搾取される側だったので異世界では搾取する側になろうと思います ~貸し出した利ざやでいずれ世界最強~

きよらかなこころ

第1話 転生

 はあ、1ヶ月フルタイム働いて、手取り14万はきつい。


 プロパーの人にこっそり教えて貰った話だと、俺を雇うのに80万のお金が出ているそうだ。


 大元の会社がA社に80万で先ず依頼する。


 A社が80万で受けた仕事をB社に60万で依頼する。


 B社は更にC社に40万で依頼する。


 C社の社員である俺はそこから色々さっ引かれて、14万を手にする。


 間に色々会社が入る事で、俺の元にやってくるのは14万と言うことなのだ。


 業界の事を何も知らなかった俺は、この構造がまかり通っている事を知ったとき絶望に駆られた。


 現場で働いている人達は殆ど同じ仕事をしているのにも関わらず、所属している会社によって給料が10万単位で違うのだ。


 いやあ、本当にクソだわ。


 何も調べず転職を決めた1年前の俺をぶん殴ってやりたい。


 ただ、そんなことを考えた所で現実は何も変わらない。


 給料の良い会社に転職するか、業界をまた変えて転職するか、ニートになるかの3択だ。


 個人的にはニートになるのも悪くないと思っているのだが、そこには常に恐怖心がつきまとう。


 結局、何も決断出来ぬまま、俺は搾取される毎日を過ごしていた。


 そして、俺はある日、事故にあって死んだ。


 何で事故にあった事を自覚しているかと言われれば、目の前に神と名乗る白髪の爺さんがいるからだ。


「すまんすまん、間違って死なせてしまったわい」


 正直、最初はこの爺さんが何を言っているのか全くわからなかった。


「間違って死なせた? 俺は死んだんですか?」


「うん、そうなのじゃよ。ごめんね」


 全然申し訳なさそうな表情で謝罪の言葉を口にする白髪の爺さん。


「間違って死なせて、ごめんで済むんですか?」


「まあまあ、そう怒るでない。お詫びと言ってはなんじゃが、別の世界に転生させてやろう」


 転生? 最近呼んだ本で何かチート能力貰って転生してたな。


「別の世界に転生? どんな世界ですか? 記憶は? 何か能力貰えたりするんですか?」


「剣と魔法の世界と言えばわかりやすいかの。記憶はそのままじゃな。能力は、欲しい?」


「くれるのなら、下さい」


「うーん、そうじゃな、……よし、お主には『経験値マージン』スキルを授けよう」


「『経験値マージン』スキル? どんな能力ですか?」


「相手に経験値を貸し与え、1日1割で貸した経験値に利息がつく。相手に経験値を返して貰う時には、その利息分も合わせて返して貰う事が取得出来るスキルじゃ」


 1日1割って何処の高利貸しだよ。


「えっと、先ず前提として確認したいんですけど、レベルがあって、経験値を得るとレベルが上がる世界って事でいいですか?」


「うむ、そうじゃ」


「そんで、その経験値を貸し出して、返して貰う時に相手の総取得経験値を超えていたりした場合ってどうなりますか? 後、レベルが下がりますか?」


「相手の総取得経験値を超えての取得はできんぞい。レベルは勿論下がる事がある。貸したお主も、返済した相手もな」


「無条件で経験値を貸し出せるんですか? 貸し出せる対象の数は?」


「お主の半径5メートル以内なら誰でも貸し出せるぞい。回収する時も半径5m以内じゃないと行けないから気をつけるのじゃぞ。貸し出せる対象の数は無制限じゃ。正確にはお主の経験値分までしか貸し出せんがな」


「利息って複利ですか?」


「いや、単利じゃ。後、利息の小数点以下は切り捨てじゃから、経験値10未満で貸し出しても意味がないから気をつけるのじゃぞ」


「貸してた相手が死んだりしたらどうなりますか?」


「貸した経験値は返ってこんぞい」


 なるほど、何か色々な事に使えそうなのはわかった。


「相手の経験値が見えないと使いづらいと思うんですけど、そのあたりってどうなってますか?」


「ふむ、そうじゃな。じゃあ、オマケで『経験値透視』スキルもつけてやろう。これで相手の経験値を確認出来るぞい」


「ありがとうございます」


「よし、それでは異世界に転生させるぞい、それっ」


「えっ、まだ聞きたい事が……」


 俺の意識はそこで途切れた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る