第34話 古の《霊》
「行け、絡繰兵よ。殷に反逆する愚か者を叩き潰すのだ!」
《霊》が声を張り上げると同時に稲光が放たれた。
「起動開始……!」
それを浴びた周囲のプロトタイプがむくりと起き上がり、剣を構える。
「《霊》は電気で構成されてるいってたのってホントみたいね!」
京が拳を構える。
「ぬう、ならば銃の出力を上げるぞ! 二人とも、前に出るな」
陣が銃の引き金を引くと、銃口から眩い光が溢れ、一体の骨絡繰兵を焼き払った。
「なぬッ! 只人が宝貝を使うだと……、面白い!」
《霊》が驚愕している。やはり陣の銃に使われている技術は仙人の宝貝と同じらしい。
「くッ、弾切れとは……。出力を上げすぎたか」
しかし、この銃もまた実銃と同じ弾数の制限があるようで、歯噛みしている。
燃料を外付けしているような感覚なのだろう、陣は熱剣に持ち変える。
「その銃、便利なだけじゃないみたいだな!
アイシャが残った骨絡繰兵に突貫し、肋骨めがけて熊猫拳を放つ。《氣》を乗せた重い一撃で骨絡繰兵を機能停止に追い込む。
しかし、骨絡繰兵が斃されたのを見ても《霊》は笑っている。
「ハハハ、まだ絡繰兵は残っている! 製造ライン、フル稼働ぞ!」
《霊》が叫ぶと起動音が聞こえてきた、こちらに殺到しているのだ。
「まったく……。絡繰兵って殷と周の戦争の時にも使われてたのかしらね!」
京が
「ちッ、面倒な」
陣が熱剣を振るうと凄まじい熱量を持つ剣は絡繰兵をまるで肉のように切り裂いた。
「我が存在する限り、製造工場も絡繰兵も止まらぬぞ! 我が操る宝貝の稲妻があるからなァァァ!」
鼓膜が破れるほどの叫び声だ。そして《霊》が宝剣をかざすと電流が流れる。
「あの《霊》が宝貝を用いて電流を流し、製造工場を稼働させているという訳か」
《霊》が自信満々に策を語るのは、負ける要素がないと分かっているからだろう。陣が忌々し気に舌打ちした。
「我を斃す事は不可能ぞ。永遠不滅たる《霊》だからな、ははははははは!」
「へッ、知ってるぜ。お前を斃すには陰の電気をぶつければいいんだろ? 鉄はいくらでも落ちてるからなな!」
アイシャとて《霊》を撃退する方法は京から聞いている、勝ったも同然だと叫ぶのだが。
「それだけじゃ、ダメなのよ」
京が首を横に振った。
「どういうことだ!?」
アイシャが驚愕している。
「確かに《霊》を斃すにはそれで正解。だけど、こいつは相当強力な悪霊なのよ。ちょっとやそっとの陰の電気じゃ斃せない」
「その通り。貴様、なかなかに詳しいな! 我を相殺できるものなどこの製造工場には存在せぬ!」
霊が勝ち誇ったように言う。理屈は相殺と同じであり、霊を構成する陽の電気と同じかそれ以上にものをぶつけなければならない。
「ちッ、銃の残弾を残していれば」
「それも無駄だ。その宝貝の銃は陽の電気を放つのであろう? 仮にぶつけたところで我が力となるだけだ、ハハハハハ!」
最初から京は詰んでいたと《霊》は高笑いと共に語る。
「さて、無尽蔵の物量に押し潰されるが――」
剣を構えるのだが、京は何かを決意したような、悟った顔をした。
「……。アンタを消滅させる方法がないとは、一言も言ってないわよ?」
「ハハハ。苦し紛れの言葉遊びか、実に下らん!」
霊が嘲笑するが、京は意にすら介さない。
呼吸を整えた京が拳を構えた。しかし、構えが普段と違い、さらには纏っている《氣》も違う。
「え? どういう……」
アイシャは戸惑っていた。「それ」を知っていたからだ。
――
それは妲己とズーハンが修めていた功夫の流派の動きとさらには《氣》も似ていたからだ。
「――ッ!」
京の身体に痛みが走る、しかし、それは無視した。そして縮地――。
「
京は陰の《氣》を拳に籠め、無機物の名を冠した極陰の技を放とうとする。
「待ちなさい、京ッ」
しかし、その京に割って入る者がいた。
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