第14話 交易都市メルカートゥーラ
帝国の襲撃にあった数時間後、午前7時頃。
通常であればや夜営地をこの時間帯に出発するはずだった。
夜通し走り通し街道の開けた個所を発見したため小休止をしている。
生存者を半分ずつ1時間ずつ交代で休んで、2時間程で出発する予定だ。
今更便利なアイテムがあるよとは言い辛い雰囲気をだしているためカオリの案を飲んだ。
「解せないのは、悪意ある人の気配を察知するアレを掻い潜って現れた帝国の奴らだよな。」
夏希は昨晩の襲撃の謎について考察していた。
「まぁアレの効果は半径2kmくらいだし、多少の前後のズレやアレを無効化する何かがあっても否定はしないよ。」
実際真希の察知能力の方が半径5kmくらいと効果だけで言えば優れている。
目が覚めた姫達は記憶の混濁こそあるものの助かった事を安堵していた。
怪我を真希達の持つ回復アイテムで治した事になっている。
そのため多大な恩がある事を理解し、感謝の言葉を受けていた。
見た目清楚なお嬢様なのに、実はビッチ……と脳内で浮かべていると笑えてくるのだが、それは表に出さないでいた。
恋愛は自由だよな……と考えれば別に非難する事は出来ないのである。
ただ、スワップの4人は亡くなった事を伝えると哀悼の言葉を述べていた。
そして亡くなった方向へ向けて祈りを捧げていた。
自分のせいで……と思うと心が沈んでしまう。
性に対してはビッチでも、人を想う心は聖女に思えた。
それから1日半、出発してから3日半で目的地である交易都市メルカトゥーラへとたどり着いた。
遅れは半日で済んだのはあの夜間の強行のおかげだろう。
昼間に着いたおかげでギルドへの報告もすんなり出来た。
亡くなったスワップのプレートを提出し、ギルドマスターに事のあらましを伝えるためアポを取って欲しいと伝える。
幸い今すぐならという事でカオリと紅蓮のリーダーと姫と貧乳乙女隊の二人でギルドマスターの部屋へと通された。
「そうか帝国の介入か。」
証拠となる相手の武器防具、矢を提出するとそれらを見てマスターは納得する。
なぜ襲われたかも伝えなければならない、今誤魔化しても国の諜報機関がその気になればどこかで真実が明らかになるため、嘘をつくリスクを負うべきではないと判断した。
「そうか、そこのビ……お嬢さんが帝国のやんごとなきお方だと、そして商会と護衛はそのとばっちりを受けたと。」
ギルドマスターは考え込み結論を出す。
国際的な事になれば、いくらギルドが国に属しない組織だと言っても無関係を貫かないわけにもいかない。
王国に所属している冒険者が他国のお家騒動に巻き込まれて殺されたというのは、少し不憫である。
もっとも、これが盗賊などによればそこまで考える必要もない。
帝国の武器防具・矢と一緒に手紙を添えて国に報告するのが無難だと判断した。
身を隠すための方法はあっさり決まった。
帝国に帰る気のない姫親衛隊の4人は、髪を切ったり染めたりして服装も変え別人として生活する事に決まった。
「簡単に決まって良かったな。」
夏希が姫の背中をパンパン叩きながら言うと、姫は叩かれた衝撃で咽ていた。
当然足が着く恐れがあるので冒険者パーティ・姫親衛隊は消滅する事になる。
名前の変更にあたりパーティ名も【姫を守りTai】にしようとしてマスターに止められた。
「せめて連想されないような名前にしろ。それと活動は当面この街のみにしておけ。」
国からの招集もあるかもしれないし、街からあまり離れるとそれだけ危険が多い。
交易都市故に色々な人間はいるけれど、木を隠すなら森の中というように、人を隠すなら人の中なのである。
「じゃぁ、この街にいるカリスマ美容師に髪を変えてもらえ、奇抜な色にはするなよ?目立ちたいわけじゃないんだろ?」
それは服装に関しても同じだぞと釘を刺す。
アルマはアニムと名を改める。
アルマもアニムスも魂を語源とするが、アニムスだと可愛くないとの理由で一文字削ってアニムとなった。
元親衛隊の男3人も微妙に名前を変えて、新しいパーティ名【さくらんぼ姫】にしようとしてやはり止められた。
どこら辺がさくらんぼかは放送に困るし、姫の字を入れると連想され易くなるためだ。
それから30分議論し最終的に【お嬢と愉快な仲魔達】で妥協した。
妥協したのはギルド側も姫達側もである。
正直報告に使った時間よりも名前決めの時間の方が時間を多く使っていた。
その後ギルドを出ると今回の報酬を受け取る。
今回の依頼は往復ではないため片道のみであった。
道中の戦闘やアイテムの件があるため、商会から別途追加報酬が支払われた。
一人銀貨50枚の通常報酬+30枚で計銀貨80枚。
「カオリさんさぁ、商会でコレ扱ってない?」
それはエリーちゃんに頼まれたお土産のブツの話だ。
「おね……真希さん、貴女も好きですなぁ。」
肘で腕を小突いてくるカオリ。真希は呆れた顔をして否定する。
「ブツは止まってる宿の女の子のお土産だよ。私らは男には興味ないから、創作物だとしても。」
明日の昼過ぎには用意しておくのでムーランルージュ商会本店に来て欲しいとの事。
今日は荷の整理と今回の行商の報告で忙しいのだとか。
「じゃ、明日風車の看板のところに行けばいいのね。」
真希と夏希はカオリと別れ街を散策する。
街並みは大きく変わるわけではないが、人の活気は違っていた。
流石交易都市というだけあって色々な人種がいる。
商業の中心といった感じは要所で見受けられた。
宿屋を探そうと周囲を見渡すと、別れる前にカオリから聞いていた宿を発見する。
セーノペキューノスの宿・愛の巣と同じ形態をとる宿屋らしい。
同じように男同士のそういった宿もあり、そこは分かり易く看板が紫色をしているとか。
「揚羽蝶って宿屋で間違いないね。」
その隣におもちゃ屋があるよ、と真希が言うと宿屋に向かわずおもちゃ屋へ足を向けて小走りしていた。
そこで運命的な出会いをする。
真希達にとってとても重要な出会いが……
真希は運命に引き寄せられるようにおもちゃ屋へと入っていった。
夏希は真希を追いかけるように走った。
おもちゃ屋は全体的に薄い桃色の外装をしており、子供のおもちゃ屋ではなさそうだった。
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後書きです。
メルカートゥーラは交易、セーノペキューノスは貧乳が語源です。
何語かは探してみてください。
交易都市交易っておかしいとかはなしで。
ハルモニアは調和でしたしね。
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