第22話 JUNEはエンタメではなかった

 石原郁子の「古譚」「監督」読了。

 格調高い「古譚」。栗本薫を彷彿とさせる「監督」。

 泥より出でて泥に染まらずの監督。悪役も粋だな。

 メッセージ性が強く、普遍的。ずしんと来る。


 追記。


 上記の作品は、お借りしたJUNE全集に載っていた作品。

 石原郁子の「古譚」を、エンタメと言う人はいないだろうと思いながら読んでいた。とにかく格調高い。美しい。文体が……ああ、語彙喪失。


「監督」は、栗本薫のJUNE作品を彷彿とさせる。

 売れない映画監督と、そこそこ売れてる写真家。そして大きな財力を持つパトロン。

 定番の組み合わせと、表に出せない関係性がエモい。

 こんなだったよなあ……JUNEって。そう思わせる。


 ──泥より出でて泥に染まらない蓮の花のような。

 人は色んなものをくっつけて生きている。地位だの名誉だの、お金だの権力だの。

 もちろん、社会的にオープンに出来ないものもくっつけているのだ。

 多少の細菌やウイルスに慣れていないと、純粋培養されたものはすぐに死ぬ。

 しかし、どうしても譲れないものもある。信条というか、それに嘘をついてしまったら、もう生きていけないような心の中心にあるもの。

 それが命取りになるかもしれない。しかし、それでも譲れない。

「監督」という作品は、そういう普遍的なテーマを持っていた。好きな作品だ。


 角川ルビー文庫に栗本薫は書いてたけど、文学とエンタメの境にいたのかな。

「朝日のあたる家」を買い直したので、また読んでみようと思う。

 JUNEは廃れ、エンタメのBLが本流となった。

 BLを全く読んで来なかった私は、今でもJUNEものを探している。

 そして、栗本薫の果たした役割の大きさを、あらためて知らされている。








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