔王には敵わない!ぜひさらに成長を重ねて、魔王を打ち倒す正義の我らに力を貸して欲しい!」



 俺の存在など無視して、王様が高校生たちに激を入れている。どうやら俺の存在は、彼にとってなかったことになったらしい。よかった。俺、魔王だけど目立たなくて。今なら俺のこと、ワンパンで倒せるよ。



「で、では、ステータス鑑定が終わったので、勇者の皆さまをお部屋までご案内します。お疲れでしょうから、今日はもうお休みください!」



 まるで俺のステータス鑑定が存在しなかったような空気の中で王様の挨拶が終わると、今度は進行役の人が周りに何やらを促し始める。すると俺たちはメイドさんに導かれて、各自に用意された部屋へと案内をされることになった。どうやら、今日のイベントはもう終わりのようだ。



 しかし各自が宿泊するための部屋に案内される中、無能認定を受けた俺だけが周りにバレないようにひっそりと隔離されるようにして、別の場所へと案内されることになる。そして俺が一人案内されたのは、粗末な作りのベッドがぽつんと一つだけ用意されただけの、質素な部屋だった。しかも、そこに俺は無理やり押し込められた形だ。



「まじか……何だよこれ……」



 さらには俺に食事と称して用意された食べ物は、やたらと硬い黒パンと薄くて水みたいなスープのみである。俺に食事を運んできてくれた兵士が、勇者様は今頃、晩餐会に参加して豪勢な食事にありついているぞ、と何故か自慢げに語ってきていた。兵士いわく、無能者はその食事会に参加する資格がないのだそうだ。俺に食事を運んできた君も、その食事会には参加できていないんだけどな。



 まあどうでもいいか。俺にとって最優先なのは、一人になって落ち着ける場所と時間の確保だ。邪神にもらったスキルの効果を確かめなくてはならないからな。むしろ、無能呼ばわりをされて勇者から隔離されてラッキーですらある。



 寝取りスキル

 快楽魔法、精神魔法、淫紋魔法、邪術が使える



 俺のステータス一覧に表示されている、寝取りスキルの説明にはそう書いてある。とりあえず、異性を喜ばせることが出来るらしい。俺は、このスキルの存在を無視することに決めた。



 今度の俺は創造魔法を使って、試しに作りたいものを念じてみることにする。創造魔法の使い方をもっと知りたいし、不味すぎる食事をアイテムボックスに押し込んだ今の俺は腹が減っている。一石二鳥の方法だ。



(何だか、向こうの世界で俺がよく通っていた、てんいちという店のラーメンが無性に食べたい気分だな。……お!スキルの使い方が頭に浮かんだ!)



 俺がてんいちのラーメンを作りたいと念じてみると、便利なことに、俺の頭の中に創造スキルの使い方が自然と浮かんでくる。そして、俺が頭の中に浮かんだ手順通りに体の感覚を変化させると、俺の右手にはラーメンの丼が現れたではないか。



「やべええええええ!」



 突然、俺の右手に現れたラーメンのどんぶりに、俺は狂喜乱舞することになる。創造魔法スキルの使い方が分かってしまった。このスキルは、何でも俺が作りたいと思っていたものを、簡単に作れるようだ。食べ物だけに限らず武器や道具、それにポーションやスキルまで本当に自由自在である。



「とりあえず、ラーメンに煮玉子を追加するか!」



 ――ぽちゃん



 俺は祝杯をあげるために、ラーメンのどんぶりに煮玉子を追加することにする。俺がイメージを思い浮かべると、オーソドックスなレギュラーラーメンであったてんいちの丼に煮玉子が1つ追加された。



 俺は嬉しいことがあったときは、いつもてんいちのラーメンに煮卵を追加しているのだ。今日のラーメンは豪華だぜ。



 さて、麺が伸びる前に食べてしまいますか。俺は室内に簡素なテーブルとイスを創造魔法のスキルを使って用意すると、そのまま食事を始めることにする。



「異世界で食べる、てんいちのラーメンうめええええええ!」



 そして、俺はあっという間にラーメンをペロリとたいらげてしまう。追加で作り出したペットボトルの有名炭酸飲料も、全部飲み干した。まさに創造魔法様様である。



(邪神様にいただいたスキルは最強でした!先程は、邪神さんなんて呼んでしまって、ごめんなさい!)



『ククク。まあよい。世界に混沌をもたらしてくれたまえ』



 お腹もいっぱいになり、満足をした俺は室内に小さな邪神像を作り出すと、それに向かって謝罪を行う。すると、邪神からのメッセージが俺の頭の中に響いてきた。どうやら邪神像を通じて、邪神にメッセージを送ることが出来るようだ。



 邪神に俺がもらった創造魔法のスキルは、何の代償もなしに好きなものを作ることが出来る。まさに、世界に混沌をもたらすスキルであった。



 ちなみに食べ終わったラーメンの器であるが、創造魔法のスキルで作った生活魔法によって簡単にきれいな状態に戻すことが出来た。まさに、創造魔法は最高のスキルである。寝取りスキルのことは忘れることにしよう。



「確かに、このスキルに比べたら、創造神のスキルはショボいのかもしれないな」



 ステータスに差はあるが、スキルの性能はやはり勇者たちが与えられたものよりも、俺がもらったスキルの方が便利だと思う。



 邪神いわく、勇者召喚をされた高校生のステータスの数値であるが、あれくらいのステータスなら簡単に到達できるらしい。むしろ現時点での勇者達のステータスは、この世界の強者の中では雑魚の部類に入るようだ。



 何やら、俺はとんでもない世界に来てしまったみたいだな。まあ、戦いは嫌いだし、そんなこと気にせずに、のんびり生きることにしよう。



「さて、これからどう行動をしようかな」



 そして、お腹がいっぱいになった俺は、これから自分がどう行動するかを、考え始めるのであった。



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