第7話 香莉との再会1


 朝からドンパチしたせいで照麻は学園に着くと同時に職員室に呼ばれ、事情聴取を受ける事となった。由香も同伴こそしていたが、学園に入った情報から実際に街中で暴れたのは照麻だけだとバレ、一人悲しくお説教も受けた。幸いな事に両親と警察には連絡がいかなかった。


 事情から正当防衛が認められ、停学処分などを免れたが、あれはやり過ぎ、もう少し手加減してやれと生徒指導の先生――ゴリラに小言を言われた。何でも黒焦げになった男六人全員が全身に火傷を負っており入院が必要らしい。力があるならせめてもう少し加減してやれと言うのが生徒指導の先生の言い分だった。

 そして妹をそう言った問題に巻き込むなとも言われた。もし妹さんがそれが原因で拉致られたりしたらどうするんだととても心配してくれているのは痛い程わかった。だが正直由香がそこら辺の男に拉致られるとは到底思えないので半分聞き流しながらも「はい、はい、はい」と適度に相槌を打ちながら照麻は生徒指導の先生の話しを聞いた。


 まぁ、一言で言うと。


 非常に疲れたのだ。


 照麻は疲れたーと心の中で叫びながら、トボトボと自分のクラスへ向かう。

 そして頭をがりがり掻き、大きくため息ついてから、照麻は二年一組の教室の扉を開けて中に入る。


「初めまして。藤原香莉と言います。この度は――え?」


 自己紹介中の女の子は照麻が教室に入って来たことに驚き、上品に口を手で隠し、目を大きくして驚く。昨日担任の先生から今日から来ると聞いていた転校生だ。

 最悪なタイミングなのはクラスに視線を飛ばせばわかる。

 クラス中から向けられた冷たい視線の数々を照麻は愛想笑いをしてやり過ごし、新しいクラスメイトつまりは転校生に会釈をして急いで自分の席に座る。


「生徒指導の先生から事情は聞いているから別に怒ったりしないけどタイミング最悪ね」


 担任の先生の一言に照麻の心がグサッと抉られる。


「すみませんでした……」


「ったく街中で暴れるからよ、この大馬鹿者!」


「はい」


 クラス中から聞こえてくるクスクスとした笑い声に照麻の気分が沈んだ。


「ごめんね。なら気を取り直して、家庭の事情で今日から私達と同じ学園で過ごす藤原さんから一言頂こうかしらね」


「あっ! やっぱり。昨日はありがとうございます、照麻さん!」


 この時、照麻の時が止まった。


 ……。


 …………。


 …………――――。


「あ! 昨日の女の子!」


「それは失礼です。私には藤原香莉と言う名前があります。これからは気軽に香莉と呼んでください!」


「あっ……うん。って、え?」


 クラス中から向けられる、お前と転校生の関係は? と言う視線。

 思わず照麻の口が止まる。

 別に照麻と香莉の関係にやましい事なんて何一つない。ただ昨日その場の成り行きで助けてあげただけの関係だ。だがそれを言った所で誰一人信じてくれそうになさそうなこの雰囲気に照麻はどうしたものかと本気で悩んだ。

 

 ――はぁ


 思わず頭に手を当て、大きなため息をついてしまった。


 いっそのことこの場から逃げだしたい衝動を必死に抑え照麻が香莉の方を見ると、


 ニコッ


 と香莉がほほ笑む。


 それがクラスの男子を刺激し、更なる嫉妬に似たなにかを生み出す。



 すると、担任の先生が。


「はいはい、男子はそんな顔しないの。藤原さんは可愛いし性格も良い子だからすぐに皆とも仲良くしてくれるから。それで藤原さんは赤井君と友達って事でいいのかしら」


 助け船を出してくれた。

 今日程担任の先生って頼りになるなと感じた事はない。


「はい」


「なら赤井君の隣の席がちょうど空いているからそこに座りなさい。教科書とかはしばらく先生の貸そうと思ったけど……、お友達なら赤井君に見せて貰いなさい」


 まるで全て解決と言わんばかりに担任の先生が全てを丸く終わらせる。

 流石は大人。

 そして香莉は「はい」と返事をして照麻の横の席に座る。


「改めてこれからよろしくお願いしますね、照麻さん」


「あ、うん。宜しく藤原さん」


「香莉と呼んでください。藤原だと後々面倒な事になりそうなので」


「え? あ、うん。香莉さん……じゃなくて香莉ね」


 途中香莉の表情が不満顔になったのを見て、照麻は慌てて言い直す。

 すると香莉が笑顔になった。

 改めて近くで見ると、顔は整っており背丈も低く、小柄で可愛い女の子だなと思った。それに胸も由香に負けないぐらい大きくて女性としての魅力が高く、下手したらクラスの男子の誰か一人ぐらいは一目惚れしてそうだなと思った。

 それにしても面倒な事? と照麻は気になったが香莉の言い方的には何もせずとも時間が経てばわかりそうだったので今は気にしない方向で行くことにした。

 朝の連絡事項を伝えている担任の先生を無視して二人で話しているのがバレて、ホームルーム終わりにまた職員室に呼び出しとかされても困るからだ。


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