第7話 コボルトとの戦い2
「おいおい、この群れは30匹はいるぞ。さすがにやばいんじゃないか?」
グレコとともにコボルトにリベンジにやってきたカイは、できるだけ大きな群れがいいと言い張り、少数の群れをスルーして見つけたのが、この30匹近いコボルトの群れでした。
「問題ないはずだ。補助魔法もいつも以上に強めにかけた」
「いや、俺は大丈夫でも、コボルトがカイに気づいたら、また前みたいなことになりかねない」
「完璧な囮役になって、私を守ってくれると約束したじゃないか」
「それはそうだが、限度ってものが・・・」
「愛の力を信じろ」
「!!!」
グレコはよくわからないけど納得することにしました。
「作戦は前のとおりでいいんだな? 俺が突入、カイは隠れて雷撃の杖」
「そうだな」
「わかった、いくぞ」
大きく深呼吸を一つすると、グレコはコボルト30匹の群れの中に突入しました。
「うおらー!」
たった一人で30匹前後のコボルトの群れに突入する勇気、さぞやカイも感心しているに違いない、願わくば、見つからずに茂みに隠れていてくれよと、ちらとカイがいる茂みをグレコが見ると・・・
カイが立ち上がっていました。これではコボルトの群れから丸見えです。
驚愕するグレコでしたが、さらにカイは驚くことを口走りました。
「あんたなんか大嫌い! +5」
するとどうしたことでしょう。グレコの右手の薬指の指輪が怪しげに光り、コボルトたちが一斉にグレコに襲いかかったのです。
丸見えになっているカイのことは全く無視して、30匹がグレコだけに襲いかかり、ひしめきあっています。
「なんじゃぁ、こりゃあ!?」
コボルトからもみくちゃにされるグレコをよそに、カイは悠々と魔導具箱から雷撃の杖を取り出しました。
「雷撃の杖 +2 3連射」
グレコを取り巻くコボルトたちが次々と倒れていきます。
気がつけば、グレコの周りにはコボルトの遺体が死屍累々となっていました。
「いったい何が起こったんだ。どうして、カイはコボルトに狙われなかったんだ?」
グレコはカイに走り寄りました。
「カイ! いったいどういうことだ。説明してくれ」
「敵の憎しみを集めて自ら攻撃のターゲットになる魔法というのがあるのだよ。平原などの野戦で、陣形だけで防御力の低い仲間を守りきれないときに使うのだがね。仲間を守るのが役割のパラディンなどの職業の人が習得していることがある」
「まさか、それを・・・」
「ああ、グレコにプレゼントした指輪に魔道具として封入しておいたのだ」
「でも、俺は魔道具を起動していないぞ」
「ああ、私の声で遠隔起動できるようにもしておいた。あんたなんか大嫌い、という起動呪文で離れた場所から起動できる。しかも、威力倍増の効果も出る」
「なぜ、起動用の呪文を、そのワードにした・・・」
「喜ぶかと思ったのだ」
「喜ばねぇよ!」
「とにかくリベンジは成功だ。これで、数十体のモンスターの群れと遭遇しても、グレコは約束通り、完璧な囮役になって私を守ってくれるというわけだ」
「バカな! 俺はパラディンじゃないぞ!」
「私だけのパラディンになってくれないの?」
「うぐっ・・・」
「指輪も絶対はずさないって誓ったよね?」
「うぐぐぐっ・・・」
「魔道具の名称は、嫌われ者の指輪と名付けた。愛用してくれ」
コボルト30匹の討伐報酬は、なかなかのものだったようで、カイは黒字が出てほくほくしていましたとさ。
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