いまだ動揺を隠せず

 翌朝七時に金沢駅にバスが着き、降り立ってからも、二人は無言だった。


「私、コンビニに寄るから」

「うん。じゃあ、また」


 ぎこちない会話を交わして、駅前で別れた。


 一人になってから、藍子は、足早に歩きつつ、徐々にパニックを声に出し始めた。


「え? え? え? つまり、えっと、どういうこと? 『好き』って、えっと、家族的な意味で、とか、そういうこと、だよね? じゃなかったら……えええ⁉」


 ブツブツとひとり言をつぶやく姿は、端から見たら、かなりの不審者である。


 それでも、藍子は落ち着いてはいられなかった。


 血の繋がっていない弟から、まさかの、突然の告白を受けたのだから。

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