第6話 対話を試みる

 暫くすると、前方の森の先に人工的な建物が見えてきた。

 あそこが目的地か。


〝エイル様、森の中に人影があるのでございます〟

「時子、どうなのよ?」

「そんなこと言われても、なんの反応も無いよ!」

「ナームコ、視認できるのよ?」

〝わたくしには出来るのでございます〟


 モニターには人影なんて全然見えない。

 見渡す限りが森、森、森。

 建物はそもそも遠すぎて人影があったとしても見えない。

 レーダーにも反応がない。

 でもナームコには見えるっていうのか。


〝どうやらこの船を狙っているようなのでございます〟

「アニカ、船外スピーカーで呼びかけるのよ」

「ええええ?! ボクがですか?」

「頑張れ! アニカの話術に俺たちの命運が掛かっているぞ」

「荷が重すぎるよっ!」

「さっさとやるのよ」

「ううっ……」


 正直、アニカだと役不足だろうけど、通信士はアニカだ。

 頑張ってもらおう。


※×役不足 ○力不足


〝えー……なんて言えばいいの?〟


 そこからかよ。

 って、それを外部スピーカーで喋るなっ。


「無駄な抵抗は止めろ……とか?」


 時子、それは違うと思うぞ。


〝無駄な抵抗は止めろ……次は?〟


 本当に言うな!

 あと、全部丸聞こえになってるじゃねーかっ。


「エイル、教えてやれ」

〝エイル、教えてや――〟

「違うからな!」

〝違うからな! ……えっ、違うの?!〟


 こいつは……

 こんなんで話し合いとか無理だろ。

 〝無駄な抵抗は止めろ〟とか言っちゃったしな。

 それに腹を立てたのかどうかは分からない。


〝娘、攻撃が来るぞ〟

了解いょうかい


 時子を見ると、俺の視線に気付いた。

 そして首を振る。

 やはりレーダーにはなにも映っていないようだ。

 モニターにだって森しか映っていない。

 この世界のセンサーに俺や時子が反応しないように、この船のセンサーではこの世界のものは感知できないのだろうか。

 ……いや、それは無い。

 確か原初……じゃなくて魔物百足の幼体には反応していた。

 トラップの攻撃も捉えることが出来た。

 ステルス能力が船の索敵能力を上回っているってことか。

 厄介だな。

 とはいえ5千年前の、しかも異世界の技術だ。

 こっちで何処まで通用することやら。

 シールドも過信できないかも知れない。


「あっ、来ま――」


 言い終わらないうちにモニターにはなにかが船に接触した映像が……うーん、一瞬過ぎて分からない。

 なにかが当たったのは確かだ。

 でも弾いたのかな。

 前回のように爆発するならそれが見えるはずだ。

 けれど今回はそういったことが無い。

 そして相変わらず音も無ければ振動も無い。

 襲われている実感が湧かない……


「なあ鈴、攻撃を受けたんだよな」

「はい、受けました。船体への被害はあません」

「そ、そうか……相手の戦力がどのくらいか分かるか?」

「計測不能です」

「計測不能?! 高くてってことは無いよな」

「はい」


 そんなに低いの?!

 なんか、警戒するのが馬鹿らしくなってきたんだけど。


「ちなみに魔物百足の幼体の戦闘力はどのくらいあったんだ」

「計測不能でした」

「あ……そうなんだ。ははっ」


 もしかして基準が高いのか?

 もしかしなくても俺自身も計測不能なんじゃないか?

 ある意味、役に立たない計測器だな。


「このまま進むのよ」

了解いょうかい


 その後もいろいろと攻撃を受けているらしいが、全く実感が湧かない。

 一応モニター越しには爆発したり砕けたり跳ね返ったりといった映像が流れている。

 他人が遊んでいるシューティングゲームを端から見ている感覚に似ている。

 当事者だということを忘れてしまうほど、船内は静かで穏やかだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る