第7話 誘われました

 エマリーバは笑顔で娘にならないかと言ってきた。突然のことに一瞬固まる。


 娘にって……


「もちろん、えいみさんの意見を尊重しますが、選択肢として私の娘となること、すなわち神の仲間入りすることを」


「あの神様になったらしなければいけない事とかあるんですか?」


 神に生まれ変わって何をすればいいかわからない。ただ気ままに過ごすだけでは無いと思う。


「それでは神に生まれ変わる時、人に生まれ変わる時のことを順に説明していきましょう」


「お願いします」


「神に生まれ変わる時ですが、私の娘と言うことでそれなりの力を持って生まれてくると思います。 ただ、司る力は生まれてくるまでわかりません。 その魂あった力で生まれてきます」


 という事は生まれてからのお楽しみってことか。


「後は生まれてからの一人前神になるまでは神の世界だったり、今数多ある世界を見学したり、楽しんだりして世界を管理する事を学んでいきます。 実際にえいみさんが神へと転生した場合は見た目は子供のような見た目になるでしょう」


「子供に戻るんですか!?」


「見た目だけですよ。 記憶などは消しませんが、元々神になれる魂を持っていても、魂の作りを神の器に合うように変えます。 そうなると人としての経験だけなので神としては子供となるのでわかりやすく体が子供になるのです」


「そうですか……なんとなく分かりました」


 つまり多分神の魂に合わせると人の経験しかない魂だと神になった時に未熟だから魂に合わせて体が子供になるという事かな。


「なので、神に転生したからと言ってすぐに世界管理しろなど言いませんし、しばらくは神々の世界をゆっくり過ごしたり、管理する世界に降りてその世界を楽しんだりしてください」


「そんなゆるい感じいいんですか?」


「はい! 神だから何かしなきゃとか無いですし、気ままに過ごしてください♪」


「なんかそういうのもいいかもなぁ~」


 しばらくゆっくり出来るとか魅力的過ぎる!!


「神になった時のデメリットというか、覚悟と言うか、なんと言いましょうか……」


「デメリット?」


「はい、神は永遠の命を持っています。 命に終わりが限りなくありません。 そんな永遠の時を生きる覚悟が必要です」


 確かに神様に終わりなんて無いのだろうな……。


 永遠の時を生きる覚悟かぁ……。


「次にまた人へ生まれ変わる時の事をお話しします」


「はい」


「人に転生する場合輪廻の輪に戻ってそこで魂の浄化をし、記憶をリセットします。 これが普通の転生のしかたです」


「普通の仕方?」


「はい、えいみさんの場合助けて頂いた恩がありますので人に転生する時もえいみさんの希望を叶えて転生させます」


 それは記憶もそのままでもいいって事とか今流行りの異世界転生とかが出来るのかな?


「例えば理想の容姿になるとか、また地球に転生したいなど希望が有れば出来るだけ叶えます」


「あの、もし人に生まれ変わるなら私の家族の所に生まれ変わるのは無理ですか?」


 ずっと気になっていた、私の家族の事。そして人に生まれ変わるなら、またお父さん、お母さん、お兄ちゃんの側で生きたい。


「ごめんなさい、それは無理です……」


「そう、ですか……」


「ごめんなさい、出来るだけ叶えるとか言ってて。 例えば、もし生まれ変わってえいみさんのお兄さんの子供に転生したとしましょう。 その場合は記憶をリセットします。 ですが亡くなる前に繋がりがある人たちと過ごしているとリセットしたはずが記憶が蘇る事多く、非常に魂にも器にも負担をかける事になります。 そうして脆くなった器、それに合わせて体も脆くなり短命で終わってしまいます。 そして記憶が蘇る事で混乱してしまう方もいます。 なので家族の元に生まれ変わる事はできません……」


「……分かりました……」


 そっか。出来ないんだ……。もし生まれ変わる事が出来たならいっぱい恩返しして、いっぱい感謝して、いっぱい大好きって言いたかったなぁ。


 そう思うと涙が出てきた。流さないようにしても涙が溢れてくる。


「えいみさん……」


「ごめ、ん、なさいっ」


「いえ、たくさん泣いていいですよ」


 エマリーバは優しくえいみを抱きしめた。エマリーバの母の様な空気にえいみはより一層涙が溢れる。しばらくの間エマリーバはえいみが泣き止むまでずっと抱きしめていた。






「すみません、落ち着きました」


「いいですよ、溜め込まないでいっぱい泣いてください」


「///」


 思わず顔が赤くなる。この歳になって誰かに抱きしめられながら子供の様に泣いてしまった。


「えいみさん、家族に元に転生はできませんが、最後に夢の中でなら少しだけ会える事ができますよ!」


「えっ……? それは本当ですか?」


「はい! できます!」


 また、涙が溢れてくる。涙腺が脆くなってる。


「それとえいみさんの家族に私の祝福を授けます」


「祝福?」


「はい祝福です。 それによってえいみさんの家族は不幸な事もなく平穏に幸せに暮らせます」


「っ!?、ありがとう、ございますっ! ありがとうございますっ!」


 私が死んだ事で家族に恩返しも出来ずに親不孝してしまった。だからエマリーバ様の祝福で幸せに暮らせるなら、少しだけ気持ちが楽になった。


 

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