ホテル下53番街
みつお真
第1話 ホテル下53番街
ボクはしっていました。
ボクが死んじゃっているってコト。
みんなはしりません。
なんでだろう。
ボクはみんながわかりません。
ただ、ニコニコしてます。
うれしいのかな?
上には大きなホテルがあって、みんなはそこをホテルだって言ってるけど、あそこはボクたちを見張っているワルイ大人たちがいます。
大人たちのボスはしはいにんって呼ばれてるげど、ボクはしはいしゃだってわかっています。
しはいしゃは、ボク達を大人にしてくれると約束してくれました。
なりたい自分にさせてくれる約束を交わします。
そこに善悪の区別などは一切無く、まるで個々の宿命であるかの様な支配者の意識は悪魔そのものではないでしょうか。
私には判断がつきません。
人間の善悪についてなど、たった7年の生涯で判るはずがない。
この特区は入り口はあれど出口はなく、そんな世界で苦しむだけの毎日を送らねばならない。
これがなりたかった大人の姿なのか。
自分でも判らない。
ならばいっそ、私は私でなく、ボクのまんまでよかったっておもっています。
それは、ある夕方の、みんなでごはんを食べたあとのことでした。
たくさんのキレイな絵がかざってあるところには、びっくりするくらいの丸い大きなテーブルがあって、しはいしゃとボクと、みうちゃんとかいくんは、いつも座っているばしょにいました。
おなかいっぱいになって、だけど、まっ白なお皿にはチョコレートがあって、みんなでよろこんでいるとしはいしゃが言いました。
「君たちはこの街でたくさん良いことをしたね。だからご褒美をあげるよ」
って。
ボクたちはわるいことはしてないけど、よいことってなんだろ?
みうちゃんとかいくんとボクはキョトンとしました。しはいしゃは笑いながらしゃべってます。
「チョコレートさ。これを食べるとね、みんなが将来なりたかったオトナになれるんだよ。そして、ちょっとでも楽しい気分になれたら、また戻れるからね」
ボクはしってました。
みんなはボクをバカだっていってたけど、ボクはバカなんかじゃなくて、ふつうなんだってこと。
もどれるってのは、きっと生れかわるんだってこと。みうちゃんも、かいくんも、もうしんでじゃってるのをしらないから美味しそうにチョコレートをたべました。
おくちのまわりがまっくろで、おもしろかったです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます