第38話 初音と遊園地


 「あら、意外と早いのね」


 「普通、男が先に待っているものだろ」


 バチ公前で、携帯を弄りながら待っていた俺に、初音は約束の10分前にやってきた。


 「じゃあ、早速遊園地に行くわよ!」


 「あいよ」


 前を歩き出す、初音に合わせ…右後ろ側を歩き、3日前の事を思い出していた。


 『ちょっと! 私がいるのに他の女と食事に行ったってどうゆうことよ!!』


 『いや、俺だって断ったんだぞ? でも、その女はお礼をさせるまで、逃すきはなさそうに見えたし…仕方なくでな』


 それに、あのオッサン医者もだ。ワンチャン面白がって、あの金髪ギャルに協力しかねなかったしな…。


 話したのは、数分だったが…何となくあのオッサンならやりかねないと、思った。


 『安曇は彼女がいるのに、他の女と2人でご飯に行くのね!! よ〜く分かったわ!』


 怒りすぎだろ…。


 まぁ…でも、悪いのは俺だな。


 仮の交際だとしても、付き合っている事には変わらない。


 『それは悪かった。断れない状況だったが…強行突破をすればいけなくはなかった。それは、悪いと思ってる』


 強行突破をしなかったのは…金髪ギャルに触れざるおえなく、そうなった場合、最悪免罪をかけられるかと思ったからだ。


 『分かっているのなら、いいのよ』


 俺が心から、謝っていると感じたのか…刺々しさは無くなっていた。


 『でも!! 私は他の女と2人でご飯を食べた事は許さないわよ!! 許してほしければ、3日後に遊園地に行くわよ!! いいわね!!』


 『ああ…分かった』



 そんなこんなで、初音と遊園地に行くことが決まった。



 **********



 「ここよ!!」


 そう言って、初音が指を差す先を見てみると…ざっと5000人は入りそうで、奥には一際目立つ、大きな観覧車が眼に入った。


 「お〜雰囲気はいいんじゃないか?」


 草や木も植えてあり、芝生では寝っ転がれそうだ。


 それに、遊園地なんて10年以上行ってないし、少しだけ楽しみだな。


 「ん」


 そう思っていると…服の裾を引っ張られ、横を見てみると、初音が左手を差し出し状態で止まっていた。


 心なしか、ほんのりと頬を赤く染め…恥ずかしいのか、視線を反対側に向けていた。


 これは握れって事だよな? 違ったら怖いんだが…?


 いや、初音から告白してきた以上…コイツが俺の事を好きなのは間違いない。


 逃げるな!!


 震える右手に、力を入れ…ゆっくりと初音の左手を握った。


 「ッ!」


 すると、初音の体が固まり…夕暮れのように、初音の頬はくっきりと赤く染まっていた。


 「……」


 「……」


 「……行くか」


 「そ、そうね!」


 沈黙に耐えかねた俺は、全くこちらを見ようとしない、初音の左手を引っ張りながら入口まで進んで行き…遊園地の中に入った。


 「おおぅ…」


 中に入れば、家族連れやカップルが多い事に気づき…思わず顔が引き攣った。


 周りから見たら、俺達もその中の1人なんだよなぁ…。


 「なぁ、最初はどれに乗りたいんだ?」


 ずっと、固まっている初音の左手を強く握って弱めて…を繰り返しているとーー


 「危な!?」


 飛んできたを避け、初音を見ると…もう、これ以上は赤くならないんじゃないか? と…思う程、顔が赤く染まっていた。


 「私の手で遊ぶんじゃないわよ!! 最初に乗るのは、もう決めてあるの!! 行くわよ!!!!」


 「初音! お前強く握りすぎだろ!!」


 ビンタが避けたせいか…そこそこ強く、俺の右手を握りしめ、引っ張られるように初音についていった。

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