第58話 時を示す魔道具2
3日ほどで首都についたグレコは宿を確保しつつ、サラから教えられていた魔道具屋に出かけました。
店舗は大通りに面していて、ガラスをふんだんに使って、店内が見えるようになっています。
「なかなかやり手の商売人だな。工房兼のカイの店とはずいぶん雰囲気が違う。明るい感じだ」
グレコがドアを開けて中に入ると、さっそく店員が寄ってきました。
「いらっしゃいませ、冒険者のお客様。今日は何をお探しでしょうか?」
「ああ、時を示す魔道具があると聞いてきたんだが」
「はい、ございます! 『時計』の魔道具と呼んでおりますが、最新の魔道具なのに、ご存知とはお目が高い!」
「そうかい、ちなみに『探魂の首飾り』はおいてあるのかい?」
「あれはよからぬ使い方をする輩が多くなりまして、当店では販売者責任もございますので、取り扱いを中止したのでございますよ」
「そうか・・・そうだよねぇ・・・」
グレコは、『時計』の魔道具のラインナップを見せてもらいました。
「ふところにしまう懐中タイプと、腕にはめるリスト・タイプがございますよ。もちろん壁掛けもございますが」
仕組みとしては、魔法石の魔力吐出量を一定にして流し、その流量に応じて時間をカウントし、目盛りを発光させて、時間を表示しているとのことでした。魔力を使った砂時計と言ってもいいかもしれません。砂時計と違って、持ち運びで揺らしても、振り回しても、狂いが出ないのはよいところです。
「うーむ、ペアのものをと思ったんだが、俺はダンジョンに潜るから懐中タイプがいいな。それにデザインが似たもので、リスト・タイプのものはないかな?」
「それなら、こちらがいかがかと」
それは円形の透明水晶の周囲に、バラの蔓と花の装飾が彫り込まれたもので、同じデザインで、懐中タイプとリスト・タイプがありました。
「いいじゃないか、これにしよう」
「ありがとうございます。お代金はペアで3万Gでございますが、よろしかったですか?」
「ああ、問題ない。リスト・タイプのバンドはどうなっている?」
「牛革のものをおつけします。お色も選べますが」
「では、赤だな。女性に贈るつもりだ」
「かしこまりました。長さも標準的な女性に合うようにさせていただきます」
と、こんな感じで、買い物はスムースに行きました。首都の大手だけに、接客もこなれており、グレコは感心しました。
「ちなみに、商品は自社製なのか?」
「いえ、実は当店は小売販売がメインでして、商品はすべて卸から仕入れているものです」
「ふーむ、実は俺の地元に優秀な魔道具屋がいて、珍しい魔道具もあるんだが、興味はないかい?」
「ほほう、魔道具屋の知り合いがおられたのですか。それで、『時計』の魔道具のこともいち早くご存知だったと・・・もちろん、興味はございますね」
「なら、これを使って、営業担当と連絡を取るといい」
そう言って、グレコは『メッセージの水晶板』をひとつ取り出しました。
「短文だが、水晶板に描いた文字を相手側に転送して、通信ができる。これを通じて商談をしてくれ。担当の子の名前はサラだ。商人ギルドともコネがあるから、流通面も心配ない」
「なんと! こんな魔道具があるとは・・・ぜひ連絡させていただきます。ありがとうございます」
『時計』の魔道具をもち、店員からうやうやしく見送られたグレコは、冒険者ギルドに行ってみることにしました。首都ではどんな案件があるのか、興味があったのです。
掲示板の内容は、それほど、地元と変わるものではありませんでした。地域特有のモンスターの討伐依頼などもありますが、難易度に大きな差があるようには見えません。
しかし、一枚、珍しい案件が張り出されていました。
『バンパイア・ハンター求む』
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