潜入のデリカート


———あるところに蒼髪の少女がいた。少女は道を悠々と歩き、耳に仕込んである魔法具で何やら独り言を呟いている。その独り言を赤の他人から見れば一人でブツブツと喋りながら道を歩いているので誰も少女には近づこうとせず距離をおいていた


そしてまた少女は独り言を呟く


「———ネロ様。こちらの方は配置に付きました」


『そうか。そのまま潜入を続行しろ。決して悟られるなよ』


「はい。この隠密の”デリカート”にお任せください」


デリカートこと月下香大幹部の五華のうちの一人であり、潜入捜査、暗殺、隠密を得意とする部隊の隊長を務めている。そんなデリカートが一体どこに潜入しているのか?


それは後に知れる事だろう———




「———今日は五種族会談の当日。流石に人通りも多いなぁ、各国から来日する王達のパレードがあるらしいけどそれを見る暇はない!急がなくちゃ!」



そう、今私がいる場所は五種族会談が行われる国。魔族帝国が首都デモナート


魔族が多く住むこの国は魔王と呼ばれる魔族の王が支配していることから帝国と名付けられた


一般に魔族とは魔族帝国に住む一族を総称して呼ぶ。また他の四種族との見た目的特徴もある。

魔族と呼ばれる者は黒いコウモリのような翼を背中に宿し、血先が鋭い尻尾を生やしているのが特徴で、あと寿命が天族の次に長い。平均寿命が300歳?くらいだったはず!


また魔族の中では全階級制定協会とは別の階級が存在し、一般の魔族は他国で言う平民や国民と同じ。しかし、その遥か上空に君臨する者達が魔族の中には存在し彼らの事を一般にこう呼んでいる‥‥



——悪魔——



彼ら、悪魔と呼ばれる存在は一般の魔族と何ら見た目や特徴は変わらない。じゃあ、何が違うのか不思議だよね?説明してあげる!


彼ら、悪魔とはこの魔族帝国を統べる者達の事を言い、彼ら以外の存在は魔族と言うの


悪魔と呼ばれる支配者はその昔、あの大戦が勃発する前はこの大陸の1/4を支配する一族だった。けど大戦の影響で一族の大半がこの世を去り、種族が絶滅しかけた時に生き残った一族を先導し、再興した7人の魔族がいたの


そして5000年の時が経ち、先祖の7人を悪魔と崇め、その子孫達もまた悪魔と呼ばれ受け継がれてきた


また受け継がれてきたのは名前や位の他に別のものも受け継がれてきた

それは今を生きる私達にとって身近に存在し続けた欲や感情の総称‥‥‥


傲慢、憤怒、嫉妬、怠惰、強欲、暴食、色欲


この7つを司る彼ら悪魔は7つの大罪と呼ばれて、この魔族帝国を大昔から支配してきた。


全階級制定協会の定めではSSSランク一人、SSランク3人までと定められているから、3人がSランクとなってしまう。しかし、悪魔と呼ばれる彼らは魔族達にとっては崇拝する存在。同じSランクであっても魔族達と悪魔とでは圧倒的な実力差や魔力差が生じる。


仕方なく、Sランクにいると言った感じで、毎年悪魔同士で決闘を申し込みランクも変動するとか



けどSSSランクだけは今も昔もずっと変わっていないの!

悪魔では100年に一度、王を選出するのだけど5000年前から一度もその席が入れ替わっていないの!すごいよね! 


その変わらない席をずっと独り占めしているのが魔王ルシフェルっていうの!

傲慢を司る悪魔でとっても綺麗な人!


その傲慢を司るルシフェルって悪魔が何代にも渡って君臨し続けているから他の悪魔達は魔王になること諦めちゃったの。そしてそれを見かねた魔王ルシフェルは6人を魔将って名付けたの!なんか私達月下香みたいでかっこいいよね! 


私は五華だけど! 


色々説明していたら目的の場所までついちゃった。もう五種族会談までそう時間はない!配置につかなくちゃ!



◊◊◊



———今私がいる場所は魔族帝国首都デモナートの魔王城の一室。煌びやかな装飾や絵画に置物が飾られるこの広い部屋では会談が行われる。大きな円卓が部屋の中央に位置し椅子が5人分備えられている。


そこには魔王ルシフェルが座り、その背後に6人の魔将が控えていた。


魔王ルシフェルは女性の悪魔であり、本名をエルザシア・ルシフェル


黒髪を束ね、黒い翼と鋭い尻尾を生やす彼女はその露出の多い衣装を身に纏うことで、その姿を見た男性達は身も心も誘惑されると言う。あの月下香一胸が大きくて腰が引き締まっているエルディートさんに引けを取らない体のラインはまさに兵器と言っても過言では無い‥‥‥


そして私はこの部屋の隅に立ち、静かに待っていた。

仮面と白いローブを纏ってね


なぜ魔王城に私がいるのかはこの後でわかるよ!それまで静かに壁の隅の方にいる!


そして待つこと15分程でこの一室に繋がる大きな扉が開かれた。重い音を奏でながら開く扉の先には各国の王達と数名の護衛達が姿を現した

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