幕間 エルディート
「———んっ‥‥もう朝ね」
私はふかふかのベッドから体を起こして、ネグリジェ姿のまま部屋を歩く。
向かった場所は光が差し込む大きな窓。取手に手をかけて内側に勢いよく引くと朝の気持ちの良い風が部屋に充満してきた
「んんん〜〜〜!いい気持ち‥‥さて準備しましょう」
大きく背伸びして窓の外を眺めながら今日の日程を確認します
手帳を片手に持って徐にページを開いていく‥‥‥
「今日は‥‥‥ふふ、あそこに視察だったわね」
今日はとても朝から気分が良い。日程を見て、さらに気分が良くなる
部屋にあるクローゼットを開けて一番高価な衣装を手に取り‥‥‥
「今日は‥‥というより一週間、気合い入れていきましょう!」
ドレスのような衣装を着て、髪を纏めず流していく
お化粧を最低限に留めて、最後に鏡を見て最終チェックをする
「——うんっ上出来ね!」
そのまま部屋の扉を開けて、長い廊下を歩いていく
端に到着したら魔法エレベーターに乗り込んで1のパネルを押す
すると下へとゆっくりと下がっていき数十秒で一階に到着して魔法エレベーターから一歩踏み出して降りました
魔法エレベーターから降りて見え広がる光景は忙しそうに働いている沢山の“構成員達で埋め尽くされています。さまざまな種族が右や左へと早歩きで移動しているのにぶつかる素振りが微塵も感じられません
感心して思わず驚いていたけど、予定が詰まっている事を思い出して私は留めていた両足を前へと動かした———
瞬間、右や左へと忙しく歩いていた構成員の皆は此方に気づくとハッとした表情でその場で足を止めて固まってしまいました‥‥‥‥
「———皆さん、おはようございます」
目の前で石像のように固まってしまっている部下並びに構成員の皆に私は微笑みながら挨拶をした。すると—————
「「「———!!え、エルディート様!?」」」
「「「お、おはようございますっ!」」」
と凄く驚いていたけど挨拶してくれて良かったわ‥‥
凄く視線を感じるけれど、とりあえずエントランスまで向かいましょう‥‥
自然と私専用の道が開かれて左右には先程まで忙しそうに歩いていた構成員の皆さんが整列している。そう、これはまるで花魁道中‥‥‥あの頃とは似ても似つかない‥‥‥
昔の私は男達の腐った視線にうんざりしていたけど、今私に注がれている眼差しは敬愛と忠誠。多くの配下や部下から慕われるという感覚は少し恥ずかしくもあリます
————ふふ、中には私の体を隅々まで見ている男性達もいるけど目を瞑りましょう。けれど少しお仕置きが必要ね‥‥‥っ
いつまでも私の体から視線を逸らさない男性達に手を振ってみる
そうすると男性達は誰に振ったのかと騒めいてしまった
「俺に手を振ってくださったんだ!」
「いいや違う! この俺だ!」
「どこに目ん玉ついているんだ?!この俺に手を振ってくださったんだ!」
あらあら‥‥‥喧嘩はいけないけれど、周りの男性達が仲介しているからこれくらいなら大丈夫よね?
「———エルディート様ぁ〜!是非とも貴女との食事の場を下さるチャンスを!」
エントランスに向かう途中、一人の男性に呼び止められてそちらを振り返る。
よく見ると好青年な顔立ちで可愛らしい彼。
彼は確実に女性の構成員からモテる風貌と容姿をしているにも関わらず、私と食事とは‥‥‥これは困りました‥‥‥
なぜなら、私と食事をしたいという彼をどうやって傷つけないように振るかと、
———ふふ、悩んでも彼のためにはならないわね。何度もこのような状況に立ち合ってきた私は経験し学んでいる。彼のような若く、逞しい男性を振るのに最も効果的な方法は一つしかない‥‥
「‥‥‥ごめんなさいね。私にはもう“彼”がいるの、貴女では私を満足させられないわ。私以外の女性は沢山いるのだからそちらを当たってね?」
「———な!わっ私はっ!‥‥貴女だけしか見えませんっ!貴女のその美しさに心打たれたのです!私はっ‥‥私は‥‥っ!」
「———しつこい男は嫌いよ?」
跪く彼の瞳を見ながら私は優しく、そう語りかけた。それを聞いた彼は酷く顔を歪ませてしまう‥‥周りの男性達は彼を励まし、また女性は哀れだと思うのでしょう‥‥
彼は若く、私よりも年下でこれから様々な経験をこの組織で体感していくことになる。これも彼を強くする為‥‥というのは言い訳なのかもしれない‥‥それでも若い彼には現実を教える必要があるのも事実です。
振った私も多少なりとも心が痛みますが、私には“あのお方”だけで十分です。
あのお方以外の男性は私にはもう必要ありませんもの‥‥
私を縛っていた鎖と永劫の牢獄を解放してくれた“あの方”を心から愛していますから‥‥
私を口説いた彼は項垂れて脱力している‥‥そんな彼を横目に外へと続く道を歩いた。
ロビーを通って外へと通じる扉を開き、駐車している魔車に乗り込む
「さて、学園都市まで一週間ってところかしら。新店の視察に行かないとね」
私は魔車に魔力を流し込み、動力を起動させる
私の経営するパンテーラ=ネーラ商会の最新鋭のこの魔車は“あのお方”と私と開発部門で共同開発した最高の代物。洗練された流れるデザインと魔車業界最速を誇り、近頃魔車による耐久レースが開催される予定です。
勿論、私達のチームが優勝を頂くわ!
それと‥‥‥視察という名の旅行だったりして‥‥
ふふ、視察も大事だけれど本命は早くあのお方に会いたいという願い
学園都市まで一週間の辛抱ね‥‥‥
「さあパンテーラ224飛ばしますよ!」
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