第33話 グレコのパーティ
「最近の俺のレベルアップと、ラシャが買った罠透視の魔導具を見て、他のメンバーも魔道具に興味を持つようになってさ」
「ほう」
「それで、一度、パーティの皆で、カイの店に行ってみようという話になったんだよ」
「まあ、客になるなら拒否はしないがね」
「じゃあ、今度連れてくるよ」
そんな話があった、数日後、カイの魔道具屋に、グレコのパーティ計4人が訪れました。
「カイさん、お久しぶり!」
以前にも来店したことのある盗賊のラシャが挨拶をしました。
「盗っ人女か。その後、罠は爆発させていないんだろうな」
「カイさんの罠透視の魔道具のおかげもあって、あれ以降、罠の解除率は100%よ」
ラシャはカイの失礼な物言いも大人の対応でスルーして、愛想よく答えました。
「カイ、初めての二人を紹介するよ。リーダーで魔法使いのベリアルと、僧侶のザザだ」
ベリアルは浅黒い肌に黒髪の男で、白い魔法使いのローブを身にまとっています。年の頃は30手前といったところでしょうか。
ザザは、逆に、透き通るような白い肌に、緑色の髪・・・古来存在したと言われるエルフの血をひいているのかもしれません・・・ズボンに僧兵がまとう前掛けを身にまとい、メイスと盾も持っています。盾はグレコの小型の円盾より大きいスクエアタイプで、意外と武闘派のスタイルのようです。
「店主のカイだ、よろしく。こちらは従業員のサラ」
「よろしくお願いします、サラです。12歳です」
ベリアルも挨拶をしました。
「魔法使いで一応パーティのリーダーをやっているベリアルだ。よろしく頼む」
「ベリアルさんは、二人の子持ちの立派なお父さんなんだ」
「グレコ、それは今日は関係ないぞ」
グレコとベリアルは、強い信頼感で結ばれているような感じでした。
「僧侶のザザと申します、美しいお嬢さん」
と言って、ザザが手にとったのは、なぜかサラの両手でした。
サラは目をパチクリしながら、慌てて答えます。
「は、はい。よろしくお願いします」
グレコをため息をついて補足しました。
「ザザはこの通り、女性と見れば見境がない、俺を上回る変態だ。カイもサラも気をつけてくれ」
「グレコくん、君は私を誤解している。美しい女性たちに聖なる神の祝福をふりまくのは僧侶である私の使命なのだ」
「まあ、勝手にやってればいいが、カイにそれをやると命がないと思え。あと、12歳には手を出すな」
反省した色もないザザを横目に、ベリアルがリーダーらしく、本題を切り出しました。
「カイ殿、いつもグレコが世話になっており、例を言う。ときに、グレコと二人でモンスター退治に出かけて素晴らしい戦果を上げているそうだな。なんとアイスドラゴンまで倒したとか。しかも、カイ殿は冒険者の訓練を受けておらず、装備は魔道具だけだと聞く。その類まれな知性と戦術をもって、我々のパーティの戦力アップにつながる提案をしてほしいのだ」
「うむ、私は冒険者としては半端者だが、他ならぬグレコが世話になっているお方の頼み。できる限り相談に乗ろう」
グレコが見たところ、カイはベリアルに好感を持ったようです。
「つまり、前衛が戦士と盗賊で肉弾戦に不安があるから、僧侶のザザも武装して肉弾戦に参加することがあるのよ。それで回復とどっちつかずになるのが問題だと、私は思うわ」
ラシャが問題点を指摘しました。
「いや、むしろ火力不足が問題なのではないかな。ラシャの武器は短いダガーだけで、敵の数を減らすのが遅れるために、私がやむを得ず前衛の真似事をしなくてはならなくなっているのです。戦闘直後から強力な攻撃で敵の数を一気に減らすのが得策ではないでしょうか」
ザザは言い返します。
「うーん、ベリアルさんに回復の魔道具を持ってもらっても、それで攻撃呪文が使えないとますます戦闘が長引くってこともあるのか。やはり、ザザが言うように火力を上げて速攻を狙うべきかな」
グレコは言いました。
「いっそ、ダガー一本の攻撃など当てにせず、ラシャが攻撃や援護の魔道具で戦うスタイルにしてみてはどうだ? 物理攻撃はグレコだけにまかせるぐらいのつもりで」
ベリアルは、別の方向性を示しました。
なかなか有意義な意見交換で、カイの魔導具屋の商談スペースはにぎやかです。
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