沙の波

 千切れ雲の彼方の天は我が物顔で微笑んでいる。伸縮を繰り返す両手を広げているようでいて近寄りがたくありがたくも遠巻きに眩く誘われ、夕暮れ時に影を伸ばしたひさしのせいで。萎びかかる余熱が幾分和らいだ唾棄と ただ湿った面を覆ってしまう、濡れ羽色の鴉が宵の芳香と吹き抜けていくだけのこと。でも、遣る瀬無いやるせない

 押し寄せる波間にすくい上げる二枚貝の口を壊さぬようにと幾度も願いながら、あるはずもない輝石を探しては彷徨うろいている。

 わたしだろうが あなただろうが 見つけたらつべこべいわずに捕まえておいて下さい

 未来にはその資格がありそれは過去に求める権利があるはず

 どこへなり誰とでも くぐり抜けることができる狭き門扉が見当たらない。長い間風浪に晒された ほったて小屋がかろうじて 崖から見下ろしていたものでも。

――さては吹き下ろしの狂風、その産み落とした、

 哭いては喚き散らす雪の華 何処からか流れ着いた花桜と混じり合い 陽炎を創りはじめ。

 やはり物見遊山、川下りの先に酔いに吐瀉した未来も過去も崩れ去る、その瞬間を押し殺し走馬灯とする。

 今、君の胸を打つ光景が懐かしいものであるか……

 見知らぬひとであるか、たかだか 中心にうずくまる者があると私は知った。

 そんな時になんでもない当たり前の空を気まぐれにも仰ぐ、それとも足蹴にされた草花を見つけてしまったような心地がありて 己の心を徘徊するものだろう。

 いや、むしろ今この視界に広がる世界自体が 浅ましい心をそのものだと言える。

 御心がちぐはぐに向かう家路に、それでもそれぞれが還りたい。その翼も眼差しも億劫でも俯瞰しただけの唯簡略化された記憶に絡まれ続ける、人生、これが岐路で有ろうが無かろうが ふとした事で足を止め省みることがあるこれが仮の世であってもやはり途上でしかない。

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