第14話:スキルと狩り


「 ここから、風上に向かって獲物を探して行こう。 銃は接近戦に弱いから、魔物から離れて仕留めたい 」


「 はい、マスター 」

「 判ったにゃ 」



コイネを斥候にして、その後ろをチルと並んで歩く。

チルは小盾と小剣、俺は小銃を準備済み。


コイネが見つけ、チルが防いでいる間に狙撃。

上手く遠距離で見つけられれば、かなり楽できると思ってる。

狙いは出来るだけ大物。 弾薬もタダじゃ無いから、費用対効果を考慮しないと。


地面から6m位までは、枝が無い木々の中をユックリ進んでいく。 


30分ほど進むと、コイネが突然止まり木の上の方を指さす。

コイネの側まで静かに進むと、2羽の鳥が木の中程に居るのが見える。

距離は---200m位なのか。


「 ビッグバードですマスター。 高級なお肉の鳥です 」


「 了解、狙ってみる 」  高級な肉を。



確認したかったのは、身体能力の向上効果と、ワイバーン(仮)の時見えた、銃口から延びる光の線。

あれがスキルだとしたら、


「 やっぱり見えるな 」


両目で狙いを点けると、細い光がハッキリ見える。

ビッグバードの頭に光の先を合わせて、トリガーをユックリ引く。


パン   シャカ


「 当たりました 」


パン   シャカ


「 当たりました 」



音に驚いて羽ばたいてる内に、もう1羽も撃つ。

ビッグバードが落ち始めると、チルが走り出す。


あれ? チルってリトリバーだっけ?

チルはマルチーズとミニチュアダックスのミックス、獲物を取って来る習性は無いハズだが。


疑問は脇に置いといて、とりあえずコイネと一緒にチルを追いかける。

目の前には全長2mの大きな鳥、チルとコイネは、早くも解体と血抜きを始めてる。


俺は邪魔にならないように、ビッグバードの頭を確認する。

光の線で狙った所に銃痕があった、光の線はスキルで確定だな。



3人とも、アイスの魔法は使えないんでさっさと処理しないと、鮮度が落ちる。

Dランク冒険者のチルとコイネは、解体も出来るらしいんでお任せ。


「 ビッグバードは、肉と羽根が素材になります。 後は廃棄ですね 」


「 廃棄はどうするんだ。 土に埋めるとか? 」


「 いいえマスター。 そのまま放置すれば、小動物が処理してくれます 」


「 羽をむしるのは、時間が掛かるにゃ。 処理が終わったらそのまま持って帰るか、森の外でやるにゃ 」


「 了解。 そのまま持って帰ろう 」


血と内臓を抜き取れば、何とか持ち運び出来そうだ。

もちろん、魔石は回収済。


____________________________



大きい方を持ってみると、かなり重いが持ち上がる。

持ち上がるのだが、歩いて30分も運ぶのは無理そうだ。


5倍になった筋力でもやっとだから、推定で200kg以上はある。

小さい方なら何とかなりそうだが、それでも150kgは在りそうだ。


「 大きい方は私が運びます 」


ひょいっと肩に担ぐチル、さすがは獣人と言った所か。

となると、


「 1人じゃ無りにゃ 」


無理にゃそうですんで、2人で小さい方を運ぶことに。

休み休み、倍の時間を掛けて荷車に戻る。 戻ったんだが、これ荷車に乗るのか?



試しに小さい方をそ~っと乗せたら、ミシッて音がしたんで途中で断念。


「 マスター。 荷車を持っててくれますか? 」


「 あいよ 」


今度は俺が持った状態でチャレンジ。 大きい方を乗せようとしてるんだが。

荷車の後ろが、下がり始めたんで前屈みで耐える。


「 乗りました! マスター、乗りましたよ! 」


ムリヤリ乗せました、の間違いだと思う。


「 もう1羽行きますね、マスター 」


「 はいよ 」


チルは、俺が機力を込めた荷車なら乗るって考えてるみたいだ。

ちょっと心配だが待機する。


待機する・・・・・・待機する・・・・・・早く乗せろよ!


「 もう乗ってますよ、マスター 」


振り返ると、荷車の上には山になった鶏肉。 じゃなくてビックバード2羽。



「 気が付かなかった 」  ちょっとビックリだ。


「 機力持ちは凄いにゃ! 」  自分でもそう思う。


んでも、後方の確認は出来無いからバックするのは無理だな。


「 マスター。 機力が切れる前に帰りましょう 」


おっと、そうだった。 ドアが、開けるられなくなる前に帰り着かないと。

荷車も壊れそうだし。



「 帰りは、ちょっとだけ急ごうか 」


「 はい 」

「 判ったにゃ 」



薬草が、ビッグバードの下敷きになってるけど気にしない。

3人で街までジョギングだ。



途中のコーナーでコースアウトしかかったが、機力を増やしたら元のコースに戻った。

それならばと、機力を込めつつ曲がって見た。

レールにでも乗ってるのか? って位スムースなコーナリングで、お肉もピクリともしない。


機力は10分で3ずつ減ってるけど、機力Pは278在るから微々たるもんだ。

チルもコイネも、この程度のスピードなら1時間走っても大丈夫なんだと。

3人で風を切って走る。


王都に続く街道はシッカリ舗装されてるし、広いし、飛ばしがいがある。

飛ばすって言っても自分の足で走ってるけどな。 荷車はうっすら光ってるし。


後方に血が飛び散ってないか、ちょっと気になる。



____________________________



王都の入口で入場待ち。

止まってても機力は減り続けてるけど、このペースなら入場まで持ちそうだ。


周りの注目を集めてるけど、生臭いのか?

荷車の下を見ても血は垂れてないから、大丈夫だと思うんだが。



やっと王都に入ったけど、今度は冒険者ギルドの前で待ち。 街だけに待ちが多い。

俺が手を離すとビッグバードの重さで荷車が潰れるから、手を離せ無いし機力も抜けない。

片手を離しても大丈夫なんで、飲み食いは出来るけどトイレがな。


1人の時間は長く感じる、冒険者ギルドの前だから余計に長く感じる。

2人とも早く帰ってこい。



やっとギルドを出てきたチルとコイネに先導されて、ギルドの裏へ。

積み荷を下ろすのは、2人とギルド職員にお任せ。

ペチャンコになった薬草も、買い取ってくれるって。


査定が終わるまでギルドの外でチルと待機、ホントに待ちが多いな。

コイネは宿を神殿近くに変えるために、荷物を取りに行ってる。



でだ、2羽で330kgとして、骨なんかを取って肉だけにすると、どのくらいだろ。

70%の230kgとして、高級鶏肉って言ってたから、100gで98円として23万円弱か。

100gで198円だと46万円弱。 金貨で、23~46枚は確定か?


後は、羽と魔石が幾らになるかだが。

宿が1泊銀貨3~4枚って言ってたから、しばらくはコイネの宿代も食費も大丈夫だな。

神殿に近くて直ぐに会いに行けるから、チルも安心だろう。



「 これで当面の生活費は何とかなるだろ 」


「 はい、マスター。 贅沢しなければ、半年はもちます 」



「 半年? 少なくないか? 」


一泊銀貨3枚として、180日で銀貨540枚=金貨5枚と銀貨40枚。

1年は、保つはずなんだが。



「 チル。 今日稼いだ分は、2人に全部渡す予定だぞ? 」


「 それでは貰いすぎです。 私たちは何もやってません 」


「 パーティーの稼ぎは山分けが原則だ。 違うか? 」


「 それでも多過ぎです! 」



「 んじゃ、ばあさんに借金してる分と、弾薬の補充。 金貨10枚と弾代を引いた残りを、2人で分けよう。 もう少ししたら、ワイバーン(仮)の分が入るから、俺の分は気にしなくていい 」


「 そうでした! マスターには、あれの分が入るんでしたね 」


「 そう言う事。 だから気にしないで貰ってくれ 」


「 マスターの装備は、ワイバーン(仮)が入ってから揃えましょう 」


チルさんや。 装備があっても、俺は冒険者はやらないぞ?

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