お題「高度」

「まもなく、高度33,000フィートに到着します」

そのような案内がなされていた。

「それってどれくらいの高さなんですか?」

乗り合わせた子どもが聞いている。

「およそ10キロメートルですよ」

案内人が素早く答えてくれた。その答えに合わせて、歓声が聞こえた。

「もうそんなに離れたんだね」

「あぁ、地球ともお別れだな」


時は2298年。ついに人間は地球を捨てる決断をしたのだ。

「意外と涙は出ないものだな」

「本当にね。やっぱり新たな出発だからじゃないかしら」

「うむ、そうかもな」

人間は本当に薄情な生き物だと思う。住めなくなれば生まれ故郷をも捨てられる。私の心にチクリと鋭い痛みが走る。

しかし、高度が増すにつれ、その気持ちは薄れていく。そう、これは新たな出発なのだ。

私は行き着く星に思いを馳せながら眠りについた。

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