第75話 ケジメとフォロー

 大穴を開けると供に、大量の土も上空に舞っていた。

 それが地上に降り注いでいる。

 まるで火山灰が降り積もるかのように、テントに積もっていった。

 そんな中、ゴーレムたちはゆっくりと地上に降りていく。

 辺りは砂煙に覆われているのに、ゴーレムの周辺は綺麗なものだ。

 うっすらと膜のようなもので覆われている。

 エネルギーシールドだろうか。

 なるほど。

 あれだけの大穴を開けたにもかかわらず、身体が埃っぽいとか、汚れたとかがないのは、これのお陰か。

 でなければ、生きて外に出られるはずがない。

 地上では、ロローさんの仲間たちがワラワラと外に出てきて、こちらを見上げている。

 中には明らかに狼狽している者も居る。

 当然、武器を構えて狙いを定めている者も居る。

 撃ってこないのは、ロローさんの姿があるからだろうか。

 地上に降り立ったときには、完全に包囲されていた。

 ま、当然よね。

 彼らにしてみれば、ゴーレム悪魔の再来ですもの。


「全員、武器を下ろすのである! の者たちは味方である。敵対行動は慎むのである!」


 ロローさんが声高に宣言すると、1人、また1人と、ゆっくり構えを解いていった。

 1人を除いては。

 肩で息をし、構えた武器がカタカタと揺れている。


「副兵長、めるのである」

「でも!」

めるのである」

「お兄ちゃん!」

「マリ! ここでは兵長と呼ぶのである」


 え、マリさんって、ロローさんの妹なの?

 でも元気そうでよかった。

 怪我はすっかり良いみたいね。

 ……本当に兄妹なのって言いたいほど、似てないわ。


「う……兵長はそれでいいの?」

「〝よろしいのですか〟……である」

「ぐ……よ、よろしいのでありますか?」

「なにが、であるか」

「そこの異世界人を――」

「ナームコ殿である」

「ナームコを――」

「副兵長……」


 うわ、凄い睨み付けてる。

 あれが妹を見る兄の目なの?!

 完全に上官と部下ね。


「ナ、ナームコさんを、許すのでありますか?」

「我らにその決定権は無いのである。全ては中央の意思である。従えぬというのであれば、貴様にこの職務は務まらぬのである。今すぐ荷物を纏めて国へ帰るのである。お前たちも従えぬのであれば、今すぐ荷物を纏めて国へ帰るのである。ただし、そのときは二度と戻れぬと心に刻むのである」

「お兄ちゃん!」

「〝兵長〟と呼ぶのである」

「う、ぐっ……り、了解」


 ナームコさんを睨み付けながらも、ゆっくりと構えを解く。

 そしてその場を一人静かに立ち去っていった。


「ロローさん、少し言いすぎなんじゃないの?」

「これは隊の問題なのであります。口出しはご容赦願うのであります」


 そうかもしれないけど。


「我が輩、小用を思い出したのであります。席を外してもよろしいでありますか?」

「え? ええ、構わないわよ」


 やっぱり鈴ちゃんのこと、報告するつもりなのね。


「いいなお前たち、彼らは民間人である。丁重にもてなすのである」

「「「了解!」」」


 ロローさんはみんなに見送られながら、ゆっくりと場を外していった。

 そして徐々に早歩きになっていき、最終的には走り去っていった。

 そんなに急いで報告しなきゃいけないのかしら。

 せめて私たちがここを去るまで報告は見送ってほしかった。

 無理な話でしょうけど。


 みんなが大穴を覗き込みに来る。

 結構な大穴だ。

 縁がかなり高くなっている。

 それにいまだ砂煙が収まらない。

 しかし誰1人咳き込んだりしていない。

 元々埃っぽい土地柄、装備は万端ということだ。


「エイル様、ナームコ様、それと……」

「鈴ちゃんなのよ」

「スズ様、お話を伺ってもよろしいでしょうか」

「ええ、構わないのよ」

「それでは、お部屋へ案内させて頂きます」

「あ、待つのよ。ナームコさん、ゴーレムたちに穴を塞がせなさい!」

「何故だ!」

「〝何故だ〟じゃないわよ。後始末くらい自分たちでしなさい」

「仕方ないな。お前たち、穴を塞いでおけ」


 返事もなく、4体のゴーレムたちが動き出した。


「なにをされるのですか?!」

「安心するのよ。自分で開けた穴のよ、塞ぐだけなのよ」

「穴を……ですか?」

「問題があるのよ?」

「いえ、ございません」

「さ、案内するのよ」


 兵士はゴーレムたちの動きを警戒して見ていたが、気にしながらも歩き始めた。


「あの、ひとつお伺いしてもよろしいでしょうか」

「なんなのよ?」

「エイル様は勇者語を話されるとのことですが、本当でございますか?」

「ええ、話せるのよ」

「一体何処で習ったのでしょうか?」

「ひとつの約束なのよ」

「失礼しました」


 前世で公用語でしたーなんて、言えるわけないじゃない。

 私にとっては、むしろここの言語を習ったようなものよ。


「失礼を承知で、もうひとつよろしいでしょうか」

「同じ質問のよ、ダメなのよ」

「分かっております。ナームコ様と会話なされているようですが、ナームコ様も勇者語を?」

「違うのよ。このイヤホン翻訳機のお陰なのよ」

「それは、ロロー兵長がしているものと同じものですか?」

「ひとつじゃないのよ?」

「あ……」

「冗談なのよ。あれはうちが渡したものなのよ。ロローからなにも聞いてないのよ?」

「はい。秘密だと仰られて……」

「そうなのよ?」


 へー、結構口が硬いのね。

 勇者語に関しては、我慢できなかったとかかしら。

 雑談をしながら暫く歩くと、いつも私たちが利用していた仮設テントに着いた。

 前回の指令テントかと思ったのに、ここなのね。

 先に入るよう促されたのはいいが、案内してきた兵士が入ってこない。


「入らないのよ?」

「聴取は別のものが取ります。しばしお待ちを」


 言われるまま暫く待っていると、ロローさんがやってきた。


「入ってもよろしいでありますか」

「いいわよ」


 そして入ってきたのは、ロローさんだけではなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る