第8話 通学路はいつもと同じ

 

希海の準備が整ったとのことで、学校へ行くために歩き始めると、希海が突然俺の隣へと回って腕を組んでくる。


流石に距離が近いと思った俺は、希海を傷つけないように


「なぁ、希海? 少し近くないか」


と問いを投げかけた。すると希海は


「そんなことないですよ。お兄様。私とお兄様の中じゃないですか!」


なんて笑いながら、返事を返してくる…別にうれしくないわけではないのだが

希海と俺なんかが仲良くしている姿を学校のだれかに見られたりしたら大変だと思い、


「でっ、でもなー」


なんて言ってしまった…

先ほども同じようなやり取りがあったことを思い出し、今度こそ泣かせてしまうと後悔したが、とりこし苦労だったようだ。希海は平然としていた。


それどころか


「さっき私はお兄様に確認を取りましたよ!

そしたらお兄様、希海の仰せ通りにって言ってくれたじゃないですか」


強気で返された言葉は、ぐうの音も出ないほどの正論で、俺と希海との距離への説得は諦め、

次の話題へと話を誘導する。


「そっ、そういえばさーーー。希海は何をしてたんだ?

さっきまで家の中で」


あまりにもへたくそな話題転換に自分自身のコミュ力に絶望していると

希海はなぜか慌てた様子で返事を返してくる。



「みっ、みみ身だしなみのチェックですよ」


希海はなぜか慌てている


「それにしては、長かったような?」


話を長引かせるためにはなった疑問

それ以上の意味のない質問だったのだが、


「女の子にはいろいろあるんです。それ以上言わないでください」


と顔を赤くする希海。


「いろいろってなに?髪型のチェックとかか?

服装とか?それにしてはなにも変わっていないよう・・」



そこまで言って言葉を詰まらせる

希海が今まで俺に向けたことがないほどの形相で睨んできているからだ。

この話は地雷だったのか、と後悔しながらも、


何とかして話を変えようと努力するが、出てきたのは


「希海ってかわいいよな」


セクハラまがいの言葉だった。これも地雷だったかな?と思ったが


「ひょえっ」


なんて突然変な声を出す希海


「もっ、もーーお兄様ったら」


今度は喜んでいるようだ

なぜ喜ぶ?今こそ怒るべき時だろ!なんて思ってしまう俺

希海の沸点がわからない?


だが希海が喜んでいることはわかるからよかった。



そんな他愛ない会話をしながら、登校する俺と希海二人っきりだということも忘れて。


気が付いた時にはもう手遅れだった。

「歩きなれた道できてしまった」なんて気が付いた時には

俺達には好奇の視線が送られていた。


この状況を打破するには?なんて考えたがパニックになってしまい思考がまとまらない。


すると一人の女の子の声が聞こえてきた


「せーーんぱい,兄弟仲良く登校ですか?」


恐れていた事態が起こり、俺の脳みそはパンクしてしまった。


なぜこんなにも希海との登校を渋ったのか、その理由の一端を担っているのが、


希海とこいつを鉢合わせさせたくなかったからだ

という理由だ!


俺が伊波家の養子だと知ってから、それを使って、

俺のことを脅してくるこいつと!

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