———ファルコとの戦闘後、俺達はエルフ大国の少し外れた森の中に転移していた。


「ハァハァ‥‥なんとかいったな」


俺は木にもたれ、ファルコとの戦闘と転移を使用したことで少々息が切れている


「あ、あなた!!怪我しているじゃない!?」


ファシーノが擦り傷だらけの俺を見て慌てて回復魔法を使う


(いつの間に回復魔法を‥‥‥俺の見ていないとこで練習してたな)


そんな事を考えているとファシーノが鋭い視線を向けてきた。


「な、なんなのこの十字の傷?!」


「ああ、これか。あいつの魔法をもろに喰らってしまってな。この傷に回復魔法を注いでいるせいで、擦り傷はまだなんだよ」


ファシーノはその事を聞いて『あなたらしくない。死んじゃったらどうするのよ‥‥』と涙ながらに心配してきた


「‥‥すまない心配させてしまったな。けど、俺の“あの魔法を使用し勝利したとしてもこの先厳しいと判断した」


涙目で回復魔法を掛け続けているファシーノの頭を撫でながら言う


「上には上がいると知った。そして俺はまだまだ上に行けるともしれたんだ」


するとファシーノは少し安心したのか気を楽にした。


「ばか‥‥」


———女の子に心配されるなんて俺もまだまだだな


風が木を揺らす静けさの中、無言の時が流れる。数分後俺の傷の回復が終わった。ファシーノは上達が早い、傷痕がなくとても綺麗だ


「あ‥‥あ‥‥ああ‥‥あぁ」


すると一部始終を観察していた例のエルフが赤子のように話しかけてきた、と言うよりも言葉を発していない


「何故普通に話せない?————!?ここまでするとはッ!」


そう、俺は気づいた


彼女の舌が切られている事に


そしてファシーノを睨み力強く告げる


「ファシーノ、すべての傷は痕を残さず治せ」


ファシーノは急いで回復魔法を掛けた


(傷は癒えても心の方はまだ時間がかかるだろうな‥‥)


俺は彼女の回復を立ったままじっと見守っていた

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