第215話 一方その頃 その5
「父さんが召喚魔法を使えるなんて思わなかったわ」
アニカさんの召喚陣によく似ていた気がする。
しかもこんな立派な獣を従えているなんて。
やっぱり父さんは凄いな。
「ん? っはっは。実はな、召喚魔法じゃないんだ」
「……え?!」
「あれは召喚陣じゃなくて、四次元空間への出入り口だ」
「四次元?!」
異界への門じゃなくて異次元への門だっていうの?
それって召喚魔法より高度なんじゃない?
「二次元の物は三次元に制限無く詰め込めるって話は知ってるだろ」
「ええ。二次元の物は高さが無いから、広ささえ十分なら高さのある三次元空間にいくらでも入るってヤツでしょ」
「そうだ。無限収納系の原理がそれだ。n次元の物はn+1次元空間に無制限で置いておける。置いた場所を忘れると取り出せなくなるけどな」
「それを父さんも使えるの?」
「そうだ……と言いたいが、ちょっと違う。さすがにそんな便利な魔法は俺には荷が重い。ちょっとだけ間借りしてるだけさ」
「間借り?」
「ああ。イーブリン様に貸していただいてるんだ」
「また大罪の娘……」
「…………今向かってる場所も、イーブリン様に教えていただいたんだ」
「なんでも知っているのね」
「〝千年も居れば場所くらい分かる〟と仰られた」
「千年ね……」
「まだ疑ってるのか」
「そりゃそうよ。千年前の本人に会ったことがないのに、今のヤツが本人かなんて分かるわけ無いでしょ。転生したとかならまだ分かるけど、そうじゃないんでしょ」
「正真正銘、千年前のお方だ」
「はっ。さぞかししわくちゃの婆さんなんでしょうね」
「いや、とてもお美しい方だぞ。今も若かりし頃のお姿を保っていらっしゃる」
「それはそれは。大罪の名に相応しいとんでもない化け物ね」
「
「ふんっ」
「ったく。敬えとは言わないが、〝大罪〟は止めてくれないか」
「……それで、その千年ババアが言う次の場所はどんなところなの?」
「お前なぁ」
「〝大罪〟は止めたわよ。千年娘の方がよかったかしら。でも娘っていう歳じゃないわね。ババアで十分」
「まったく。誰に似たんだか」
「あら。母さんの浮気を疑うの?」
「そんなこと言ってないだろっ」
「なら、貴方に似たのよ」
「くっ……」
「さっさと話を進めなさい」
「…………ふっ。次はだな――」
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