第13話 有史以来
背筋がピシッとしていて、両手は膝に添えている。
貫禄があるな。
この人が
息子がひょろっとしているのとは対照的に、体つきは普通だ。
特別鍛えているわけではなさそうだけど、引き締まった体つきをしている感じだ。
細長い棒のような物を咥えているぞ。
その先端からは煙が出ている。
この臭い……煙草?
これはなんだ?
後ろの壁には巻物が飾ってある。
〝戮力協心〟と書いてある……なんて読むんだ?
というか、四字熟語?
まさかここって!
『マスター、あれは翻訳された後の文字だからね』
『わ、分かってるよっ』
そういえばそうだった。
部屋の隅には灰の入った丸い植木鉢? のような物が置いてある。
そして
俺たちが来ることは事前に分かっていたということか。
ふすまを開けてくれたお手伝いさん? に促されて座布団に座る。
やっぱり正座じゃなきゃダメかな。
右からエイル・俺・時子・アニカ・ナームコの順で座った。
アニカとナームコは少し戸惑ったようだが、俺たちの座り方を見よう見まねで座った。
正座の習慣がないと分からないか。
座布団がひとつ足りないぞ。
と思ったら、
座布団は空席のまま、畳へ直に正座している。
他にもお客さんが居るのかな。
全員が座ると、お手伝いさんは部屋の外に出て行った。
先端から赤く燃えている物がコロンと受け皿――灰皿かな――に落ちる。
そしてその棒を箱に置いた。
「私はこの村の
「はいそうです。あ、僕は通訳のモナカです」
「ほう?」
「僕と時子はここの言葉が話せますので」
「ふむ……なるほどの」
「話せませんが、聞き取ることだけでしたら全員ができます」
「なんと! ならば我らが赤子同然なのも頷けよう。あいや、先は手荒な真似をしてすまなかった。謝罪しよう」
「いえ、こちらこそ突然訪ねてしまい、すみませんでした」
「怪我人や損害があれば、賠償しよう」
「大丈夫です。怪我人も損害もまったく出ませんでした」
強いて言えば、鈴ちゃんが疲れて寝ているくらいだ。
「左様か……」
あれ、ちょっと落胆している?
さっきまでビシッとしていたのに、ちょっと肩を落とした?
なにもなかったんだからいいことだと思うんだけど。
『モナカくん、もう少し言い方を考えましょう』
『なにが?』
『なにがじゃないわよ。あれじゃこの村の防衛隊のメンツが丸つぶれじゃない』
ああ、そういうことか。
それでちょっと落胆したのか。
「コホン、失礼。要件は人捜し……ということでよかったか?」
「あ、はい」
そんな話、いつの間にしていたんだ。
「デニス・デヴィッド・ターナーという人物だと聞いておる」
名前まで!
「そうです」
「ふむ。申し訳ないが、この村にそういった名前の者は居ない。外部からの来訪者も、有史以来お客人が初めてだ」
有史以来?!
それって何年とか何十年とかのレベルじゃないよな。
え、どういうことだ。
「初めて……ですか」
「そうだ」
『エイル、どういうことだ?』
『どうもこうもないわ。父さんはここに居る。これは確実なことよ』
『でも外部から来た人間は居ないって言っているぞ』
『嘘を
『彼らが嘘を
『私たちが来たときのことを思い出しなさい』
『まさか殺したってことを隠すためか?』
『父さんは生きているわ!』
『あ、ああ。そうだったな』
ならなんだっていうんだ。
生きていて帰したくない理由だろ。
とはいえ、そんなことを考えるだけ無駄だ。
「村の中を――」
「みなさーん、お茶が入りましたわ」
声と同時にふすまが開いた。
あー、
「今大事な話の最中だ。後にしなさい」
「あらそうなの? でも、お茶を入れるってお約束していましたし……」
「そうなんです。ありがとうございます、いただきます」
「ふふ、どうぞ」
1人1人配って歩く。
ここも尻に敷かれているということか。
「あらあら、お辛いのでしたら足を崩してもいいんですよ」
「あ、はい。その……あ、足が……」
アニカ、痺れたんだな。
安心しろ、俺もだ。
分かるぞ。
崩したくても動けないんだろ。
「情けないわね、このくらいで」
「エイルは平気なのか?」
「当たり前でしょ」
よくできるな。
とりあえず足を崩してあぐらをかく。
ナームコとアニカも足を崩した。
あ、アニカが倒れた。
大丈夫か?
お母さんに手伝ってもらってなんとか座り直せたけど、ぎこちないな。
それに比べてナームコは初めての割には、割と平気そうだぞ。
時子は正座を続けている。
姿勢もいいな。
エイル同様慣れているっぽい。
横顔が綺麗だ。
『なに?』
『あいや、なんでもない。ちょっと横顔に見とれただけだ』
『バカ言ってないの!』
『っはは。すまん』
『もう……』
さて、それじゃ早速一口貰おうかな。
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