月下香総会議 完
さあ、ここからが本題だ。これまでの流れは内部報告会議だがデリカートに話し始め、ようやく敵の情報を聞ける
先程までとは比べ物にならない張り詰めた空気が全身にのし掛かるのが感じる
「———はい。この2年での情報では得るものはほとんどありませんでした。しかし、ここ半年で奴等の情報や狙いが見える事ができました」
半年だと?そういえばここ半年で魔獣の大群が何度も押し寄せてきているな‥‥これは非常に不可解だ。何か裏があるだろう、突然に魔獣が大群で押し寄せるなど聞いたことがないからな
「なるほど。それは魔獣の大群と関係しているのか?」
「ネロ様のおっしゃる通りです。ここ半年で魔獣の大群は全て同じ方角から侵攻してきました。その方角というのは”魔族帝国”。そして、これは偶然なのか必然なのか‥‥‥その魔族帝国で四年に一度開催される”五種族会談”が今年開かれます」
なんと魔獣の大群は全て同じ方角からだとはいい仕事をしてくれた。それに五種族会談だと、確かにそんなものがあったな四年前と言ったらまだ12歳なんだが‥‥
「———付け加えここからが重要な内容です。私デリカートの隠密部隊は魔族帝国にて潜入中、ある情報を持ち帰りました」
いつものデリカートじゃないな。こんなにも畏れいている彼女を見たのは初めてかもしれない。それほどまでに重要な内容なのだろう
「———それはどう言った内容だ?」
「———我らの宿敵バラトロの幹部と思われる者が“かの大戦の魔獣”を復活させようとしています。それも2年前から現在にかけて気付かれぬよう長期に渡り進めていました。そして五種族会談が決行される今年、あまりにも偶然とは言い難いです。王達の護衛に
「「「————っ!」」」
「デリカートそれは本当なの?!」
「まさか大戦の魔獣ときたか‥‥我が召喚されし時より5000年。当時は大陸を100年かけて制圧していた厄災の魔獣共。あの忌まわしき魔獣がまた地上に降臨したならこれは我々でも無視できないぞ」
ファシーノはデリカートに食い付き、ヴァルネラは昔の記憶を掘り下げる。ヴァルネラの反応からして相当に重大な危機に直面しているのだろう
後ろで平伏す配下共もデリカートの報告に騒めき出している
———待てよ。2年前といえばエルディートをバッコスから救った時期じゃないか?それにあいつらはなぜエルディートの血を欲していた?大戦の魔獣はもう生きてはいないだろう。何処かで骨になっているはず
もし、エルディートの血を使い何らかの儀式を行使し、復活させようとしていたならば辻褄が合う。あれ程までエルディートの血に拘っていたとなると無視できない。加えて五種族会談。日時的にあと1ヶ月というとこだろう。今はまだ夏、開催は秋という事らしいが、既に各国の王達は開催国である魔族帝国に歩みを進めている
これは雲行きが怪しくなってきたぞ
「デリカートよくその情報を掴んだ。大戦の魔獣が復活するとなると被害は甚大だ。残り1ヶ月魔族帝国に人員を割り振り、警戒を怠るな。大戦の魔獣が復活したならば他国にも影響が出る可能性も視野に置け。———俺も動くとしよう」
「———ヴァベーネ———」
「「「———ヴァベーネッ———」」」
五華の言葉と共に一斉に同じ言葉を綴る配下達。これだけの人数だと凄まじい音量だ。俺は魔力の流れでその者の感情を大体は理解できる。そしてここに居合す配下達の感情は恐怖ではなく忠誠
元々は五華に向いていた絶対的な忠誠心。そんな五華が忠誠を誓う、俺という存在を認識すれば配下の忠誠も俺へと傾くのは必須。五華という絶対的な統括者のさらに天上に位置するネロと言う存在は配下にとって次元の異なる存在だと認識してもらえたはずだ‥‥‥多分、いやわからん
ゆっくりと玉座から立ち上がりファシーノ達が平伏する数段下まで降りて行く
そしてファシーノの前に止まると五華は頭を上げ、俺に疑問符を浮かべ始める
そんな五華を一瞥し俺は配下に視線を合わせてあることを発言する‥‥‥
「———言っておくぞ、配下の諸君。この“五華”はすでに俺の物だ。淡い感情を抱くのも結構‥‥‥しかし、俺から”奪ってから”にしろっ」
この俺の発言に配下の男性陣は雷を受けた様に顔を硬らせる。どうやら図星だったらしい。口元を震わせ何かを言おうとしている者や脱力し涙を流している者もいれば‥‥‥混沌としている
そんな男性陣に対し汚物を見るかの様に睨みつける女性の配下達。彼ら男性陣はこれから心も体も強くなることを願う始末だな‥‥‥
「———すっすでに予約済みなんて‥‥そんなっ卑怯だわ。18まで待てないじゃないのっ‥‥‥!」
「———はぅぅ。そんな言い方はずるいですぅ」
「フフ‥‥‥主よ、我はいつでも準備ができておるぞ?」
「わ、私は‥‥そのきょ、今日でも準備はできておりますっ!」
「私は‥‥‥皆さんの様に言えませんがっ!あの時以来っこの心も体も貴方に捧げると誓った身ですっ‥‥‥!」
———うん。どうやら男性陣だけではなくこの5人にも別なダメージを負わせてしまったようだ。うっとりした様に表情を緩くし、頬をいちごの様に赤く染め、側から見れば滾っている‥‥‥
「———まあ、待て!落ち着こうかっ」
そうはいうが彼女達の耳には届いていないらしい。君達よくも大勢の配下の前でそんな表情ができるな‥‥なんかすごいよほんと‥‥‥!
この光景を見ている配下はどう思っているのか‥‥
そう思い配下達に聞き耳を立てると‥‥‥
「ねっねえ、ネロ様のあの大胆さかっこいいわぁ!私もネロ様に言われてみたい‥‥‥」
「私もあの声で、耳元で、囁かれたい。そして貶されたい‥‥‥!」
「ちょっとあなた達、聞こえてしまうじゃないの!」
「ええ〜だって男性陣よりネロ様の方が断然かっこいいもん。男性陣は玉砕したけど私達は愛人チャンスあるかもよ」
「ああ!それ、あり!私達女性陣は組織の6割を占めているし、ある意味女尊男卑よね〜」
「女性が多いとやっぱり人肌が恋しくなるわよねぇ。ああ、初めてお会いしたけどネロ様がいいわぁ〜」
「16歳には思えないほど大人びているわねぇ〜。身長も顔つきもドストライクだわぁ」
‥‥‥あれ、おかしい。なんだか予想にしない言葉が聞こえてくる
なんだろう先程までの忠誠心が3割ほど減っているような気がするが、きっと気のせいだろう
まあ、一つ言えるのは男性陣には女性と一緒に仕事をしてもらおうか。そうすれば何かしらの進展はあるはずだろう。もし、今まで共に仕事をしていたのにこの状態が続けば‥‥‥
どうしようもない。その時はその時だな!
男性陣は色々と自分を見つめ直すいい機会だろう‥‥頑張れよ!
ってことで話を戻し再びファシーノに語りかける
「———そういえば俺の自室はこの本部の5階だよな‥‥今日はそこで寝ていこう。あ、あとお腹もすいたし夕食でも食べよう。食堂あったよねここ?」
「もう、気が散ってしょうがないわっ‥‥‥あったわよ、それに食堂じゃなくレストランね?」
「そ、そうか。ではそこで夕飯でも食べよう」
どうやら食堂ではなかったらしい‥‥レストランも食堂も変わらないと思っていた俺は間違っていたのだな。今後は気をつけよう
「それじゃあ、会議はこれで終了!散れ散れ!そしてレストランに行くぞ!」
「ちょっと待ちなさいよ!ここに総勢何千人いること忘れたの!今行った所で何も出てこないわよ!—————配膳係!直ちに食事の準備をしてちょうだい!」
「「「———か、かしこまりました!」」」
そそくさと配膳係と思われる女性達が‥‥‥
え、100人位いないか?待て、そう言えばここのレストランに入るのも、食べるのも初めてだったな
一体どんな料理が出てくるのか楽しみでしょうがない
さあ、忙しくなるぞ。1ヶ月後の五種族会談までに色々と準備をしなくてはな
バラトロが大戦の魔獣を復活させれば世界は再び侵されるだろう。それをなんとしても防がなくては‥‥‥
置いてきたあいつらにまで被害を被る訳にはいかない
———ここは、俺が直々に動くとしよう
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