花魁エリーVSローネ(レオン)

「———では第三試合はハーブ選手対エリー選手だぁぁぁ!!」


俺が医務室までの廊下を歩いていると背中から選手の名前を呼ぶ声が聞こえてくる。そして目の前からその選手が闘技台に向かい、歩いてきた


彼女は俺のすぐ横を無言で通り過ぎる


そんな彼女からは香水のいい匂いがした


彼女が次の対戦相手なのは確定。すぐにお呼ばれされるだろう



———闘技場中に試合開始の合図が響く


またも爆音が鳴り響き係が担架を持って走っていく


今頃闘技場がどんな風か大体予想ができてしまう‥‥無残に敗北した選手が可哀想に‥‥


「さて、次は俺の番か。とすると彼女と対戦か‥‥」


闘技場中にローネの名前と対戦相手のエリーの名前が響き渡る


俺は闘技台に歩いて向かった。闘技台では彼女が霊峰の様に待ち構えていた


闘技台へと登るとお互いに視線を交差する。観客からは互いに睨み合いをしていると思っているだろう


「———それでは第四試合開始!!」


闘技場に開始の合図が響き渡るが二人は石の様にピクリとも動かない


「おいおい!何だってあいつら動かねぇ?」


「おーい!エリー!さっさとそのチビをやっちまえ!」


「エリーちゃん!頑張ってー!」


「やっちまえエリー!」


「エリー!」「エリー!」「エリー!」


闘技場がエリーコールで埋め尽くされる


どうやら観客はエリーの味方らしい。まあ俺はあの三人がいれば貶されようが何されようが構わないが‥‥


どうするもんかと考えていると、エリーが俺にしか聴き取れない声で話してきた


「———やっと、話すことができますね」


「‥‥俺と話がしたかったと?」


どうやら彼女は話をしたいらしく俺は素直に会話を続ける事にする

聞く気になると判断したエリーは微笑みながら昨夜の事を話しだした 


「———はい‥‥昨夜、私を見ていた人影は貴方なのでしょう?その仮面が仰っていますわ」


「‥‥バレていたか。そう、あの時見詰めていたのは俺だ」


「ふふ、やはり貴方でしたか———」



———私は彼の言葉を聞き、心の中でとても満足していた

『もし違ってたらどうしよう‥‥』という不安が心から掻き消え、目の前の少年を見る。


物悲しげに言葉を発したつもりが表情は変わり、切れ長の目が鋭さを増していく


「———もう迷いません。私は勝たなければなりませんっ‥‥!例え、貴方が相手でもっ!」





———エリーは声を振り絞り叫んだ。すると先程までの柔らかい空気が一変する


「‥‥行きますっ!」


甲高い女性の掛け声と同時にローネこと俺に向かって突進する


俺は突進してくるエリーを見据え考えていた


(‥‥彼女の雰囲気が少し妙だな。何か‥‥‥こう、守ろうとしている様な)


そんなことを考えていると一瞬でエリーの拳が俺の胸元に届いた


俺は咄嗟に片手で防ぐ‥‥‥が強烈な痛みが走る。腕全体に衝撃が伝わり、一瞬麻痺してしまった


「くっ‥‥!いい拳だ。だがそんなんじゃ俺には届かない!」


俺は防いだ片手を振り解き、彼女の開いた横腹に蹴りを入れた


「‥‥っ!キャアッ!」


エリーは獣人による反射神経で交わそうとしたが交わしきれずに地面を転がる


そんな彼女を見ていると心が苦しくなるな‥‥


「俺は、貴方とは戦いたくはない‥‥」


俺は彼女に本心を告げる。エリーは脇腹を押さえながら立ち上がると、乱れた髪を直し言い返してくる


「私も貴方とは戦いたくない‥‥けど私には守らなくてはいけない子達がいるっ!」


「———はああぁぁぁあああ!!!」


彼女の瞳が潤いだし、絶叫と共に間合いを詰めて来る


(速いっ‥‥!)


先程よりも数段速く攻撃を仕掛けてくる


籠手同士がぶつかり合い、また受け流し合い火花が散る


エリーの攻撃は徐々に加速していき俺は紙一重で受け流してゆく


二人の闘いは観客を魅了していき、息を忘れる 


エリーの攻撃は一度も緩まず連撃が俺を襲う 


(‥‥!一発でも当たってしまえば流石の俺も無傷ではすまない‥‥)


エリーの攻撃を受け流し避けていると、当たらない攻撃に苛立ちを覚えているのか、表情が変わる


「クッ!なぜ当たらないの?!」


「流石にその攻撃をくらえば無傷では済まなそうだからな!」


コンマ1秒の世界で戦いを展開する二人を見て、観客は徐々に沸騰し出す


「おお!!なんだあの攻撃は!?本当にエリーかぁ?!」


「すごいぞ!俺じゃあ一撃一撃が目で追えねーよ!」


「何とういう攻防だ!エリーの攻撃もバケモンだが、あの避けているチビも尋常じゃないな!」


観客の声援が闘技場に響き渡る中、戦闘を展開している二人


この闘いの幕はどの様に終えるのかまだ誰も知らない

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