第17話 膝枕
カチャカチャ
食器の音が聞こえる。
ニーナさんはチラチラと真っ赤に染まった顔をこちらに向けてくる。
尋常じゃないくらい意識されてた。
「あ、あの、いいお天気ですねっ!」
「そうですね。外に出たら気持ち良さそうですね」
ニーナさんは嬉しくて堪らないと言わんばかりの表情で僕との会話を続けている。
子犬みたいだ。僕と話せるのが本当に楽しいようで、照れながら何とも幸せそうな蕩け顔だった。
だけど食事中という事もあり僕の返事が少しばかり遅れると、ニーナさんはサッと顔を青くした。
「あ、ご、ごご、ごめんなさい。こんなに話しかけたらっ、御迷惑ですよねっ、私、浮かれちゃって、ごめんなさい……あはは……」
途端に卑屈な一面を見せてくる。
嫌われることを異様に恐れる彼女は、嫌われてないだろうか。と恐る恐るこちらを見てきた。
ビクビクと怯える姿は小動物みたいで可愛い。
とはいえこれでも恋人同士なんだからあんまり遠慮とかしないでほしい。
すぐには難しいだろうけど……
「そういえば冒険者登録してきたんですよ」
僕から話題を振るとニーナさんはぱっと顔色を明るくする。
こちらの顔色を窺った後に可愛らしく笑った。
「そ、そうなんですね! ユウトさんは、その、初めての登録なんですよね?」
僕からの話題というだけで身を乗り出しそうなくらい食いついてきた。
どこかたどたどしいニーナさんの質問。こちらを窺う上目遣いからは彼女の不安な内心が読み取れた。
うーん、重症だな。ちょっと荒療治するべきだろうか。
「ニーナさん。もし良かったらなんですけど」
恥ずかしいけど、少しくらいは彼氏らしいことをするべきだろう。
◇
「あ、あわ、ああわわわわ」
ソファーの上に座ってあわあわ言ってるニーナさん。その膝の上に頭を乗せている。
僕は今、現在進行形で膝枕なうだ。
気持ち良すぎて言葉が意味不明になっている気もするけど気にしてはいけない。
だって、気持ち良すぎた。人をダメにするクッションって聞いたことあるけど、これもそんな感じだ。僕をダメにするニーナさんって感じ。
ニーナさんの動揺が綺麗な太もも越しに伝わってくる。
というかニーナさんガード緩すぎる。まさか本当に許してくれるとは。
「ゆ、ユウトさんっ、その、大丈夫ですか? 私なんかの足で、そ、その……」
ニーナさんはローブをたくし上げて、その白い太腿の上に僕を乗せている。
生足の感触が頭皮ごしに伝わってくる。
ぷにっとした柔らかさと、滑らかな感触を併せ持つ極上の美脚だった。
たまに滑らかな内ももに息が当たり、ビクっ! と敏感そうにニーナさんが震える。
色っぽい吐息が零れるのも堪らない。
「ニーナさん、重くないですか?」
「だ、大丈夫です。そそそ、それより、ユウトさんが……っ」
ニーナさんの鈴を鳴らしたような声が耳に心地良い。
眠くなってきた。ふぁっと欠伸を一つ。
「天国ですねここは」
「そ、そうなんですか……?」
「はい、ニーナさんも僕の膝で良ければやってみ」
「い、いいんですか!?」
うおっ。
至近距離の大声。さすがにビックリした。
ニーナさんが顔を青くするけど「大丈夫ですよ」と答える。
「え、えと、その、ほ、本当に……?」
「そんなにありがたいものじゃないでしょうけど」
「そんなこと……あの、御迷惑じゃないなら……」
断られるんじゃないかと、ビクビクしながら可愛らしく頼んでくる。
もちろんそんな顔でそんなこと言われたら断ることなんてできるわけがない。
ニーナさんの生足は正直惜しかったけど、僕は起き上がった。
「じゃあ交代ですね、はい、どうぞ」
「えと、お、お邪魔します……」
ニーナさんのどこかずれたような言い方に僕は笑みをこぼした。
壊れやすいものに触るかのように、慎重にゆっくりと僕の腿上に頭を乗せてきた。
「男の足なんてつまらないでしょう」
「…………」
「?」
僕の太ももに頭をのっけたニーナさん。
なぜか顔をうつ伏せにして、何も答えない。
ただ僅かに呼吸音のようなものが聞こえてきた。
「ニーナさん……?」
「っ!? あ、いやっ、その……い、イイ匂いでした!」
「…………」
斜め上の返答に僕は苦笑いを浮かべた。
ニーナさんも自分がおかしなことを言ったと気付いたのか、かぁっとリンゴのように赤くなる。
彼女は匂いフェチだったんだろうか。僕の匂いなんかでよければいくらでも嗅いでほしい。
にしてもニーナさんは可愛いなぁ。エロ可愛い。これ僕の彼女なんだけど信じられる?
「ニーナさん……頭撫でてもいいですか?」
聞いてはみたものの、我慢は出来なかった。
答えが返ってくる前に、丁度いい位置にあったニーナさんの頭に手を乗せる。
「ぁ……んっ!」
ニーナさんの体の震えが僕の足に伝わる。
彼女は切なそうに太ももをもじもじと擦り合わせていた。
頭の上を手が往復するたびに、華奢な腰が震え、肩で呼吸する。
足の指先をきゅっと丸めて、何かを耐えるように唇を噛み、手を握り締めていた。
……なんかエロいな。
しまった。そういえば僕もさっき頭を撫でてもらえばよかった。一生の不覚だ。
交代してもらおうと思ったけど、ニーナさんの頭を撫でる任務も重要だ。
ううむ、悩ましい。
「ユウトさ……っ! そんら、撫でられたりゃ……ふああ!?」
ニーナさんってもしかして頭が性感帯なのだろうか……マニアックだな。
それとも今まで人と触れ合ったことがないから飢えてるとか。ありそうだな……
もう片方の手で猫の喉を撫でるようにすりすりと擦り上げる。
「あっ、あっ、あっ、くゥ……くぅん! っぁ……くぅぅん!」
ニーナさんの体の震えが止まらない。
くぅん、くぅん、と鳴くニーナさんはまるで求愛している子犬のように愛らしかった。
なんか本当にいけないことしてる気分になってきた。
いや……一応彼氏なんだしセーフだろう。たぶん、おそらく。うん、自信を持とう。
ひとしきり堪能してから彼女の呼吸を落ち着かせる。
「ハァ、ハァ……!」
「落ち着きました?」
「ユウト、さん……幸せ、です。もっと、もっと撫でてください。き、気持ち良すぎて……」
完全に発情してますね。
トロンとした蕩け顔。潤んだ瞳が切なそうに僕を見つめる。
優しく撫でてあげるとニーナさんはさらに小さく喘ぎ声を発した。
……さすがにムラムラしてきた。
「ふああぁ……こ、こんなに幸せで、い、いいんでしょうか……私、こんな、不細工なのに……」
ああ、また言ってる。卑屈だなー。
もうちょっと楽しみたかったけど、そろそろ本題に入るか……
「ニーナさん。ちょっといいですか?」
「ふぁ……は、はい?」
ニーナさんが僕を見上げる。
「デートに行きませんか?」
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